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モードの都で輝くハイジュエリーの最前線。思想と技巧が織りなす珠玉のコレクション

  • 2026.3.13
Hearst Owned

現地時間2026年1月26日(月)〜30日(金)に開催された、2026年春夏シーズンのオートクチュール・ファッションウィーク。モードの祭典と呼ばれるこの特別な数日間は、クチュールだけでなく、ハイジュエリーにとっても創造性が最高潮に達する舞台となる。

選び抜かれた宝石、幾世代にもわたり受け継がれるサヴォアフェール、そしてメゾンごとに培われた揺るぎない美学。ハイジュエリーは、それらすべてが交差することで生まれる“身にまとう芸術”である。そこには歴史や自然、建築、クチュール、さらには個々の創業者の哲学までもが重なり合い、唯一無二の輝きへと昇華していく。今季もまた、名だたるメゾンがそれぞれの視点から夢と技巧を描き出し、新たな物語の扉を開いた。

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カルティエ(CARTIER)

Maxime Govet © Cartier

「カルティエ」は、“均衡の美”を体現するハイジュエリーコレクション「アン エキリーブル」第3章を発表した。無駄をそぎ落とした端正なラインと、存在感のあるボリューム。落ち着いた同系色の重なりと、鮮やかな色彩のアクセント。対称と非対称といった相反する要素を巧みに組み合わせ、緊張感のなかに調和を生み出している。相反するものをぶつけるのではなく、精密に整えながら共存させる——それこそがメゾンの創造の核である。

Valentin Chemineau © Cartier
Maxime Govet © Cartier

“ユーフォニア”では、エメラルドカットのルビーとダイヤモンドが呼応し合い、抽象的な構成のなかに洗練されたハーモニーを描き出す。スクエア、バゲット、ブリリアントと多彩なカットがリズムを刻み、可動式クラスプがしなやかな動きを可能にする。“スプレンデア”は34石のダイヤモンドが光のラインを形成し、金属の存在を極限まで感じさせない石留めによって、波のように連なる輝きを実現。

Valentin Chemineau © Cartier
Maxime Govet © Cartier

さらに“オンドラ”は、クリソプレーズやスピネル、ターコイズ、ダイヤモンドを組み合わせ、有機的フォルムと幾何学的構造を対話させる。前後に配されたタッセルが動きに呼応し、クラゲの流れるような姿から着想を得たフォルムが抽象的な生命感を宿す。ハイジュエリー クリエイティブ ディレクターのジャクリーヌ・カラチが語る「抑制によって存在感を際立たせる」という思想のもと最新章は、「カルティエ」ならではの均衡の美を鮮やかに提示している。

Maxime Govet © Cartier

ブシュロン(BOUCHERON)

パリのハイジュエラー「ブシュロン」が毎年1月に発表するメゾンの歴史やヘリテージを現代的に再解釈する“ヒストリー オブ スタイル”では、今回は創業者フレデリック・ブシュロンに焦点を当てた。クリエイティブ ディレクターのクレール・ショワンヌは、彼の先駆的スピリットを4つの章で描き出す。

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第一章 “アドレス”は、1893年にヴァンドーム広場26番地へブティックを構えた革新性へのオマージュ。広場のフォルムを模したネックレスには、10.01カラットのタイプⅡaダイヤモンドを中心が中央に輝く。首元に沿うように242石のバゲットカット ダイヤモンドが連なり、制作には1107時間を費やした。

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第二章“スパーク”は、1889年に誕生したアイコン“クエスチョンマーク ネックレス”に着想を得た。クエスチョンマークのフォルムはそのままに、異なるカットのダイヤモンドを連ねることでモダンなタッチを加え、素材と構造の革新を純粋なフォルムで表現した。

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第三章“シルエット”では、織物商の家に生まれたフレデリックの身体観とジュエリーでの表現方法に着目。7連のダイヤモンドストランドが流れるマルチウェア作品は6通りで着用可能だ。

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そして最終章“アンテイムド”は、手つかずの自然がテーマに。1879年に描かれた、アイビーをモチーフとするアーカイブのデザイン画を現代技術で実現。葉の動きまでをも写実的に描写したロングネックレスは、7通りにも変化する。2600時間の制作時間を要したサヴォワールフェールの結晶だ。創業から168年を経てもなお、フレデリック・ブシュロンの革新性はヴァンドーム広場で輝き続けている。

グラフ(GRAFF)

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21世紀のキング オブ ダイヤモンドと称されるハイジュエラー「グラフ」は、パリの旗艦店にて壮麗なコレクションを披露した。本作では、31カラットの非加熱エメラルドカット サファイアをセンターに据えた壮麗なチョーカーと、鮮やかなサファイアとダイヤモンドがきらめくイヤリングが初披露された。数百時間を費やして完成した作品は、静かな水面に雫が落ちる瞬間から着想を得たデザイン。このチョーカーとイヤリングにはトータル200カラット以上の厳選されたダイヤモンドがあしらわれ、シームレスなサーフェスが幾何学的でありながら流れるような輝きを生み出す。

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エメラルドカットが施された極上のダイヤモンドを敷き詰めたチョーカーの中央からランダムに広がるペアシェイプ ダイヤモンドとサファイアは、躍動感あふれるモダンな輝きを放つ。セットのイヤリングにも5カラットのエメラルドカットサファイアを中心に、多彩なカットのダイヤモンドとサファイアが連なり、力強い存在感を放つ。卓越した技巧が生み出す流麗なフォルムは、「グラフ」ならではのクラフツマンシップの結晶だ。

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フランソワ・グラフCEOは、「65年以上にわたりハイジュエリーの進化をけん引してきた『グラフ』のレガシーを映し出す作品」と語る。歴史的なストーンからコンテンポラリーなマスターピースに至るまで、宝石のエモーショナルな力を理解し、ジュエリーへとクリエイトし続けてきた「グラフ」。その最新作では、精緻な技術と大胆な創造性が交差する、希少性と芸術性に満ちた世界へと私たちを誘う。

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ショーメ(CHAUMET)

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「大地と空のあいだ。地平線のかなたへ。雲よりも高く、天頂へ。」そんな詩的なメッセージとともに、「ショーメ」が発表した新作ハイジュエリーコレクション“アンヴォル”は、翼をテーマに自由と自己表現をたたえるカプセルコレクション。約250年にわたり自然をたたえてきたメゾンが、今回は“翼”というモチーフに新たな光を当てた。象徴的なティアラは5通りに変化し、伝統的なティアラから大胆なマスク、さらには2つのブローチへと姿を変える。

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同コレクションの核となるのは、メゾン初となる全面的なグランフーエナメルという装飾技術の採用だ。淡い空色から深いラピスブルーへと移ろうブルーのグラデーションは、1910年にアメリカ人彫刻家ガートルード・ペイン・ホイットニーが購入したウィングティアラへのオマージュ。高温で幾度も焼成を重ねることで生まれる奥行きと透明感が、まるで印象派の絵画のような繊細な動きを宿す。ネックレスやイヤリング、ブローチ、リングに至るまで、マダガスカル産サファイアとダイヤモンドが、翼の軽やかさと躍動感を際立たせる。

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変容というテーマは、ブルーエナメル、ダイヤモンドとパールのソトワールに下げられたペンダントウォッチにも表れる。翼のモチーフが開くとソーダライトの文字盤が現れ、身につける人の意思で姿を変える。格式高いハイジュエリーに、遊び心と動きをもたらす「アンヴォル」。それは、歴史に裏打ちされたスタイルを継承しながら、自由に飛び立つ勇気をたたえる「ショーメ」の新たな飛翔(ひしょう)である。

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ディオール(DIOR)

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ハイジュエリーの世界において、幻想を宝石へと昇華させるメゾンはそう多くない。中でも「ディオール」は、その名を聞くだけで夢と詩情が立ち上る存在だ。新作ハイジュエリー コレクション“ベル ディオール”は、創設者の庭園への愛や占星術への情熱、そしてフェミニニティへの賛歌を現代に映し出す全57点で構成された。

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ファイン ジュエリー部門のクリエイティブ ディレクター、ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌは、象徴的なブレードを優雅なフリンジへと再解釈。揺れ動くラインは天体の軌道やクチュールドレスの裾を思わせ、夢と現実を軽やかに結びつける。

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ひときわ目を引く“ソレイユ セレスト”のパリュールは、占星術に魅了されたムッシュ ディオールへのオマージュでもある。イエローダイヤモンドの太陽、ターコイズを背景にダブレット技法で表現されたブラックオパールの月、きらめく星々が神秘的な宇宙を描き出す。ブレスレットはチョーカーに、ブローチはヘアアクセサリーにもなるなど、クチュール的発想も随所に息づく。

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さらに“ジャルダン マルチコロール”や“ディアレスト ディオール”では鮮やかなカラーストーンが躍動し、6.50カラットのピンクスピネルを主役にしたリングがコレクションに華やかな余韻を添える。厳選された宝石と卓越したサヴォワフェールが織りなす“ベル ディオール”は、ジュエリーを芸術の域へと押し上げる、詩情あふれる最新章である。

メシカ(MESSIKA)

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昨年に誕生20周年を迎えた「メシカ」は、ナミビアの大自然から着想を得たコレクション「本能の大地」の第2章をパリ本社で披露した。赤土の大地、果てしなく続く地平線、そして夕暮れに染まる空。その圧倒的な風景を、メゾンは“グルーヴ”という名のもとに、リズムを宿すハイジュエリーへと昇華させた。

主役はロードライトガーネット。深いローズレッドのビーズがアフリカのたそがれの熱を思わせる色彩を放ち、アールデコ調の端正なラインと大胆なボリュームが重なり合い、構築性と官能性が交差するリズムを生む。

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センターでは2.01カラットのオーバルカット・ダイヤモンドがきらめきを放つ。1157石で形づくるチョーカーと、計30カラットのロングネックレスに配されたダイヤモンドが鮮烈な輝きを刻み、揺れるタッセルが動きに余韻を添える。モジュラー仕様により単体でも重ねても着用可能で、光とリズムはさらに増幅する。それは自然への賛歌にとどまらず、本能と洗練を響かせる「メシカ」ならではの“グルーヴ”である。

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