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男性のように埋葬された「7000年前の女性」の遺骨を発見

  • 2026.3.4
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

今日、「男性の仕事」「女性の仕事」といった役割の区分は、社会や文化によって変化するものですが、古代社会でも同じような柔軟さが存在していたようです。

このほど、ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学(ELTE)の研究で、約7000年前のハンガリー東部の遺跡から、男性のように埋葬されていた女性の遺骨が発見されました。

この発見は、約7000年前の社会において、男女の役割が単純に固定されたものではなかったことを示唆しています。

研究の詳細は2026年2月16日付で学術誌『American Journal of Biological Anthropology』に掲載されました。

目次

  • 男女ごとに「埋葬の形式」が違っていた
  • 男性のように埋葬された女性を発見

男女ごとに「埋葬の形式」が違っていた

研究チームは、ハンガリー東部ポルガール地域にある2つの新石器時代の墓地を調査しました。

これらの墓地は紀元前5300年から紀元前4650年頃にかけて使われていたもので、研究では合計125体の成人の骨格が分析されています。

研究者たちの目的は、当時の社会における男女の役割を明らかにすることでした。

【こちらはハンガリー遺跡で見つかった男性の埋葬の遺骨の画像

そのために注目されたのが、骨に残された「活動の痕跡」と、埋葬の方法や副葬品です。

骨には、生前の生活の痕跡が残ることがあります。

例えば、強い身体労働を繰り返すと腰椎(ようつい)に特定の変化が現れたり、同じ腕を頻繁に使う作業を続けると上腕骨の付着部に負担の痕跡が残ったりします。

また、長時間膝をつく姿勢を繰り返す生活を送っていた場合には、足の骨の関節面にも特徴的な変化が現れることがあります。

研究者たちはこうした骨格の変化を調べることで、人々がどのような身体活動を行っていたのかを推定しました。

その結果、約7000年前のハンガリーでは、男女ともに身体的負担の大きい生活を送っていたことがわかりました。

ただし男性の骨格には、右側の腕を特に多く使っていたことを示す痕跡が比較的多く見つかりました。

これは、物を投げる動作など、片腕を強く使う活動に関係していた可能性があると研究者たちは考えています。

さらに埋葬方法にも男女差が見られました。

ある墓地では、女性は基本的に体の左側を下にして横向きに埋葬され、貝殻ビーズのベルトなどの装身具が副葬品として添えられていました。

一方、男性は右側を下にして埋葬され、磨製石器などの道具とともに葬られていました。

このような埋葬パターンは、当時の社会で男女の役割がある程度区別されていたことを示していると考えられます。

男性のように埋葬された女性を発見

しかし調査を進めると、こうした男女の埋葬パターンに当てはまらない例も見つかりました。

2体の男性と5体の女性が、典型的な埋葬方法とは異なる形で葬られていたのです。

特に研究者たちの注目を集めたのが、ある高齢の女性の埋葬でした。

この女性は、生物学的には女性であるにもかかわらず、磨製石器とともに埋葬されていました。

これは、この墓地で確認された中では男性に特徴的な副葬品でした。

さらに、この女性の足の骨には、墓地の男性と似た特徴が見られました。

足の指の骨には、膝をつく姿勢を繰り返したときに生じる変化が確認されたのです。

このことから研究者たちは、この女性が男性と似た活動を日常的に行っていた可能性があると考えています。

つまり、この社会では「女性であっても男性に関連づけられる役割を担うこと」があり得た可能性があります。

ただしチームは、この女性がシャーマンなど特別な社会的地位を持っていたという証拠は見つかっていないと説明しています。

研究者によれば、こうした埋葬の違いは特別な身分というよりも、個人ごとの生活のあり方や役割の違いを反映している可能性があります。

当時の社会では、男女の役割が存在していた一方で、その境界は必ずしも絶対的なものではなかったのかもしれません。

7000年前にすでに存在した「男女の柔軟な役割」

今回の研究は、新石器時代の社会において、男女の役割が単純な二分では説明できない可能性を示しています。

埋葬方法や副葬品には性別に基づく傾向が見られましたが、すべての人がその枠に当てはまっていたわけではありませんでした。

骨格の活動痕跡や埋葬のあり方を総合すると、当時の社会には繰り返し現れる男女の役割パターンが存在しながらも、個人によって異なる人生や役割が認められていた可能性があります。

つまり7000年前の人々の社会も、私たちが想像するほど単純なものではなかったのです。

人々はある程度の社会的ルールの中で生活していましたが、その中には例外や個人差も存在していました。

遠い過去の墓地に残された骨は、古代社会の人々がどのように働き、どのように生き、そしてどのように社会の中で役割を担っていたのかを静かに語っています。

そしてその物語は、古代の社会が必ずしも固定的な役割だけで成り立っていたわけではないことを示しているのかもしれません。

参考文献

Stone Age woman was buried like a man, revealing flexible gender roles 7,000 years ago in Hungary
https://www.livescience.com/archaeology/stone-age-woman-was-buried-like-a-man-revealing-flexible-gender-roles-7-000-years-ago-in-hungary

元論文

Fixed and Fluid: The Two Faces of Gender Roles—A Combined Study of Activity Patterns and Burial Practices in the European Neolithic
https://doi.org/10.1002/ajpa.70217

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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