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僕が「休むだけでは回復できなかった理由」──見出したセルフケア方法とは【マリウス葉の、声を聴く時間】

  • 2026.3.12

"ノイズにかき消されていた感情が、少しずつ輪郭を持ちはじめる。その“静かな時間”を意識的につくることが、僕には必要でした”

──現代社会で、心が限界を迎える経験をしている人も多いと感じます。そういうときに、「休めば治る」「寝ればよくなる」と思いがちですが、実はその裏で、しんどさを“やり過ごしてしまっている”ことも多いのではないでしょうか。マリウスさんは、どのようにしてご自身の状態と向き合っていきましたか?

正直僕も、休むしか方法がないと思っていました。でも、骨折したときに安静にしていれば自然にくっつくのとは違って、バーンアウトやトラウマは、ただ時間が流れれば癒えるものではありません。息が荒くなったり、疲れやすくなっていたり、それは心身が悲鳴をあげているサイン。今振り返ると、当時もう少し早い段階でカウンセリングを受けたり、自分の状態をチェックできていたら、どん底までいかずに済んだのかもしれないと思います。

──セラピストと話して、どんな気づきがありましたか?

幼少期の経験や、家庭での期待の受け取り方によって形づくられた思考パターンは、意識的に向き合わない限り書き換わらないと理解しました。自分は完璧主義で、周りから批判されると自分の世界はつぶれてしまうんじゃないか、と今振り返ると、オーバーリアクションなのですが、そうしか考えられなかったんです。でもセラピストと話したら、それは過激な考えだと認識できたり、違った考え方を教えてもらえたりして。

また、セラピストと話しながら、自分の過去や感情を言葉にしていくこともできました。宿題としてよくやっていたのが、散歩です。音楽もスマホも持たず、道も決めずに、ただ自分の内側の声に耳を澄ませる。

スペインで過ごした大学時代。キャンパスがあるセゴビアと言う街のプラザにて。学生や街の住民が集まり、午後にそこで過ごす時間がかけがえのないものに。
スペインで過ごした大学時代。キャンパスがあるセゴビアと言う街のプラザにて。学生や街の住民が集まり、午後にそこで過ごす時間がかけがえのないものに。

──散歩って良いですね。

散歩をしながら、木の葉っぱが風になびいて動いているのを見つめたり、木の根っこがどこまで広がっているんだろうって想像してみたり。1時間ほど歩いていると、心の奥に沈んでいた声が少しずつ浮かんでくるんです。「本当はこう感じていたんだ」「あのとき、傷ついていたんだ」って。ノイズにかき消されていた感情が、少しずつ輪郭を持ちはじめる。その“静かな時間”を意識的につくることが、僕には必要でした。

今年参加した、ケイト・スペード ニューヨークKATE SPADE NEW YORK)の「女性のメンタルヘルスのためのグローバル サミット」で、ある専門家の方が「グリマー(Glimmer)」とは、トラウマ反応を引き起こす「トリガー(Trigger)」の対義語だと話していました。グリマーとは、喜びや安心をもたらす「小さなきっかけ」のこと。特定の香りや光景、人とのつながりなどがグリマーとなり、心身のバランスを取り戻し、ストレス対処に役立つ強力なツールとされています。僕にとっては、それが自然の中に身を置くことでした。

──その経験が、“自分をスキャンする”ことへとつながっていくんですね。

そうですね。自分をスキャンすることは、何も大げさなことじゃなくて、ほんの短い時間、自分の内側を見つめるだけでいいと思うんです。それは、書き出すでも、ボイスメモを録るでも、動画に記録するでもなんでもいい。最初は慣れないと思うので、筋トレと同じで、“自分に合ったトレーニング方法”があると思います。

──マリウスさんがやって、自分にあってたと思うトレーニングは?

自分が昔やってよかったのが、15週間の「セルフヘルプブック」というエクササイズ。毎朝3ページ、自分の状態を書き続けるんです。最初の1〜2週間は、正直、何を書けばいいのかわからなかったんですが、3週目くらいから深さが変わっていく感覚がありました。悩みや楽しみ、脳が毎日消化している小さな出来事まで、いろんなものが見えてくる。そして最終的には、書かなくても自然と自分をスキャンし、セルフチェックができるようになっていました。ゴールは、自分との関係性を整えること。その関係が深まるほど、どこでエネルギーを得て、どこで消耗しているのかが明確になっていく感覚がありました。

──心理士やセラピストを頼ることへのハードルが、ぐっと下がったように感じます。

本当は、うつ病などの病名がつくような状況になる前に、誰もがもっと気軽にカウンセリングやセラピーにアクセスできる社会になったらいいなと思っています。みんなが健康診断を受けるように、「特に何もなくても心のチェックに行く」文化が当たり前になること。そんなムーブメントを、僕はつくっていきたいです。

ジュリア・キャメロンの『The Artist's Way(原題)』は、日本では『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』(サンマーク出版)というタイトルで売られている。プログラムは、「モーニング・ページ」と「アーティスト・デート」という二つの実践から始まる。毎日3ページ書くことと、自分を満たす時間を通して、各章の多彩なエクササイズが創造性の扉をひらいていく。
ジュリア・キャメロンの『The Artist's Way(原題)』は、日本では『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』(サンマーク出版)というタイトルで売られている。プログラムは、「モーニング・ページ」と「アーティスト・デート」という二つの実践から始まる。毎日3ページ書くことと、自分を満たす時間を通して、各章の多彩なエクササイズが創造性の扉をひらいていく。

話を聞いたのは……

マリウス葉

2000年、ドイツ生まれ。幼少期を父の出身地のハイデルベルクで過ごす。元タカラジェンヌの母の影響で歌や踊りのレッスンをはじめ、11歳のとき、Sexy Zoneのメンバーとしてデビュー。2022年12月、芸能活動を引退。2021年9月、スペインの大学に編入。@marius_seiryu

Photos: Courtesy of Marius Yo Interview & Text: Mina Oba Editor: Makiko Yoshida

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