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あなたのプレイリストは知能を映すのか? 手がかりはメロディーではなく歌詞だった

  • 2026.3.23
あなたのプレイリストは知能を映すのか? 手がかりはメロディーではなく歌詞だった
あなたのプレイリストは知能を映すのか? 手がかりはメロディーではなく歌詞だった / Credit:Canva

ドイツのルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン(LMUミュンヘン)で行われた研究によって、どんな音楽を聴いているかや音楽の聴き方が知能と関連していることが示されました。

これまでは「クラシックやジャズを聴いている人は頭がいい」という、音楽のジャンルと知能が語られがちでしたが、新たな研究では最も知能と高い関連を示したのは、音楽のテンポやメロディーそのものよりも、「どんな歌詞の曲を選んでいるか」でした。

いったいどんな歌詞が、知能の高さや低さと関連していたのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年2月13日に『Journal of Intelligence』にて発表されました。

目次

  • 音楽は脳の“総合運動”だった
  • 知能と結び付いているのは音楽ジャンルより歌詞だった
  • プレイリストは知能診断になるのか

音楽は脳の“総合運動”だった

音楽は脳の“総合運動”だった
音楽は脳の“総合運動”だった / Credit:Canva

これまでの知能研究は、テストや学校の成績、仕事の業績といった「重要な場面」でのパフォーマンスばかりに目を向けてきました。

もちろん、こうした場面では知能の差がわかりやすく出るので研究もしやすかったのです。

でも私たちは毎日、家でくつろいだり、スーパーで買い物したり、通勤の電車でスマホを触ったりと、もっと気軽な日常の中でも確実に頭を使っています。

そこで今回の研究チームは、その見落とされた日常のなかに、知性を映す“手がかり”があるかもしれないと考え、「音楽を聴く」という活動に目をつけました。

なぜ音楽なのでしょう?

実は音楽を聴くというのは、脳にとって意外と“濃厚な”活動だからです。

音楽はただ耳に心地よいだけではなく、感情や記憶、集中力やモチベーションまで巻き込む、まさに脳の総合的な刺激だと言われています。

このことから、音楽を選ぶ行動には、その人が日常でどんなふうに頭を使い、何を考え、どういう心理状態を好むのか、そういった微妙な知的特徴がにじみ出ている可能性があるわけです。

ただ既存の手法は問題点がありました。

これまでの音楽と知能を結びつける研究は、多くが「どのジャンルが好きか?」というアンケートや、短時間の実験室内でのテストに頼っていました。

でも人って、「好きな音楽は?」と聞かれると、つい自分をよく見せようと見栄を張ったり、記憶があいまいで実際の好みと違う回答をしてしまったりします。

たとえば中二病を発症している人は、実際にはほとんど聞いていないにもかかわらず「洋楽」と答えるかもしれません。

また自分を高尚で賢いと思わせたい心理がある人は「クラシック」を実際よりも多めに申告してしまうかもしれません。

さらに実際に聞いている曲がゲームやアニメにかかわる音楽がかなり多くても、本人はそれを自覚しておらず、現実に即さない答えを返してしまう場合もあるでしょう。

調査が人間と対面しないアンケートであっても、これらの心理や誤解は影響を与えてしまいます。

そうなると、実際の日常でどんな音楽を選んでいるのかとはズレてしまうわけです。

今回の研究チームは、そうした“建前の好み”や実験室の人工的な状況を避けるために、実際に人々がスマホで聴いている音楽を正確に追跡する方法を取りました。

つまり、「聞いた話」ではなく、「リアルな視聴履歴」を元にして「何が好きだと言うか」ではなく「実際に何を流したか」というより本物に近い音楽の好みと知性の関係を見ようと考えたのです。

知能と結び付いているのは音楽ジャンルより歌詞だった

知能と結び付いているのは音楽ジャンルより歌詞だった
知能と結び付いているのは音楽ジャンルより歌詞だった / Credit:Canva

ここからは、実際に研究がどのように行われ、どんな結果が出たのかを、順を追って見ていきます。

研究者は、まずスマホ追跡研究に参加した850人のデータを集め、その中から条件を満たした185人を最終的な分析対象にしました。

参加者の私物スマートフォンには、専用の研究用アプリが入っていました。

このアプリは、参加者が日常で実際に再生した音楽を5か月間記録し続けるものです。

その間、参加者は特に普段どおりの生活をするだけで、特別に「いい音楽を聴こう」なんて考える必要はありません。

5か月間で集まった音楽データから、非音楽トラックを除くと、全部で5万8247曲のユニーク曲が残りました。

研究チームはここから、その曲のテンポやメロディーの特徴(たとえば曲調が落ち着いているのか元気なのか、ライブっぽさがあるかないかなど)と、歌詞に含まれる言葉やテーマ(前向きなのか、暗めなのか、家庭を意識した言葉が多いのか、曖昧な言い方をしているかなど)をコンピュータで解析しました。

さらに、参加者一人ひとりの音楽を聴く習慣、たとえばどれくらい長く音楽を聴いているのか、ドイツ語の曲がどれくらい多いのかなども細かくチェックしました。

こうして、音楽の好みをトータルで215種類の細かな数値にまとめたのです。

次に、これらの数値が本当に知性と関係しているのかを確かめるために、参加者にスマホ上で簡単なテストを受けてもらいました。

このテストでは、新しい問題を考える力、言葉の理解力、数の知識にまたがる、いわば「考える力の土台」が問われました。

つまり、日常の音楽の好みと、この「考える力の土台」がどのくらい関係しているかを分析したわけです。

するとまず予想外なことに、少なくとも今回の実データでは、好きな音楽ジャンルそのものより、歌詞や聴き方の特徴のほうが知能予測に役立つことがわかりました。

これまでは「クラシックが好きだと頭がいい」という話がしばしばなされていましたが、今回の研究は、そういった単純な図式だけでは説明しきれないことを示しました。

しかし関連がみられたものもありました。

中でも最も知能と関連が強かったのは、歌詞の言葉づかいでした。

具体的には、前向き一辺倒ではない歌詞、現在に焦点を当てた歌詞、飾らない誠実さを感じさせる言葉、家やベッドのような家庭関連の言葉を含む歌詞などが、やや高い方向の認知能力予測と結びつく傾向が見られました。

一方で、社会的な言葉が多すぎるものや、曖昧さやためらいを含む表現、強すぎるポジティブな感情表現などは、やや低い方向の認知能力予測に関連していました。

筆頭著者のラリッサ・サスト氏も、音の特徴より歌詞のほうが認知能力の予測に役立ったのは驚きだったと述べています。

また音の側では、ほとんどの特徴はあまり役に立たなかったのですが、例外的に「ライブ感」が影響していました。

ここでいうライブ感とは、その曲が観客の前で録音されたような臨場感のことです。

研究では、ライブ感が高い曲を好む傾向は、やや低い方向の認知能力予測に出ていました。

何を聴くかだけでなく、どれだけ聴くか、そしてどれだけ言語の幅をまたいで聴くかといった“聴き方のクセ”も、考える力のごく小さな手がかりになっていたのです。

具体的には、全体の聴取時間が長く、ドイツ語の曲の割合が低い人ほど、高い方向の認知能力予測と結びつく傾向がありました。

しかし、なぜこれらの要素が知能と関連しているのでしょうか?

プレイリストは知能診断になるのか

プレイリストは知能診断になるのか
プレイリストは知能診断になるのか / Credit:Canva

ここからは、今回の研究に加えて過去の研究結果も参考にしつつ「なぜその要素が知能と関係するのか?」を紹介していきたいと思います。

まず、「前向き一辺倒ではない歌詞」や「強すぎるポジティブ表現が少ない歌詞」が高めの側に出た理由ですが、論文はこれを、悲しさや陰りのある音楽が内省や人生の振り返りを助けることがある、という先行研究と結びつけています。

つまり、ここで効いているのは「暗い歌が賢い」という単純な話ではなく、少し陰りのある音楽のほうが、自分の考えを整理したり、気持ちを深く見つめたりする使い方に向きやすいのではないか、という見立てです。

関連研究でも、悲しい音楽は慰めや感情整理、自己反省のために聴かれやすく、さらに悲しい音楽のほうが内向きの思考や、考えが自分の内側へさまよう状態を強めやすいことが報告されています。

次に、「社会的な言葉が少なめ」「飾らない誠実さを感じさせる言葉」「家やベッドのような家庭語」が高めの側に出た理由です。

ここで論文が出している解釈は、かなり面白くて、社会的な盛り上がりよりも、個人的な意味づけや内面の整理に向いた歌詞が選ばれているのではないか、というものです。

「家」「ベッド」といった単語が特別に知能を示すという話ではなく、もっと広く言えば、外へ向かう社交の歌より、内側へ向かう私的な歌のほうが、高めの側と結びついたと読むわけです。

2007年の研究では、IQが高い人や知的関与の強い人ほど、音楽を合理的・認知的に使う傾向があり、気分調整などの情動的な使い方は相対的に弱いとされました。

さらに 2021 年の研究では、IQ が低い側ほど、音楽を強い感覚や強い感情を得るために使う傾向が高いと報告されています。

なのでこの部分は、知能の高めの側では「社会に見せる音楽」より「自分の中で噛みしめる音楽」へ寄りやすいのではないか、という予想だと考えるとわかりやすいです。

「ライブ感」が高い曲が低めの側に出た理由についても似た理由が考えられています。

ライブ音源はふつう、エネルギーが高く、勢いがあり、少し雑味もあって、コントロールされすぎていないものです。

著者たちは、そういう音源は、集中して考える、細かく分析する、静かに没頭するといった“認知寄りの音楽の使い方”には、やや向きにくいのではないかと見ています。

だから高めの側では、観客の熱気が入ったライブ盤より、より落ち着いて制御された録音が選ばれやすいのではないか、というわけです。

過去に行われた研究でも、高IQ側は音楽を合理的・認知的に使いやすく、低IQ側は強い感覚や感情を得るために使いやすいという報告があるので、ライブ感の高さ=刺激や高揚感の強さと考えると、既存の研究結果と明確に反するものではないでしょう。

「現在に焦点を当てた歌詞」や「曖昧さ・ためらいが少ない歌詞」が高めの側に出た理由については、論文では、こうした歌詞はより明確で、まっすぐで、分かりやすいメッセージを持っているため、そういう歌詞を好む人は、音楽にもより分析的で決断的な関わり方をしているのかもしれない、と解釈しています。

逆に言えば、社会語が多く、曖昧さやためらいが多い歌詞が低めの側に出たのは、より対人的で、その場の空気や感情の揺れに寄った音楽使用を反映しているのではないか、という読みです。

ここまでをまとめると、高めの側の人は、音楽を“盛り上がるため”より“考えるため・整えるため”に使いやすく、そのため歌詞も、より私的で、明確で、内省を促すものに寄りやすい。

逆に、低めの側では、音楽がより社会的・情動的・刺激追求的に使われやすく、そのぶん歌詞もライブ感も、外向きで盛り上がる方向の特徴を持ちやすいのではないか、という考えになります。

次いで母語以外の曲を多く聴く傾向と知能の高さについてです。

論文では、ドイツ語の曲の割合が低いことの意味として、言語能力の個人差や、母語の外での経験、たとえば外国語の習熟度を反映している可能性がある、と述べています。

今回のGCAには言語理解や知識の側面も入っているので、外国語により多く触れていることが、その一部を薄く拾っているのではないか、という見立てです。

もうひとつ面白いのは、母語の歌詞は、場面によっては認知課題をより邪魔しやすいという実験研究です。

読解課題では、歌詞つき音楽は無音より成績を下げ、しかも課題と同じ言語の歌詞のほうが、別言語の歌詞よりも強く邪魔することが示されています。

もし認知能力が高めの人たちが勉強や思考の場面で音楽を使い分けているなら、母語の歌詞より別言語の歌詞のほうが邪魔になりにくいため、選ばれやすい可能性もあります。

次に、音楽を長めに聴く傾向については、認知能力が高い人は、自分に合う音楽環境を見つけたら、それを生活の中で長めに維持しやすいのではないかと考えられます。

先にも述べたように、知能が高めの人は音楽をより認知的な目的、つまり集中、分析、内省のような用途で使っている可能性があり、そのためには作業や思考に合った音環境をしばらく維持することもあるでしょう。

それは「1曲に執着する」というより、たとえば勉強、読書、移動、考え事の時間に、毎回ちょうどいい温度の音楽を置いておく。

そういう使い方なら、再生は自然に長くなります。

言い換えれば「高めの側の人は、音楽を“刺激を浴びるため”より“環境を整えるため”に使いやすく、そのため一度しっくりくる音楽環境を作ると、それを生活や思考の流れの中で長めに維持しやすいのではないか」というものです。

これは「1曲を最後まで聴き抜く根性」ではなく、音楽を作業場の照明みたいに使っているイメージに近いと言えるでしょう。

一方で、認知能力が低い側では、音楽を強い感覚や強い情動を得るために使う傾向が高いという関連研究もあり、音楽との付き合い方がその場その場の刺激寄りになりやすく、長く安定して流し続ける使い方とは少しズレる可能性があります。

ただ今回の研究の中心となる証拠は観察的な研究で、関連する過去の研究の多くも同様に傾向を調べるに留まっています。

研究者たちも、これら理由として挙げられたものを確定したものと扱うにはまだデータが足りないことを認めています。

それでも、この研究が示している未来は少しだけ興味深いものです。

もし音楽だけでなく、本や移動、スマホの使い方など、さまざまな日常行動を組み合わせて見ていけば、より自然な形で人の認知状態を理解できる可能性があります。

たとえば、認知機能の低下に早く気づいたり、その人に合ったデジタル環境を自動で調整したりすることも考えられます。

もしかしたら未来のスマートウォッチには、脈拍や血圧などの生体データに加えて、音楽や映像の視聴履歴やその継続時間も見ながら、個人の認知機能の変化を総合的に教えてくれる、テストが要らない知能測定機になってくれるかもしれません。

元論文

Deep Beats, Deep Thoughts? Predicting General Cognitive Ability from Natural Music-Listening Behavior
https://doi.org/10.3390/jintelligence14020029

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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