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及び腰になりながらもファンクラブを開設!

  • 2026.3.20

ディープな音楽ファンであり、漫画、お笑いなど、さまざまなカルチャーを大きな愛で深掘りしている澤部渡さんのカルチャーエッセイ連載第15回。突然「ファンクラブ」を爆誕させた澤部さんがその成り立ちと内容、悩みに悩んだ名前について綴ります。

どういうわけかファンクラブを立ち上げることになった。「そういうのあってもいいんじゃない?」と前からスタッフに言われてはいたが、「ファンクラブって言ったって、何やったらいいのよ?」と疑問もあって、ずっと及び腰だった。

及び腰になるのも無理はない。ファンクラブに加入するメリットを考えてみよう。ひとつは「チケットが手に入りやすくなる」。しかし、スカートは万年チケットが完売しないが、会場はパンパンに見える(それも東京公演のみ)バンドなのだった。もうひとつは「普段は謎に包まれたその人のプライヴェートに近いものが見られる」。しかし、私はあけすけにプライヴェートをインターネットの大海に晒すタイプのミュージシャンなのであった!

つまりファンクラブの名の下、メリットなしで人を集めることになる。そうしたら30人ぐらいしか集まらないんじゃないか。それに意味などあるのか……? と自問自答を繰り返した結果、40代が目前となってきた今、とにかくなんでもやってみるんだよ、と開設が決定した。

どういう内容にしよう、ということをまとめていく時に、エッセイやレヴューを書きたい、というのが真っ先に浮かんだ。文章をもう一度自分のものにしたかった。好きな漫画や音楽、特に漫画について「こういうところがいいんです」と伝えたい時、どうしても考えがゴチャついてしまい、「とにかく読んでくれ」となってしまうのが近年の悩みだった。これは特に、時々出演させてもらっているTBSラジオ「アフター6ジャンクション2」で漫画について話す時に強く思っていたことで、とにかくこれを克服したかった。もう少し考える、ということに挑戦しなければならない。

最初はリアルタイムで触れた漫画や映画、音楽や小説について感想文を書くようなコーナーと、昔から好きな漫画や映画、音楽や小説について書くようなコーナーを設けよう、と考えていたのだが、その過程で「自分がどうやって音楽を聴いてきたのか」ということがぼんやりしていることをなんとかできないか、と思うようになった。

何年か前、奥田民生氏が籍を置くバンド、ユニコーンとどうやって出会ったかを思い出そうとした時に、古い日記(私はあけすけにプライヴェートをインターネットの大海に晒すタイプの一般人でもあったのだ……)を訪ねてみたら「先生が貸してくれたユニコーンのCDは、今でも覚えているがHMVの袋に入っていた」と書いてあって愕然とした。私は「HMVの袋に入っていた」ことを忘れていたのだ。忘れたいようなことを今でも覚えていて、忘れたくなかったことを忘れてしまっている。

「いい加減ファンクラブの名称を考えてください」

こうやって毎日が過ぎていってしまったら、たとえば思い出した拍子につい椅子から立ち上がってしまうような恥ずかしい思い出も忘れているなら都合がいい、でも、現実はそうじゃなかったことがわかってしまった。今読んでこれが面白かった、と伝えるのは一旦棚上げして、集中的に過去の自分がどうやって音楽を聴いてきたか、どういうことを感じたのか、思い出せるものは思い出していくことにした。その結果、サーガとでも呼べそうなものが編まれていって、そのサーガはテキストファイルなのに619KBという異常な数字を叩き出している。それを小分けにして週一更新のコンテンツが出来上がった。

全体像が見えたころ「いい加減ファンクラブの名称を考えてください」と言われて頭を抱えてしまった。「スカートファンクラブ」と口に出した時に発せられる強烈なオゲレツ臭に繊細な私は耐えられなかった。八方塞がりだ! これが天罰か! それでも頭を捻って最初に思いついたのは「さわまん保存会」。おそらくダンビラムーチョのコント、「冨安四発太鼓保存会」に触発されたのだけど、提案を受けたスタッフの表情は硬かった。

その後、スタッフ間でいくつかやりとりを経て「スカート・友の会」とか「澤部感謝クラブ」とか「澤部自然史ミュージアム」とかいくつも案が出たけど、「スカート」をつけるとオゲレツ臭がする、「澤部」は澤部で画数が多くて威圧感がある、となっていって、スタッフ間のLINEでは3人から既読スルーの憂き目を見た「電撃澤部倶楽部」が採用されることになった。

画数多くて威圧感があるならいっそ威嚇してしまえ、と言わんばかりの名称にたどり着いた。しかし、傷だらけの我々は一体どこにたどり着いたというのだろうか? 着いた実感はあるが着いた場所には名称がない気がする。どうなる電撃澤部倶楽部! 負けるな電撃澤部倶楽部!

(他にも、普段、弾き語りのライヴはボイスメモで録音しているので、そこからいい感じのライヴを見繕っては月に一本ぐらいはアップしたり、ファンクラブ限定のグッズやライヴなどを現在は考えております……。カクバリズムもファンクラブ立ち上げからの運営は初めてなので、こうして欲しい、などのご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします……)

澤部 渡(さわべ・わたる)

2006年にスカート名義での音楽活動を始め、10年に自主制作による1stアルバム『エス・オー・エス』をリリースして活動を本格化。16年にカクバリズムからアルバム『CALL』をリリースし話題に。17年にはメジャー1stアルバム『20/20』をポニーキャニオンから発表した。スカート名義での活動のほか、川本真琴、スピッツ、yes, mama ok?、ムーンライダーズのライブやレコーディングにも参加。また、藤井隆、Kaede(Negicco)、三浦透子、adieu(上白石萌歌)らへの楽曲提供や劇伴制作にも携わっている。25年にCDデビュー15周年を迎え、5月14日にはアルバム『スペシャル』をリリース。12月14日にはスカートCDデビュー15周年記念スーパーライヴ「超ウルトラハイパーウキウキスペシャル優勝パレード2025」を開催。そして、初のオフィシャルファンクラブ「電撃澤部倶楽部」がスタート!
https://skirtskirtskirt.com/

文=澤部 渡
イラスト=トマトスープ

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