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獲物の頭蓋に突き刺さった「ティラノサウルスの歯」を発見

  • 2026.3.20
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

今から約6600万年前、白亜紀末の北アメリカ。

そこでは、巨大な肉食恐竜ティラノサウルスが頂点捕食者として君臨していたと考えられています。

しかし、彼らが本当に「獲物を仕留めるハンター」だったのか、それとも死骸をあさる「スカベンジャー」であったのかは、長らく議論の的でした。

そんな中、米モンタナ州立大学(MSU)の博物館に収蔵されていた1つの化石が、その議論に新たな光を当てました。

なんと草食恐竜エドモントサウルスの頭骨に、ティラノサウルスの歯が刺さったまま残されていたのです。

この異様な化石は、Tレックスの捕食の直接的な証拠として貴重な試料です。

研究の詳細は2026年2月17日付で科学雑誌『PeerJ』に掲載されています。

 

目次

  • 「顔面に突き刺さった歯」が語る最後の瞬間
  • Tレックスの歯と断定、そして見えてきた「食べ方」

「顔面に突き刺さった歯」が語る最後の瞬間

問題の化石は、2005年にアメリカ・モンタナ州東部のヘルクリーク層から発見された、ほぼ完全なエドモントサウルスの頭骨です。

この標本の最大の特徴は、鼻の上部を貫通し、内部の空洞にまで達する「折れた歯」が埋まっていた点にあります。

この歯は単に表面に残っているのではなく、骨の中に深く食い込んでいました。

つまり、かなり強い力で噛みつかれた結果、歯が折れてそのまま残ったと考えられます。

青色がTレックスの折れた歯/ Credit: Taia C.A. Wyenberg-Henzler et al., PeerJ(2026)

さらに、頭骨にはこの歯以外にも複数の噛み跡が確認されており、攻撃が一度きりではなかったことがうかがえます。

チームはCTスキャンを用いて歯の位置や角度を詳細に解析。

その結果、この歯はエドモントサウルスが攻撃者と正面から向き合った状態で噛まれた際に折れた可能性が高いと判断されています。

現代の動物でも、捕食者と被食者が正面から衝突する状況は、致命的な攻撃に直結することが多いです。

そして、この化石でもそれを裏付ける証拠が見つかりました。

歯の周囲には、傷が治癒した形跡がまったく見られなかったのです。

これは、この個体が噛まれた後に長く生き延びることはなかったこと、つまりこの攻撃が致命的であった可能性を示しています。

まさにこの歯は、エドモントサウルスの「最期の瞬間」を封じ込めた証拠といえるでしょう。

Tレックスの歯と断定、そして見えてきた「食べ方」

研究者たちは、歯の大きさや鋸歯(ギザギザの構造)を詳細に比較し、ヘルクリーク層に生息していたすべての肉食恐竜の中から候補を絞り込みました。

その結果、この歯はティラノサウルスのものと最もよく一致することが判明しました。

さらに、歯のサイズから、この個体は頭骨の長さが約1メートルに達する「成体のティラノサウルス」であったと推定されています。

しかし、この化石が示しているのは単なる「攻撃」だけではありません。

頭骨の左右には複数の噛み跡があり、その位置が重要な意味を持っていました。

特に、下顎の後方3分の1には、咀嚼(そしゃく)筋が集中しており、体の他の部位が食べ尽くされた後でも比較的多くの肉が残る場所です。

現代の肉食動物も、まず柔らかく栄養価の高い部位から食べ、最後に肉の少ない部位へと移ります。

今回のエドモントサウルスの頭骨に見られる噛み跡の分布は、まさにそのような「食べ進め方」を反映していると考えられます。

つまり、この個体は単に殺されただけでなく、その後にしっかりと食べられていた可能性が高いのです。

また、この標本が頭骨のみで発見されている点も重要です。

これは、体の大部分の肉がすでに食べられた後、残された頭部が水流などによって運ばれ、最終的に埋没したことを示唆しています。

Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

「狩っていた証拠」か、それとも「死体をあさった痕跡」か

ティラノサウルスの食性については、「積極的な捕食者だったのか」「死肉をあさることが多かったのか」という議論が続いてきました。

今回の化石は、この問題に対して重要なヒントを与えます。

歯の刺さり方が示す正面からの攻撃、治癒痕の欠如、そして骨に歯が折れて残るほどの強い力。

これらを総合すると、このエドモントサウルスは生きた状態で、ティラノサウルスに殺された可能性が高いと考えられます。

一方で、死んだ後に噛まれた可能性も完全には否定できません。

しかし、いずれにしてもこの化石は「ティラノサウルスが大型草食恐竜の頭部を積極的に噛み砕き、食べていた」という行動を示す確かな証拠です。

恐竜の化石の多くは、骨の形や種の特徴を教えてくれます。

しかし、この標本はそれだけではありません。

「誰が、どのように、何をしたのか」という行動そのものを記録しているのです。

参考文献

Rare fossil at Montana State’s Museum of the Rockies records Tyrannosaurus attack
https://www.montana.edu/news/25112/rare-fossil-at-montana-state-s-museum-of-the-rockies-records-tyrannosaurus-attack

Scientists Found a T. Rex Tooth Embedded in Another Dinosaur’s Skull
https://www.sciencealert.com/scientists-found-a-t-rex-tooth-embedded-in-another-dinosaurs-skull

元論文

Behavioral implications of an embedded tyrannosaurid tooth and associated tooth marks on an articulated skull of Edmontosaurus from the Hell Creek Formation, Montana
https://doi.org/10.7717/peerj.20796

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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