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「自閉症」の息子は11歳…いずれ来る「親なき後」をどう生きるのか 母が考え抜いた障害者の「本当の自立」

  • 2026.2.28
息子の幼稚園時代、他の子のように将来に「夢」など思い描けず鬱々(うつうつ)とした思い出(べっこうあめアマミさん作)
息子の幼稚園時代、他の子のように将来に「夢」など思い描けず鬱々(うつうつ)とした思い出(べっこうあめアマミさん作)

ライターとして活動するべっこうあめアマミさんは、知的障害を伴う自閉症がある11歳の息子と、きょうだい児である7歳の娘を育てながら、発達障害や障害児育児に関する記事を執筆しています。

アマミさんによると、息子の幼稚園時代、教室で他の子どもたちが「将来の夢」を語る中、息子の将来を思って鬱々(うつうつ)とするという経験を経て、気付けば「親なき後」や「お金」「住まい」といったテーマに向き合うようになったということです。「障害年金はいくらもらえるのか、それで生活が成り立つのか」「重度の障害がある人にとっての『自立』とは何なのか」と考えるようになったといいます。

障害児の親として集めてきた情報や感じてきた葛藤をもとに、将来に備えて今から意識しておきたい制度や考え方についてお伝えします。

将来は「夢見るもの」ではなく「必ず来る現実」

息子が幼稚園のころ、「将来の夢を発表する」という場面に何度か立ち会ったことがありました。

戦隊ヒーロー、アイドル、サッカー選手…子どもたちの夢をほほ笑ましく聞く場ですが、重度知的障害がある息子を育てる私にとっては、なんとも苦々しい時間でした。

息子の将来に「夢」など思い描けるはずもなく、将来は、障害者就労か、作業所か、そもそも居場所はあるのか…他の子どもたちのようにキラキラした世界を考えられなかったからです。

特別支援学校に入学してからは、さすがに「将来の夢を発表する」などという機会は一切ありませんでした。しかし障害児の世界はやたらと現実的で、今度は急に具体的な話題で「将来」のことを耳にする機会が増えてきたのです。

まず、小学1年生の段階から、任意ではありますが、「親なき後」などシビアな将来に関するテーマの勉強会の案内が入ります。子どもが小学校低学年のうちから作業所見学にも行けますし、息子が利用している通所型の福祉サービスの「放課後等デイサービス」の調査票では、毎年「中学校卒業後の進路希望」を書く欄がありました。

そんな状況で過ごしていると、息子の将来について、否が応にも現実的に考えるようになりますし、知識もついてきます。

そんな息子も4月から小学6年生。情報通なママ友からは、「良い障害者施設はどこもいっぱいで10年待ちとかだから、中学に入ったら施設探しを始めた方がいいんだって」と聞き、まだ小学生の息子の具体的な将来を考えなければいけないとは、なんて酷な育児だろうといまさらながらに思うことがあります。

それでも、障害者施設になかなか空きが出ないことも事実、親なき後は必ず来るということも事実です。子どもが一生困らないで過ごせるように、成人後の住まいを考えることは、冷たさではなくまぎれもない親からの愛情なのだと思うのです。

「いつかは子どもの発達が他の子に追いついて、普通の社会人になれるかもしれない」

そんな幻想は、小学5年生の障害児を育てる母親としてはとっくに捨てています。現実から目をそらさず、息子の確実な将来に向けて、動いていくしかないのです。

自閉症の息子に不可欠な「障害年金」

障害児でも健常児でも、親は子どもが「将来お金に困らないか」ということを気にすると思います。多くの親御さんは、子どもが将来しっかり稼いで経済的に自立できるようにと考えるでしょう。

しかし、息子のような重度の障害がある子の場合は、自分で自分が生きていくだけのお金を稼いでいくことは、現実的ではありません。そこで考えなければいけないのが「障害年金」です。

障害年金は、受給要件に就労の有無は含まれていないため、重度の障害ではない場合も、受給要件を満たしていれば仕事をしながら受給することもできます。障害がある子どもがいる親御さんは、ぜひわが子のために知っておいてほしい制度です。「年金」というと、高齢者がもらうものというイメージがあるかもしれませんが、それは65歳以上の人が受給できる「老齢年金」のことです。障害年金は、原則として20歳から64歳の間に申請することで、現役世代でも受給できる年金なのです。

息子のように生まれつきの障害がある人だけでなく、後天的に何かしらの障害を負った人や、病気を抱えた人も申請できます。息子のように、先天性の障害がある場合や、20歳以前に障害の原因となった病気やけがについて初診を受けた人は、障害年金の中でも障害基礎年金を請求できます。

ただし、どんなに重い障害や病気があっても自分で申請しなければ、1円ももらえることはありません。障害年金を申請できる年齢は、原則として20歳からですが、この申請のための書類手続きがとてつもなく大変だと聞くので、私は戦々恐々としています。

医師の診断書などの書類も必要になってくるので、子どもが19歳になったらとりかからなくてはならないと思っています。

障害基礎年金には1級と2級がありますが、2025年度の金額で、1級で年額103万9625円、2級で年額83万1700円が支給されています。これは障害があるわが子の将来の生活を支える、大きな柱となるのではないでしょうか。

障害がある子どもが、将来的に施設に入ったとします。すでに施設で生活している、成人した障害がある子どもがいる人に聞いたところ、そのお子さんの場合、月々にお子さんがかかる施設費用などの生活費は、お子さんがもらっている障害基礎年金と各種障害者手当で完全に賄われているということでした。

ただし、施設の費用を決める、大きな理由が家賃です。都市部では一般の住宅でも家賃が高いように、施設も高額になります。地方の施設ならば、家賃が抑えられる分費用が安く済みます。

経済的に困らないために、わが子と将来的に離れて暮らす決断も、必要なのかなと腹をくくっているところです。

重度の障害がある人にとっての「自立」とは

確かな支援を得るために、息子の「できない現実」をしっかり見る(べっこうあめアマミさん作)
確かな支援を得るために、息子の「できない現実」をしっかり見る(べっこうあめアマミさん作)

「自立」とは、「他の援助を受けずに自分の力で身を立てること」だと一般的には認識されていると思います。

しかし障害者の場合、必ずしも自立の定義がこれだけとは思いません。人によってはどうしても働けない現実があり、介護が必要な現実は変えようがないのだから、支援と制度の中で、生活が成り立つ状態を「自立」と考えてもいいのではないかと思うのです。

欲を言えば、支援を受けながらでも、自己決定し、自分の人生を自分でデザインして自分なりに社会に貢献できたらそれが一番いいでしょう。

しかし、重度の知的障害がある息子の場合、「自己決定」はかなりハードルが高いです。それならばせめて、親の手を離れても、多くの支援者を味方につけながら、経済的にも困らず生きてほしいと願っています。

先述のすでに施設で生活している、成人した障害がある子どもがいる人の話を思い出してみます。

その人のお子さんは、親元を離れて地方の施設で生活し、障害基礎年金と障害者手当で経済的にも親からの出資なしで自立しています。これも、一つの「自立」の形だと思うのです。

本人がたくさん稼ぐことができるようにするだけが自立への道ではありません。支援を前提に、生活とお金が回っている状態を目指すこと、これが、私がやるべき息子の「自立」への道だと思っています。

将来のために今知っておきたい申請のこと

「障害があってもなくても子育ては同じ」と捉える人もいるかもしれません。しかし、私は障害児育児と健常児育児は、根本的に違うと思っています。目指すところが違うのだから、考え方も価値観も変えて臨まなければなりません。

障害年金を将来もらうときに、1級、2級と障害の程度で差がつくように、大人になってからの各種障害福祉サービスを受けるためには、18歳で「障害支援区分」の認定調査というものもあります。どちらも、障害の程度が重い、できることが少ないと思われるほど、手厚い支援が受けられるようになります。

親として、子どもの能力には期待したいし、「もっとできる」と親の欲目も出てくるところです。

しかし、子どもの将来を考えて「障害が重い」「できないことが多い」と「重く」書くことは愛情でもあります。

「できる子に見せたい」という親の葛藤もありますが、申請では「できない現実」を書く重要性を認識しておく必要があります。親が軽く書くと、困るのは将来の本人なのです。 そして、重度知的障害がある人にとっての自立とは、「支援がある」「お金が切れない」「生活が続く」ということ。

親が元気なうちにこれらの条件を整えられるように、息子が小学生の今から、親なき後を支える土台をつくっていきたいと思います。

ライター、イラストレーター べっこうあめアマミ

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