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パンチくんが「飼育員にしがみつかない日」を願って 市川市動植物園が描く、自立という名の真の愛情

  • 2026.3.21
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市川市動植物園のサル山で、群れ入りを目指して頑張るニホンザルのパンチくん。食事の時間になると飼育員さんに飛びつき、〝ギュッ〟としがみついて離れないのですが、このパンチくんがあまりにかわいいためにファンにとっては人気の一場面です。しかし、その光景を近くで見守る市川市動植物園の安永崇課長や飼育員のみなさんの願いは、実は少し異なる場所にあります。

「自立」こそが、飼育員の最大の喜び

安永課長は以前、emogram編集部の取材に対してこのように説明しました。

安永課長:「飼育員にしがみつくパンチがかわいいという声も聞きますし、そのお気持ちもよく分かります。しかし、われわれスタッフとしては、食事の時間に飼育員から離れて群れのみんなと食べてくれることが何よりも嬉しいんです」

実際に先日、パンチくんが食事の時間になっても飼育員にしがみつかなかったことがあったのですが、それについて安永課長は「その姿を見て、担当飼育員は本当に喜んでいましたし、私自身も心から嬉しかった」と話しました。人間への依存を断ち、サル山の群れの一員として踏み出すことが何よりも大切なのです。

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市川市動植物園=(撮影:産経新聞)

積極性と危うさのあいだで

パンチくんは、ニホンザルの中でも積極的な性格です。ほかのサルに対しても躊躇なく近づいていく度胸は、群れ入りを目指す上で大きな強みになるとみられています。一方で、その積極性から〝ちょっかい〟をほかのサルに出してしまい、力の強い個体から厳しく叱られる場面も少なくありません。

これまで飼育員に育てられたサルが群れに入ることは、常に危険と隣り合わせです。今、パンチくんは「サルの幸せ」を掴むための大切な時期にいるのです。

私たちの「歓声」が、パンチくんの自立を阻まないために

ここで改めて、私たちファンもパンチくんのためにできることがあります。市川市動植物園の公式Xでも呼びかけられている通り、人間が発する大きな歓声や、執拗な視線、カメラのシャッター音は、サルたちにとって大きなストレスとなります。

「一個体が感じた脅威が群れ全体に伝播し、サル同士の喧嘩など重大な問題に発展する可能性がある」(公式Xより)

私たちが「かわいい!」「きゃあ~」と発する声は、群れに緊張感をもたらし、その結果、立場の弱いパンチくんへの「とばっちり」へと発展する可能性もあるのです。

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市川市動植物園=(撮影:産経新聞)

「見守る」という応援

パンチくんが飼育員さんの足元を離れ、群れの仲間たちと肩を並べてリンゴをかじる日。それは、私たちファンが大好きな〝飼育員さんに甘えるかわいいパンチくん〟の風景がなくなってしまう日かもしれません。

でも、その時こそがパンチくんが自立へ歩みを進めた記念すべき日。「しがみつかないで」と願う飼育員さんの厳しいほどの優しさに倣い、私たちもまた、パンチくんが群れの中に溶け込んでいく背中を、静かに、そして温かく見守ることが重要なのかもしれません。

ライターコメント

パンチくんが飼育員さんにしがみつく姿、本当にかわいいですよね。飼育員さんがいくら動いてもめげずに足に腕に場所を変えつつ離れないパンチくんの姿に、癒された人は多いと思います。一方で、そんな光景がなくなる日を飼育員さんたちは待っています。かわいいパンチくんはすでに配信されたSNSの動画で楽しんで、市川市動植物園ではパンチくんを「静かに」見守りたいと思います。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。

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