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母の手料理を「口に合わない」と返した→妻に差し出されたフライパンの重さが忘れられない

  • 2026.3.20
ハウコレ

あの日、食卓に置かれたフライパンの冷たい感触を、今でも覚えています。「口に合わない」。ただ正直に言っただけのつもりでした。

素直に言っただけだった

母が作った肉じゃがを一口食べて、「口に合わない」と言いました。嘘をつくほうが失礼だと、そのときは本気でそう思っていたのです。

実は子どもの頃から、母の料理は少し苦手でした。でも言えないまま実家を出て、一人暮らしを経て結婚して、伝える機会を完全に失っていました。

母は「あら、そう……ごめんね」と小さく呟きましたが、悪気はありませんでした。「別に怒ってるわけじゃないけど」とも言った。本当にそう思っていた。あの瞬間の自分は、間違ったことをしている自覚がまるでありませんでした。

フライパンの前で

妻がキッチンからフライパンを持ってきて、目の前に置きました。

「じゃあ自分で作れば。私もお義母さんも、あなたのために台所に立ってるの。文句は自分で作ってから言って」。

なだめる母の横で自分を見る妻の目はまっすぐで、怒りというより、覚悟のようなものが見えました。母の前で恥をかかされた、と最初は思いました。

でも同時に、何も言い返せない自分がいたのです。考えてみれば、自分は料理をしたことがほとんどありません。作ってもらうのが当たり前の顔で、味にだけ注文をつけていたのです。

母の手

食事のあと、母が洗い物をしようとするのを止めて、自分がシンクの前に立ちました。慣れない手つきで皿を洗っていると、ふと母の手が目に入りました。

あかぎれだらけの、荒れた指先。何十年も台所に立ち続けてきた手です。「口に合わない」の一言が、あの手に向けられたものだったことに、ようやく気がつきました。

そして...

翌朝、妻に「昨日はごめん」と頭を下げました。そして母にも電話をかけ、「肉じゃが、また作ってよ」と伝えました。母は少し驚いた声で「本当に?」と聞き返してきました。

あのフライパンは重かった。でもそれは、自分が今まで持とうとしなかった重さでした。味がどうかじゃない。誰かが自分のために台所に立ってくれている。その事実の重さを、ようやく知ったのです。

(30代男性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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