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【猫の実話】抱っこは嫌いだけど、飼い主を視界に入れておきたい—若干面倒なタイプの猫に救われた話

  • 2026.3.9

【猫の実話】抱っこは嫌いだけど、飼い主を視界に入れておきたい—若干面倒なタイプの猫に救われた話

「猫がいてくれるから」がんばれる。救われた。毎日が楽しい……。そんな猫たちとの暮らし、出会いや別れなどの実話を集めた本が話題です。その中から、エピソードをひとつ紹介しましょう。めったに甘えてこないし抱っこも嫌いだけど、関心はもってほしいという、若干めんどうなタイプ。その変わらない姿が心強い、猫の話です。

ただそばにいてくれる京介

猫を飼ったら、毎晩いっしょに寝たり、ゴロにゃんと甘えてくれることを期待している人が多いと思います。

でも、あまり飼い主さんにベタベタしないタイプの猫もいます。
そのそっけなさもまた魅力ですが、「猫って思ったよりも自立心が高かった」と意外に思う人もいるようです。

そのとおり、猫は本来、自立した生き物です。
野生では群れをつくらず1匹で狩りをして、単体で生きてきた背景がある猫。

人間に飼われ、家猫になった今でも自立の精神は残っていて、あまり飼い主さんとベタベタしない猫もいます。
抱っこしようとしたら全力で逃げられた、かまいすぎて引っかかれた……そんな経験がある飼い主さんも少なくないでしょう。

だからといって、飼い主さんへの愛情や信頼関係がないわけではありません。

ベタベタしたコミュニケーションは必要ないけれど、飼い主さんの気配は感じていたい。視界に入れておきたい、同じ部屋にいてほしい。そんな猫もいます。

今回ご紹介する話に登場する猫も、自立心が強く、我が道を行くタイプ。
その泰然自若な様子が、コロナ禍で不安を抱えていた飼い主さんに安心感を与え、日々を生きる力になっています。

名前 京介
年齢 4歳
性別 オス
種類 ラガマフィン
性格 ツンツンツンツン…デレ?
特技 オスワリ、マテ、ターンができる、撮影モデルができる
好きなもの 外での散歩、釣り竿型のおもちゃ

コロナ禍で感じた愛猫のありがたみ

世界中で猛威をふるっていた新型コロナウイルス感染症。
「これからどうなるんだろう」と不安を感じていた人も多いでしょう。

我が家の暮らしも、コロナ禍でだいぶ変わりました。
私はフリーランス稼業のため、もともと在宅での仕事が多かったのですが、それでも週に何度かは外での仕事がありました。仕事の依頼も減ってきて、それも心配のひとつでした。
完全に自宅勤務になった夫も、家での仕事環境をととのえたり、オンオフの区別をつけることに四苦八苦していました。すると私のほうも、プライベート空間を侵食される感じがして、イラついてしまうことも……。

気分転換がしたくても、感染のリスクを考えると友人との食事や遠出もできません。実家への帰省も我慢していました。
何よりも、「いつ自分が感染症にかかるかわからない」「自分が誰かにうつしてしまうかもしれない」という不安や恐怖感は並大抵ではなく、それがずっと続くことが本当につらく思えました。

そんな中でも、私たち夫婦を癒し、家庭の雰囲気を明るくしてくれたのが、愛猫の京介という存在です。

京介はおもしろい猫です。来た初日から部屋を駆け回り、ごはんをモリモリと食べ、ゴーゴーと熟睡。繊細さはまったく感じられませんでした。
自立した性格で、めったに甘えてきません。抱っこも大嫌い。

その一方で、私がゲームに夢中になっていると、足元に寄ってきたりします。それでも私がかまわないと、足に軽く噛みついてきたり……。

ベタベタされるのは嫌いだけど、関心は向けてほしい。若干めんどうなタイプですね。

私たちが自宅で仕事するようになって、在宅時間が増えても、京介はひょうひょうと生活をしています。コロナ禍というかつてない経験の中、不安でいっぱいな私には、変わらない京介の姿が心強い。

コロナや将来に対して悲観的な考えが芽生えても、京介のごはんの準備やトイレ掃除、遊び相手をしたりするうちにネガティブな思いは引っ込んで、「京介と今をしっかり生きよう」と思えてきました。
京介は、私が現実と向かい合う〝かすがい〟でもあるのです。

京介との出会いは仕事先でした。
私はカメラマンのアシスタントをしていて、ペットショップの犬や猫を撮影する際に店員さんが連れてきた猫のうちの1匹が京介でした。ほかの子猫は生後2~3カ月なのに、京介はそのときすでに6カ月。撮影のために残していたのか、それとも売れ残っていたのか。それはわかりませんでした。

ただ、ふわふわの毛並み、ぽよぽよした丸い体、かわいい顔立ちに加え、撮影のときの度胸のよさに私はすっかり惚れ込んでしまいました。

だから、撮影が終わったとき、「京介をください!」と叫んでしまったんです。

店員さんに「一度じっくり考えてくださいね」と言われ、その場は引き下がりました。
でも、京介への思いは冷めず、後日引き取りにうかがいました。

実はその時期はちょうど、結婚した直後でした。でも、夫は2週間の出張で家を留守にしていました。
夫のケータイに京介の写真を送って、「この子、飼うことにしたからね!」と事後承諾に近いかたちで報告したのでした。夫はもともと私が動物を飼いたがっていたのは知っていたので、「わかった」とだけ返事が来ました。

京介という名前は、ペットショップの店員さんが呼んでいた名前をそのままもらいました。撮影中もそう呼んでいて慣れてしまいましたし、「ほかの名前をつけてもいいよ」と言われても、「京介」以外はピンときませんでした。
後日、店員さんからうかがったのですが、京介の名前はかのロックスター〝氷室京介〟からいただいたそうです。誕生日が同じなのが理由なのだとか。

たくましい性格だったので、リードを着けての外散歩にも挑戦しました。実家にいっしょに帰省できればいいな、ちょっとお出かけできるといいな、と思ったのです。

外に慣れるか心配でしたが、まったく問題ありませんでした。京介は道をずんずん歩き、まわりを眺めたり、草のにおいを嗅いだりして、すぐに外を満喫するようになりました。

散歩でも京介の自立した性格が出ていて、あんまり飼い主を頼らないんです。見慣れないものにはビクッとしてフリーズしますが、においを嗅いで自分で考えて、納得しています。
もっと頼っていいのにと思う反面、知らないものがあると、「これはなんだろう?」と考えるような京介の様子がかわいくてたまりません。

自立しているとか、マイペースだとはいっても、京介がまったく私たちを意識していないわけではないようです。

実はちょっと前に私は、4日間ほど入院しました。京介が来てからそんなに離れ離れになったことはなかったので、さびしがっているかなぁ、さすがに今日は甘えてくるかなぁと思いながら自宅に帰りました。

そうしたら、なんと全然近寄ってこない! むしろ私の存在を無視するがごとく、すごく態度が冷たかったんです。これみよがしに、夫の仕事部屋にこもったりして……。

というと、「やっぱり飼い主はどうでもいい存在なのでは」と思われそうですが、そうじゃないんです。京介の様子をよく見ていると、「どうしてこんなに長い間いなかったんだ、父ちゃんの面倒をオレに押しつけて!」と憤慨している感じが伝わってきました。
思っていた様子とはだいぶ違いましたが、「あぁ、私に対して気持ちはあったんだな」と、ちょっとうれしくなりました。

もともと私は趣味も少なく、友人も多くありません。おしゃべりなタイプでもないです。独身時代は、仕事が休みの日は一度も言葉を発しないこともありました。
夫も似たようなタイプなので、夫婦でいても部屋がすごく静かです。
でも、京介がいると私はつい京介に話しかけて口数が多くなりますし、「今の京介見た? かわいかったよ」などと夫にも話しかけます。

それに、京介はなかなかの聞き上手です。

本気で怒っているわけではないけれど、軽く誰かにグチりたいことってありますよね。それを京介が受け止めてくれるのです。ベタベタと過剰ななぐさめではなく、ただそこにいてくれる感じ。それが私にとって、とてもありがたいことです。

家にいて息が詰まってきたと思うときには、京介と人けのない河原に散歩に行き、ぼうっと座っています。そういうときの京介は、おとなしく傍らにいてくれます。まあ、自分が飽きると、帰ろうというように「ニャー」と主張するんですが。

そんなふうに京介からは、「ただそこにいてくれること」の大切さを教えてもらっています。コロナ禍で息苦しかったぶん、ますますそう思ったのでしょう。

思えば、小さいころからずっと猫がそばにいました。

小さいころは家でも飼っていたし、近所の野良猫にも勝手に名前をつけてかわいがっていました。私が小さいころの写真は、猫を抱っこしたものがたくさんあります。

仕事や恋愛に行き詰まって「すべてがうまくいかない」と悩んでいた時期には、帰宅途中によく見かける猫に、その日あった嫌なことを話したりしていました。泰然自若として話を聞いてくれる、とてもすてきな子でした。

京介でもよく思いますが、やっぱり猫って聞き上手です。ただそこにいてくれる。そんな姿にものすごく癒されてきたし、活力をもらってきました。

あれから私は結婚し、夫と京介という家族を得ました。今までそばにいてくれた猫たち以上に、京介からは癒しと活力、笑顔をもらっています。
きっと私は猫に助けられながら、この先もずっと猫とともに生きていくのでしょう。

冷蔵庫の上でうたた寝する京介を見ながら、そんな想いを強くしています。

※この記事は『猫がいてくれるから』主婦の友社編(主婦の友社)の内容をWeb掲載のため再編集しています。

※2023年4月1日に配信した記事を再編集しています。

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