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大切な人の最期をどう締めくくってあげられるか? さまざまな「お食い締め」のエピソードが感動とともに教えてくれること【書評】

  • 2026.2.28

【漫画】本編を読む

「お食い締め」とは、赤ちゃんの「お食い初め」と逆の言葉で、人生最後の食事、もしくは人生の締めくくりを意味するという。『お食い締め 口から食べられないアナタへ ~言語聴覚士が見たそれぞれの選択~』(牧野日和(愛知学院大学教授):原案・監修、かなしろにゃんこ。:漫画/竹書房)は、口から物を食べられなくなった人のケアをする言語聴覚士・牧野日和氏が目の当たりにした、人生の最期を迎える人とその家族たちのさまざまな選択をまとめた作品だ。

骨折して入院し、それから寝たきりになってしまった90歳の男性。筋力が弱くなり、それにあわせて普通に食事をすることも困難になる。これは胃に穴を開けてカテーテルで直接栄養や水分を送る「胃ろう」の措置を取る状態なのだが、本人が断固拒否したため、料理をミキサーで細かくした食事を摂っていた。だがその食事にも満足できず不満を募らせていた男性は、反動もあって妻との思い出の味である焼肉が食べたいと言ってくる。男性の食事のケアをしてきた牧野氏は、もちろん今の状態で食べることはとても危険であると諭しつつも、男性に焼肉を食べられるようになるためのある提案をするのだった。

結果、この男性は少量だが念願の焼肉を自力で食べることができ、そしてこれが彼の「お食い締め」となる。そこには長年連れ添ってきた夫を思う気持ちと、夫には言えない事情を抱えた妻の切なる願いも込められていた。その場に集まった家族と親族全員が笑顔で男性の人生の締めくくりを見届ける場面はとても感慨深い。

ほか、食べること生きることを諦め胃ろうでかろうじて生きている母とその娘の話などがオムニバスで綴られる本作。そんなそれぞれの「お食い締め」エピソードが、静かに、そして大きな感情の揺さぶりをもたらす。必ず訪れる大切な人と自分の最期。そのときに持っておきたい気持ちや心構えを、温かなヒューマンドラマを通して教えてくれる作品だ。

文=nobuo

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