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「こんなに少ないはずがありません」相続手続き中、残高を見た遺族の一言。銀行員が語る“相続での預金トラブル”の裏側

  • 2026.3.22
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。くまえり銀行員です。
今日は、私が窓口業務の中で経験した出来事の中でも、今も強く印象に残っている“預金・遺産トラブル”についてお話ししたいと思います。

銀行窓口は静かな場所に見えるかもしれません。
けれどその裏側では、人生の節目とお金が交差する瞬間が、日々生まれています。

特に多いのが、相続をきっかけに起こる預金トラブルです。

今回は、一般にはあまり知られていない「銀行窓口の内側」をお伝えします。

凍結したはずの口座で起きた誤解

ある日、強い口調で来店されたお客様がいました。

「父が亡くなったと連絡したのに、どうして残高が減っているんですか?」

銀行では、名義人の死亡を把握すると口座を凍結します。

これは相続人全員の財産を守るための措置であり、原則として入出金はできなくなります。

しかし調査を進めると、取引が行われていたのは銀行が死亡事実を把握する前でした。

実は存在する“空白の時間”

多くの方が誤解されていますが、
・役所へ死亡届を提出しても行政から銀行へ自動通知されることはありません

銀行が死亡を知るのは、ご家族からの連絡を受けた時点です。

つまりその前であれば、キャッシュカードによる引き出しが可能な状態が続くことがあります。

この時間差が、「凍結したはずなのに」という誤解を生む原因になります。

窓口の内側では、
・連絡日時
・取引時刻
・手続きの進行状況

を一つずつ確認しながら、事実を丁寧に整理していきます。
銀行は感情ではなく、法律と手続きに基づいて動く場所だからです。

「思ったより残高が少ない」という衝撃

相続手続きの中で、もう一つ非常に多い言葉があります。

「こんなに少ないはずがありません。」

通帳履歴を確認すると、そこには亡くなるまでの生活の記録が残っています。

預金残高トラブルの多くは、次のような理由です

・医療費や介護費の増加
・別口座への資金移動
・家族が把握していない自動引き落とし
・日常生活費の積み重ね

多くの場合、お金が「消えた」のではありません。

家族からは“見えていなかった支出”が積み重なっていただけなのです。
履歴を一つずつ説明していくうちに、怒りが静まり、理解へ変わっていく瞬間があります。
その変化を目の前で見るたび、窓口の仕事の重みを感じます。

なぜ遺産トラブルは起きやすいのか。
長年窓口に立っていると、共通点が見えてきます。

トラブルが起きやすい家庭の特徴

・家族間で資産の話をしていない
・利用金融機関を共有していない
・「だいたい分かっている」と思っている
・管理している人が一人だけ

相続は突然始まります。

悲しみの中で確認作業が進むため、小さな認識のズレが大きな不信感へ変わってしまうのです。

銀行員から読者へのアドバイス

実際に、事前相談をされていたご家庭ほど、相続手続きは穏やかに進む傾向があります。

今からできる備えをご紹介します。

 今からできる3つの対策

① 資産情報を見える化する
・金融機関の一覧を作る
・通帳・書類の保管場所を共有する
② すぐ資金化できる備えを持つ
亡くなった際、保険会社へ連絡することで比較的早期に保険金を受け取れる生命保険は、葬儀費用や当面の生活費の確保として有効です。
③ 銀行へ事前相談をする
銀行では以下の相談も承っています。
・保険の見直し/加入相談
・相続準備のアドバイス
・遺言信託の相談
「何か起きてから」ではなく、何も起きていない今こそが準備のタイミングです。

怒号の奥にある、本当の気持ち

窓口で向けられる強い言葉の多くは、お金そのものへの怒りではありません。
それは、
「知らなかった不安」
「大切な人を失った混乱」
から生まれています。

銀行員の仕事は、手続きを進めることだけではありません。
・状況を整理し
・分かりやすく説明し
・次へ進む安心を届けること

静かなカウンターの向こう側では、今日も誰かの人生の節目が動いています。
この記事が、将来の不安を少しでも減らし、家族が安心して向き合える準備のきっかけになれば嬉しく思います。


ライター:くまえり銀行員
金融機関の窓口業務に携わり、日々さまざまなお客様対応を経験。
忙しい日常の中で起こりがちな銀行手続きの行き違いやトラブルを、窓口の内側から見た視点で、読者に寄り添いながら伝えています。「知らなかった」が「なるほど」に変わる瞬間を大切に執筆中。


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