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『映画「教場 Requiem」』木村拓哉が語る、集大成を終えたいまの思い「現場で一緒にセッションしている人たちがすべての答え」

  • 2026.2.19

その内部が決して公開されることのない警察学校の実態をリアルに描いた長岡弘樹の同名小説を木村拓哉主演で実写化し、話題を集めた人気ドラマシリーズの最終章を2部作で描く劇場版の後編となる『映画「教場 Requiem」』(2月20日公開)。すでにNetflixで配信中の前編にあたる『映画「教場 Reunion」』と本作で木村は鬼教官の風間公親を再び体現したが、その胸に去来したものとはいったい何だったのか?集大成を撮り終えたいまの思いと、自身における“教官”のような存在からの大切な言葉を、静かに、噛み締めるように語った。

【写真を見る】木村演じる警察学校の冷酷無比な鬼教官、風間公親が新たな生徒たちと対峙する

「現場で一緒にセッションしている、一緒に作品を構築している人たちがすべての答え」

適正のない者をふるい落とす風間の“教場”に、未来の警察官を夢みる第205期生の生徒たちが今年も入学してきた。その日から、さまざまな悩みと秘密を抱える生徒たちと、どんな嘘も見抜き、冷徹に対処する風間との真剣勝負が始まる。一方、かつての教え子たちが風間の身に危険が迫っていることを察知して再結集(Reunion)。見えない敵の凶行を阻止すべく動き始める。

「教場」シリーズの集大成となる『映画「教場 Requiem」』で風間公親を演じきった木村拓哉 [c]フジテレビジョン [c]長岡弘樹/小学館
「教場」シリーズの集大成となる『映画「教場 Requiem」』で風間公親を演じきった木村拓哉 [c]フジテレビジョン [c]長岡弘樹/小学館

そんなグランド・フィナーレならではの怒涛の展開を見せる本作だが、ドラマの第1作からすでに6年。連続ドラマを含めた4つのエピソードで多くの視聴者の心を鷲づかみにしてきた人気シリーズなので、そこに情熱を注ぎ込んで来た木村に改めて「教場」という作品を作るおもしろさを問うと「“異質(なところ)”ですね」という思いがけない言葉が返ってきた。

「いまのご時世と逆行しているような内容ですし、激辛好きな人たちが好む“そんな辛いものをよく最後まで食べきれるね?”っていうものを作る感覚に近いような気がします(笑)」。

異質?激辛?木村らしいワードのチョイスだが、「でも、その辛さを作るのは現場だし、共演者の方がいて初めて辛さの分量が決まるので、最終的には彼らとのセッションが大事になってきますよね」と冷静に振り返る。確かに2020年のドラマ第1作「教場」では第198期生の生徒に扮した大島優子、川口春奈、三浦翔平らが張り詰めた空気のなかでスリリングなドラマを紡いでいたし、2021年のドラマ「教場Ⅱ」で第200期生の生徒だった濱田岳や福原遥、目黒蓮も、2023年の連続ドラマ「風間公親-教場0-」の赤楚衛二、白石麻衣、染谷将太も独自の個性でシリーズの世界を作る強烈なスパイスになっていた。

第205期の生徒役には綱啓永ら豪華若手キャストが集結 [c]フジテレビジョン [c]長岡弘樹/小学館
第205期の生徒役には綱啓永ら豪華若手キャストが集結 [c]フジテレビジョン [c]長岡弘樹/小学館

ならば、最終シリーズを担う第205期生を演じた俳優たち(綱啓永、齊藤京子、金子大地、倉悠貴、井桁弘恵ら)と、過去作で生徒を体現した俳優たちとの役や芝居との向き合い方にはどんな違いがあったのだろう?

「う~ん、第1作目からずっと風間公親を演じさせてもらっている事実があるので、自分も監督や現場のスタッフもそこに甘えたくなる瞬間が確かにあるんです。その、過去の俳優さんたちと比べて物事を判断する“甘え”という尺度に気づいたのは今回ですね。この現場で一緒にセッションしている、一緒に作品を構築している人たちがすべての答えのはずなのに、『前の奴らはもっと練習してたぞ!』ってつい言いたくなるときがあるんですよ。でもそれは、こっちの甘え。そのことに気づいたのは今回かな」。

確かに年齢を重ねた人間ほど、年下の人たちのことを「◯◯世代」と一括りにしがちだが、木村は「『〇〇世代』じゃなく、彼らはひとりひとりの表現者。その集合体でそれぞれの時代の風間の生徒たちを作り上げているんです」と強調する。そのうえで「けれど、舞台は架空の警察学校だし、フィクションで現実離れした空間を構築しなきゃいけない現場の状況は以前よりも難しくなった」と打ち明ける。

【写真を見る】木村演じる警察学校の冷酷無比な鬼教官、風間公親が新たな生徒たちと対峙する 撮影/JANG HOMIN
【写真を見る】木村演じる警察学校の冷酷無比な鬼教官、風間公親が新たな生徒たちと対峙する 撮影/JANG HOMIN

「何て言ったらいいんだろう?“試み”と“実質”が真逆というか。これまでは作品の世界と現実を直角ぐらいの感覚で行き来できていたのが、今回の2部作ではそれが180度ぐらい両極にある感じで。『本番!』って言われて、現実から劇中の風間と生徒たちとの関係性に持っていくまでの角度がそれぐらい開いたなっていう感覚がありましたね。個々の俳優との距離は変わってないと思うし、自分が担っている役割も全然普遍的なものなんです。でも、ナビゲートの仕方が変わったというか。例えば“この標識のときは止まらなければいけない”ということを生徒たちに伝えるときに、いまは『止まれ!』じゃなくて『止まってください!』って言わなきゃダメでしょ。そういう常識が現場でも存在しているんです」。

自身が最初に語った“異質”の真相をそう吐露し、木村は「『教場』シリーズが描くものとはもう、真逆ですよ!」と複雑な笑みを浮かべる。「スタッフと現場でもよく『(ここで描いていることは実社会では)全部アウトだよね!』という話をしていて。それを無理やりねじ伏せているのが今作の厳しいルールなんですよ(笑)」。

「“木村”としてではなく“風間教官”として、生徒を演じてくれた俳優さんたちとぶつかるしかない」

連続ドラマからおよそ3年を経て、シリーズ初の映画化を果たした [c]フジテレビジョン [c]長岡弘樹/小学館
連続ドラマからおよそ3年を経て、シリーズ初の映画化を果たした [c]フジテレビジョン [c]長岡弘樹/小学館

状況の変化はほかにもある。シリーズが長きにわたって親しまれてきたことで、ファンの間では冷酷無比な風間にも、それとは違うもうひとつの顔があることも知られている。それが芝居をする際の“枷”にならないのか気になるところだが、木村は「脚本があるので、そこはあまり考えてないし、セルフ・プロデュース的なことはしてないですよ」とさらりと言ってのける。

「それも含めて、観た人たちにドキドキしてもらえるトラップを毎回みんなで仕掛けているし、脚本に書いてあるセリフについて監督から『これ、どうする?言う?言わない?』って聞かれたときは自分の考えを伝えるけれど、ほとんどのことは監督にお任せしていますから」。

とは言うものの、木村がそこにいるだけで現場の空気は一変する。「教場」の場合は常に教室の真ん中にいる彼の存在が、生徒を演じた次世代を担う俳優たちに刺激をもたらしているのも事実。木村自身にも彼らを“育てたい”“自分の背中を見せて学んでもらいたい”といった意識があるような気もしたので、そう水を向けると「それも不正解です!」ときっぱり!

前編の『映画「教場 Reunion」』はNetflixで配信中 [c]フジテレビジョン [c]長岡弘樹/小学館
前編の『映画「教場 Reunion」』はNetflixで配信中 [c]フジテレビジョン [c]長岡弘樹/小学館

「共演者の方たちにいい作用をもたらしているならそれはいいことだし、うれしいけれど、『自分は中心じゃなきゃイヤだ~!』とも思ってないし、そういうのがいちばん嫌いなタイプですから」と断ったうえで「現場は養殖場じゃないですから(笑)」と強調。「養殖は生産性を高めるために行うものだと思うんですけど、僕らの現場では(バランスよく作られた)養殖のものではない、“天然”とも言える最高の芝居だと感じられるものが結局はOKテイクになると思うんですよ。それは育成というより、1対1の戦いです」と訴える言葉も自然に熱を帯びてくる。

「別に勝ち負けではないけれど、“木村”としてではなく、このシリーズの場合なら“風間教官”として、生徒を演じてくれた俳優さんたちと100かそれ以上の力でぶつかるしかない。その芝居のやり方は相手を飲み込むようなものなのか、距離を詰めてくる相手の気持ちを汲み取らず、目も合わさずに突き放すようなものなのか、内容によって変わるけれど、相手の“挑む”というモチベーションが感じられたときはすごく楽しいし、こっちも“いざ”っていう気持ちになる。もちろん、その『いまから行くよ!』っていう姿勢をこちらから示さないといけない場合もあるし、その状況を作り上げるのが監督の場合もありますよ。でも、いずれにしても、俳優が現場で求められるもの、やるべきことはそれだけだと思います」。

「自分がそれっぽい芝居をしていたときに『いや、そんなんじゃOK出さねえよ!』と言ってくれたのが中江功監督だった」

ちなみに、木村がこれまでの人生のなかで出会った風間公親のような存在は誰だったのだろう?せっかくなので、本作にちなんで最後に恐る恐る聞いてみると、これにも思いがけない人物の名前が意外なエピソードと共にあっさり返ってきた。

本作の監督である中江功が演出を手掛けたドラマ「若者のすべて」(94)に出演した木村 撮影/JANG HOMIN
本作の監督である中江功が演出を手掛けたドラマ「若者のすべて」(94)に出演した木村 撮影/JANG HOMIN

「蜷川幸雄さんもそうだし、テレビの世界では(ドラマ『華麗なる一族』や『MR.BRAIN』などを演出した)福澤克雄さんや、(ドラマ『ビューティフルライフ~ふたりでいた日々~』などを演出した)生野慈朗さん」と懐かしそうに目を細める木村。「映画の現場では三池崇史監督(『無限の住人』)や山田洋次監督(『武士の一分』、『TOKYOタクシー』)もそう。でもそんななか、自分がそれっぽい芝居をしていたときに『いや、そんなんじゃOK出さねえよ!』って言ったのが『教場』の監督を務めた中江功だった。ドラマの『若者のすべて』の撮影中のときのことで、当時30歳の彼はあの作品でチーフ(ディレクター)を始めたんじゃなかったかな?あの言葉はいまでも強烈に残っていますね」。

風間教官と生徒たちの“真剣勝負”の結末とは? [c]フジテレビジョン [c]長岡弘樹/小学館
風間教官と生徒たちの“真剣勝負”の結末とは? [c]フジテレビジョン [c]長岡弘樹/小学館

そのときのふたりが「教場」シリーズでこうしてタッグを組んだのも不思議な縁だが、木村の胸にはもうひとつ強く刻まれている言葉があるという。それは…山田洋二監督からいただいた「心を脱いでください」という言葉。しかも『武士の一分』(06)のときのことではなく、「今回(の『TOKYOタクシー』の現場でのこと)ですよ!」と念を押すから驚いた。

「それを言われたときは、撮影を進めなければいけないからちゃんと理解していないのに『はい』って言ってしまった自分がきっといたし、そのまま本番をやらせていただいて『カット!はい、いいでしょう』とは言ってもらったけれど、あれが正解かどうかはわからない。ひっくり返したら、裏に答えが載っている問題集とは違いまからね。その言葉の答えは何だろう?といまも思っているし、その答えを考えながら今後もやっていくような気がしていて。それがこれからもテーマになっていくというか、忘れてはいけない視点になるかもしれないですね」。

取材・文/イソガイマサト

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