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「スマウト」が誘う”東京だけ”じゃない生き方

  • 2026.3.17

東京で暮らし続けるか、地方に移住するか──。そんな二択の時代は、もう終わりつつある。週末だけ地域とつながる。副業で地方の企業を手伝う。好きな町に月1回通う。東京に軸足を置きながら、地方と多様に関わる選択肢が、確実に広がっている。その流れを牽引するのが、2018年誕生の地域とつながるマッチングプラットフォーム「スマウト」だ。登録者約9万人(LINE登録ユーザーを含む)、登録地域約1,200。全国の自治体の多くが導入し、移住や関係人口に関心のある層を中心に、20代から50代まで幅広い世代が利用している。

「東京か、地方か」ではなく「東京も、地方も」。スマウトが描く新しいつながり方は、あなたの暮らしにどんな可能性をもたらすのか。事業責任者・宮本早織の言葉から紐解く。

「移住しなくていい」が、むしろ人を動かす

面白法人カヤックが運営する「スマウト」は、自治体や地域の企業が掲載するプロジェクトと、地域とのつながりを求める利用者をマッチングするプラットフォームだ。2018年6月のサービス開始以来、登録者は約9万人に達し、全国1,200近くの自治体や地域企業の利用実績がある。

特徴的なのは、「移住」だけを前提としない点。2024年、スマウトはサービスのタグラインを「移住マッチングサービス」から「地域とつながるプラットフォーム」へと変更した。面白法人カヤックのちいき資本主義事業部・事業部長の宮本早織は、この変更の背景をこう語る。

宮本がカヤックに入社したのは4年前、コロナ禍の真っ只中だった。前職はインフォバーンで、企業のメディアをつくるプロデューサー。そこで地方創生の案件に触れ、代表の柳澤大輔の著書『鎌倉資本主義』を読んだことがきっかけだった。

「移住ニーズだけではないというのが実情なんです。移住は伴わないけれど地域とつながりたいという人の方が、ウェイトとしては高い。観光プラスアルファのディープな観光、体験、お手伝い、インターン……住むというとハードルが上がるので、短期間滞在してみませんかというところから始まる」

このアプローチを裏付けるのが「関係人口」という概念。総務省が2018年から「関係人口創出・拡大モデル事業」として推進してきたこの施策は、定住人口でも交流人口でもない「第三の関わり方」を指す。ふるさと納税、二拠点生活、地域ボランティア、週末移住──形は様々だが、地域と継続的・多様に関わる人々のことだ。

「移住しなくていい」という消極的な言葉が、逆に人を動かす。それがスマウトの提案であり、実際にユーザーの行動変容につながっている。

地域から「スカウト」される、双方向の出会い

スマウトのもう一つの特徴は、地域側から利用者に「スカウトメッセージ」が届く仕組みだ。求人サイトの地域版と言えばわかりやすい。

「移住する人だけが選ぶ権利があって、地域は選ばれるのを待つだけ。それってフェアじゃないと思うんです」と宮本は言う。小規模な自治体の中には「よく私たちのまちを知ってましたね」と謙遜するが、「重要なのは自治体の知名度や規模じゃない。地域や担当者との価値観が合えばむしろ魅力に映る」と断言する。

利用者はプロフィールを詳細に記入し、地域側も自分たちの魅力を上手に伝える。スマウトは双方に対してセミナーやマニュアル提供などのサポートを行い、マッチングの精度を高めている。

20代から50代まで均等に広がるユーザー層。トレンドを牽引する3つの波

スマウトの利用者像は、この数年で変化した。「移住」と言えば、中高年のリタイア層をイメージしがちだが、コロナ禍には家族連れや現役層が増加。そして現在、利用者の年齢層は多様化している。

「20代から50代まで、ほぼ均等に2割ずつなんです」と宮本は語る。”東京だけ”じゃない生き方は、もはや特定の世代だけのものではない。特に増えているのが、次の3つのタイプだ。

一つ目は、20代〜30代のキャリアチェンジ層。都市部でビジネスパーソンとして経験を積んだ後、次のキャリアの選択肢として地域おこし協力隊を目指したり、地域企業への転職を考えたりする層だ。「いきなり最初から地域貢献したいというよりは、キャリアをジャンプさせたいという動機。移住だけでなく副業という形も増えています」

二つ目は、40代〜50代のミドル・シニア層。大企業の黒字リストラや早期退職勧奨を受けるなど、次のステップとして地域を考える人たちだ。「ご家族がいる方が多いので、いきなり移住はハードルが高い。まずは二拠点生活で週に何回か地域の企業で働き、段階的に移住を見据えるケースも増えています」

地域の企業側も意識が変わってきている。「日本の人口構成的に40代後半が平均年齢なので、20代30代を得るのは難しいと気づいてきた。だから40代、50代でもいい人がいればウェルカムという企業や自治体が増えています」

三つ目は、大学生たちだ。首都圏の大学でも地方創生の授業や学生の地域創生団体が活発化している傾向にある。「新卒で地域に飛び込んだり、ソーシャル起業したりする学生が、今ではめずらしくなくなった」

この変化を宮本はこう分析する。「世の中の変化を敏感に察知している人たちが、早々に地域に飛び込むという選択をしているんじゃないでしょうか。よくわからないけど、このままじゃ多分まずいだろうなという漠然とした不安がある。行く先として、余白があり、チャレンジの余地がある地域というフィールドが選ばれている」

地域と関わる喜び──手応え、身体性、そして人生の変化

地域で働くことの魅力について、宮本はこう語る。「結局、私たちが最後に残されたのは身体性。体を使って課題解決できるところが地域にはたくさんある。空き家も耕作放棄地もあり、そこに入って片付けや草刈りが必要。AIの時代だからこそ、体を使って入って解決する体験に価値がある」

東京と地域の違いを、宮本は「分業」と「全人格」という言葉で表現する。「東京だと『私はここが得意なので、ここだけやらせてください』が通じる。でも地域だと、『編集が得意な宮本』だけでは済まされない。全部できますか、と問われる。覚悟は問われるけど、関われる場所がたくさんある。そういう意味での『余白』が、地域には溢れている」

この「手応え」の違いは、多くの人が共感できる部分かもしれない。東京では自分のささやかなアイデアや意見は、大きな世界の中に埋もれてしまうような感覚があるが、地域では自分が努力した分だけ目に見えて動く。KPIやSNSのバズに左右されず、もっと原始的なところで「つながる」。そこに、デジタル時代の逆説的な価値がある。

その一方で、「全人格100%で地域と濃密に向き合うことにためらう人もいる。そういう場合は、都会で専門性を発揮して働く自分をストックしておくのもいいと思います」

成功の鍵は「スキルの翻訳」と「B面の人間性」

「移住したい」と決めていなくても、スマウトを使ってほしいと宮本は言う。「今の状態で本当にいいんだろうかってモヤモヤしたタイミングで、自分の棚卸をして、新しい選択肢を提示するサービスでありたい」。

学生なら、学チカ(学生時代に力を入れたこと)を作る段階で。次のキャリアを考え始めた人なら、「居場所はここではないかも」と思う瞬間に。「あなたみたいなスキルと経験ある人を活かしたい企業が地域にたくさんあると、そのタイミングで伝えたい」。

そんなスマウトを通じて地域とつながる中で、うまくいく人といかない人には明確な差がある。宮本が挙げるのは「A面ではなくB面のプロフィール」だ。

「『経験は豊富です、どんな課題も解決できます』──こういうプロフィールの人がうまくいかないケースも多い。都会のセオリーだと転職先はあるかもしれないけど、地域では同じようにいかないこともあります」

大事なのは「やってきたこと、できること」だけではない、価値観ややりたいことがわかる「B面のプロフィール」。そこでスマウトは新しいサービスを検討しているという。利用者の内省を促すツールだ。「自分の価値観とか、したいことってなんだっけ?と考えるきっかけを作る。そこで地域に行きたいと思ったら登録すればいいし、今のところで頑張ることになる人は登録しなくてもいい、自分を知らずに移住しても、うまくいかない。内省がうまい人が、移住先でもうまくいっていると感じます」

スマウトが提示する、”東京だけ”じゃない生き方

スマウトが年2回発表する、ユーザーが選ぶ「スマウト移住アワード」では、有名都市だけが上位に来るわけではない。例えば2025年上半期の結果は、長野県伊那市、長崎県新上五島町、石川県加賀市といった地域が並ぶ。「コミュニティが生きているところ、地域が積極的に発信しているところに人が集まる。知名度ではなく、どんな人がいるかです」

スマウトでは、地域が発信するプロジェクトに約9万人のユーザーが「興味がある」と意思表示した数を都道府県/市区町村ごとに集計し、『スマウト移住アワード』として毎年2回発表している。Harumari Inc.

移住か、現状維持か。その二択に窮屈さを感じたことがある人にとって、スマウトが提示するのは「つながり方の自由度」だ。週末だけ、副業として、月1回のボランティアとして。あるいは、東京での仕事はそのままに、好きな町に通い続けるという選択も。

“東京だけ”じゃない生き方が、普通になりつつある。その流れの先頭を走るスマウトは、あなたにどんな可能性を見せてくれるだろうか。

スマウト基本情報
運営:面白法人カヤック
URL:https://smout.jp/Harumari Inc.
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