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実験により、隕石衝突で宇宙に吹き飛ばされても細菌が生き残れることが示された

  • 2026.3.4
実験により、隕石衝突で宇宙に吹き飛ばされても細菌が生き残れることが示された
実験により、隕石衝突で宇宙に吹き飛ばされても細菌が生き残れることが示された / Credit:By Johns Hopkins University/zhao Et Al

アメリカのジョンズ・ホプキンス大学(JHU)で行われた研究によって、隕石衝突で岩が宇宙に吹き飛ばされるレベルの衝撃でも、ある種の細菌はかなりの確率で生き残れることが示されました。

研究ではタフなことでしられる極限環境細菌を金属の板にはさみ、岩片が宇宙に飛び出すときに近い一瞬の高い圧力をかける実験が行われています。

その結果、比較的弱い圧力ではほとんどの細菌が生き残り、さらに強い圧力でも半数以上が生きていることが確認されました。

この研究では、こうした極端な衝撃条件でも微生物が生き延びることから、「岩に守られた生命なら、惑星から惑星へ生命の伝播が起こる可能性がある」とも示唆されています。

研究内容の詳細は、2026年3月3日に『PNAS Nexus』にて発表されました。

目次

  • 隕石衝突で宇宙に吹き飛ばされても生命は生きていられるのか?
  • 実験で「隕石衝突クラスの衝撃」を細菌に与えても生き延びた
  • 隕石衝突は“生命の終わり”ではなく“旅立ち”かもしれない

隕石衝突で宇宙に吹き飛ばされても生命は生きていられるのか?

隕石衝突で宇宙に吹き飛ばされても生命は生きていられるのか?
隕石衝突で宇宙に吹き飛ばされても生命は生きていられるのか? / Credit:clip studio . 川勝康弘

夜空に流れ星を見たことがある人は多いと思います。

あの小さな光の筋の正体は、宇宙をさまよっていた砂つぶや岩のかけらが、地球の大気に飛び込んで燃えたものです。

ところが、もっと大きな岩がものすごい速さでぶつかると、流れ星どころではありません。

地表はえぐられ、山のようなクレーターができ、周りの岩は細かな破片になって空へ飛び散り、一部は地球の重力を振り切って、宇宙空間へと飛び出していきます。

こうした「巨大衝突」は、地球だけでなく、火星や月など太陽系の岩石の星では何度も起きてきました。

火星の表面にクレーターがびっしりある写真を見たことがある人もいるかもしれません。

あれは、過去に数えきれないほどの衝突があった“傷あと”です。

そして実際に、火星から飛んできたと考えられている隕石が、すでに地球で見つかっています。

つまり、「岩そのものが惑星から惑星へ飛んでくる」ことは、もう空想ではなく、現物がある事実なのです。

ここで、少し発想を変えてみたくなります。

もし、その岩のすき間に、どこかの星で進化した微生物が入り込んでいたらどうなるでしょうか。

岩が星から飛び出すとき、宇宙空間を旅しているあいだ、そして別の星に落ちるとき――そのたびに、生命はとてつもないストレスにさらされます。

強い衝撃、急激な温度変化、真空や放射線。

私たちがふつうイメージする「生き物が暮らせる環境」とはほど遠い世界です。

これまでにも、「岩に守られた生命が宇宙を渡り歩く」という考え方はパンスペルミア仮説(より厳密にはリトパンスペルミア)として提案されてきました。

しかし、その議論を支える実験データは十分とは言えませんでした。

特に、「最初の一撃」、つまり隕石が星にぶつかった瞬間にかかる高い圧力を生命がそもそも生き延びられるかは、よくわかっていなかったからです。

そこで今回研究者たちは、「岩が星から飛び出すときにかかるような一瞬の圧力だけを、実験室の中で精密に再現し、そのとき細菌がどれくらい生き残れるのかをきちんと測ろう」と考えました。

実験で「隕石衝突クラスの衝撃」を細菌に与えても生き延びた

隕石衝突クラスの衝撃に耐えた細菌がいた
隕石衝突クラスの衝撃に耐えた細菌がいた / 左は衝撃を受けていない最近、中央が1.4GPaの衝撃を受けた細菌、右が2.4GPaの衝撃を受けた細菌。矢印部分が損傷。ただ無事なものもいることがわかります。Credit:Extremophile survives the transient pressures associated with impact-induced ejection from Mars

隕石衝突クラスの衝撃に生命は耐えられるのか?

選ばれたのは放射線や乾燥にも負けない極限環境細菌・デイノコッカスで、これは「もし宇宙向きの生命がいるとしたら、こういうタイプかもしれない」というモデルとして用いられています。

(※残念ながら今回はクマムシさんはお休みです。)

研究チームはこの細菌を金属の板にはさみ、ガスで飛ばした板どうしをぶつけることで、岩片が宇宙に飛び出すときに近い一瞬の圧力(100万分の1秒)をかけました。

そして、そのあとに何個の細胞が増える力を保っているのか、どのくらい傷ついているのか、さらに細胞の中でどんな遺伝子が働き出すのかを、ていねいに調べていったのです。

その結果、1.4ギガパスカルという非常に高い圧力では、ほとんどすべての細菌が生き残っていることが分かりました(約95パーセント)。

さらに強い1.9ギガパスカルでも8割以上が生存し、2.4ギガパスカルというレベルでも、およそ6割の細胞がまだ増える力を保っていました。

さすがに2.9ギガパスカルあたりまで行くと一気に生存率が下がり、最大でも0.1パーセント(千個に一個)程度になりますが、それでも「完全にゼロ」にはなりません。

そこで研究チームは、この細菌が「どこまで耐えられるのか」を確かめるために、圧力をさらに上げようとしました。

ところが、先に壊れたのは機械のほうでした。

研究者たちの表現を借りれば「最終的に“死んだ”のは装置のほうで、プレートを支える鋼鉄の構造が細菌より先に壊れてしまった」のです。

また研究では衝撃後の極限環境細菌・デイノコッカスたちの「見た目」の変化も調べられました。

電子顕微鏡で細胞をのぞいてみると、1.4ギガパスカルの条件では、コントロールとほとんど区別がつかない、きれいな球形の細胞が並んでいます。

一方、2.4ギガパスカルの条件では、一部の細胞で表面の膜が破れ、中身がにじみ出ているような姿も見られました。

それでも、同じサンプルの中には無傷に見える細胞も多数残っており「一発くらいなら平気そう」と言える状態にありました。

コラム:クマムシはどのくらい耐えられる?
タフで有名なクマムシは、最大7.5ギガパスカルの水圧を数時間かけてもほぼ全てが生き残ることが報告されています。7.5ギガパスカルは地球内部の上部マントル中ほどの圧力に相当するレベルです。しかし今回の研究で試したような一瞬の衝撃としてかけると、クマムシの場合はおよそ1.1ギガパスカルあたりが限界だと考えられています。

さらに踏み込んで、細胞の中の遺伝子の働き方も調べられました。

強い圧力を受けたあとの細胞からRNA(遺伝子の読み出しの記録)を取り出し、その種類と量の変化を解析すると、2.4ギガパスカルの条件では、DNAの修理や、ダメージから身を守るしくみに関わる遺伝子が強く働き始めていることが分かりました。

反対に、「どんどん増えよう」とする増殖系の遺伝子の働きは弱まり、「今は増えるよりも、とにかく体制を立て直そう」と細胞が動いていると解釈できます。

一方、過去に行われた研究では、大腸菌のようなふつうの細菌や、別のモデル生物たちは、同じ1〜3ギガパスカルの圧力で、多くが100分の1から1万分の1といったレベルまで生存率が落ちてしまうことが示されており極限環境細菌・デイノコッカスのタフさが際立ちます。

コラム:「2.9GPa」は宇宙へ飛び出し得る範囲
物理学に詳しい人ならば「巨大隕石衝突でかかる圧力はもっと高いはずだ」と言うかもしれません。確かに直撃点ど真ん中では数十ギガパスカル級という、とてつもない圧力と高温にさらされ、どろどろに溶けたり、そもそも岩石が蒸発(気化)してしまいます。しかし衝突の影響はその一点だけに留まりません。少し離れた周辺部では衝撃波という“見えない衝撃の波”が岩の中を走り、その結果、表面のごく薄い層だけがペリッとはがれて、板状の岩片として飛び出すことがあるのです。これは地殻ごとめくれあがって持ち上がる「地殻の津波」のような巨大スケールではなく、表面数メートルくらいの“カサブタがはがれる”ような現象だと考えるとイメージしやすいと思います。そして、この薄い岩片は、場所によっては惑星の重力を振り切るくらいの速さを与えられ、宇宙空間へ放り出されることがあり得るのです。今回の論文が注目している1.4〜2.4ギガパスカルという圧力の強さは、出発元を火星と想定すると、岩片が宇宙に飛び出すときに想定される圧力の範囲に含まれていると言えます。

こうして見ると、今回の実験は「火星から飛び出すときの一撃」という条件について、「少なくともある種類の極限細菌なら、かなりの割合で生き延びられる」という答えを出したことになります。

しかし「惑星間を旅する細菌」という話で一段目のハードルが思ったほど高くなかった、という事実は、生命のたくましさを考え直させるものです。

隕石衝突は“生命の終わり”ではなく“旅立ち”かもしれない

隕石衝突は“生命の終わり”ではなく“旅立ち”かもしれない
隕石衝突は“生命の終わり”ではなく“旅立ち”かもしれない / Credit:Canva

今回の研究により、「隕石衝突が起きても、その衝撃から岩のすき間の微生物が生き残れる可能性が十分にある」ということが示されました。

少なくとも、出発の瞬間にかかる圧力という、最初の関門については、「特別にタフな細菌ならかなりの割合で通過できる」という結論です。

これまで空想のように語られてきた「岩に守られて宇宙を旅する生命」の物語に、具体的な数字と「イケる可能性」が与えられたのは大きな進歩と言えるでしょう。

この視点から改めて宇宙を見てみると、星同士の激しい衝突は、必ずしも「生命を終わらせるだけのイベント」ではないかもしれません。

ある星では大量絶滅を引き起こす一撃が、別の星では、新しい生命の種をまき散らす役割を果たしているかもしれないからです。

研究チームの一人は、「もしかして、私たちは火星人なのかもしれない」と冗談まじりに語っていますが、こうした言葉が完全な笑い話では済まなくなりつつあるわけです。

もっとも今回確かめられたのは、あくまで「出発の衝撃」の部分だけです。

宇宙空間の冷たさや真空、長い時間にわたる放射線、そして別の星に落ちるときの二度目の衝撃など、まだ検証すべきステップはたくさん残っています。

また、実験で使われたのは特別にタフな一種類の細菌であり、多くの生き物が同じように耐えられるわけではありません。

それでも、この結果には大きな意味があります。

細胞はやわらかくて壊れやすい存在だ、という私たちの直感に対し、この実験は「条件しだいでは、細胞は金属よりもしぶとい」と静かに反論してきます。

実験装置の金属部分のほうが先に破損してしまったのはその実例とも言えるでしょう。

この研究成果を応用できれば、「どこまでなら生命が生き延びられるか」をより正確に見積もり、将来の宇宙探査やサンプル回収計画の設計に役立てる可能性があります。

もし未来の惑星探査で地球と同じ二重らせん構造のDNAを持つ地球にいそうな生命が発見された場合、それがパンスペルミア仮説による生命の伝播か、惑星固有の生命かで、科学者たちを悩ますかもしれません。

参考文献

Microbe survives the pressures of impact-induced ejection from Mars
https://www.eurekalert.org/news-releases/1117845

元論文

Extremophile survives the transient pressures associated with impact-induced ejection from Mars
https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgag018

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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