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なぜZ世代は古着にハマるのか。一点モノが最強の自己表現になる理由&失敗しないヴィンテージ選びの極意

  • 2026.2.17
Getty Images

レッドカーペットでヴィンテージを選ぶセレブたち

次々と発表される新作、トレンドなど、加速し続けるファッションのスピードの中で、今再注目されているのが古着ファッション。

セカンドハンドショップ「Depop」のブランド&クリエイティブ部門シニアディレクター、スティーブ・ドゥール氏は「ヴィンテージや古着ファッションへの関心は、オルタナティブな選択肢からメインストリームへと移行しました。いまや代替案ではなく、最初の選択肢になりつつあります」と語る。

レッドカーペットでも、その変化は明らか。セレブたちは最新コレクションではなく、ヴィンテージを選ぶようになっている。カイリー・ジェンナーは今月初めに開催された2026年クリティクス・チョイス・アワードで、「ヴェルサーチ」1996年クチュールコレクションのグリッタードレスを着用して登場。

「ヴェルサーチ」1996年クチュールコレクションをまとったカイリー・ジェンナー。2026年クリティクス・チョイス・アワードにて。 Christopher Polk / Getty Images

撮影のために古着をセレクトするスタイリストが増加

スティーブ氏によれば、撮影のために古着をセレクトするスタイリストも増えているという。「Depop」では、特別な日のためのヴィンテージアイテムの検索も上昇傾向にあり、たとえば「Vintage dress」の検索数は前年比36%増、「Vintage bag」は41%増となっている。

Timothée Chalamet and Kylie Jenner at the 2026 Critics Choice Awards Kevin Mazur / Getty Images

ロンドンの「BROTHER LDN」や「CRABI」、アムステルダムの「Nhogirl」、ベルリンの「Neuzwei」といったキュレーション型ヴィンテージショップの台頭により、実店舗での古着ショッピングはいま、かつてないほど魅力を増している。従来の委託販売店やスリフトショップとは異なり、これらのショップはショールームのように洗練され、インスタグラム映えする空間が特徴。厳選されたデザイナーズアイテムが並び、強いSNSプレゼンスと、思わず憧れてしまうオーナーの審美眼がその魅力を支えている。

「CRABI」のガブリエラ・クルー氏は「ここ10年ほど、ヴィンテージショップは少しイメージの問題を抱えていました。大量仕入れの商品や、まだ誰かの生活の名残の匂いがほのかに残るグラフィックTシャツの山、といった印象が強かったんです。だからこそ、私はその“目利き”の作業を自分が引き受けたい。自分のワードローブに入れたくないものは、店には並べません」と話してくれた。

希少な一点を見つけ出すことが価値

かつては、古着を着ることがファッションの“タブー”と見なされていた。ドラマ「ゴシップガール」では、ジェニー・ハンフリーが同級生と同じデザイナーブランドを身につけるためにこっそり中古品を買い、しかも型落ちを着ていると嘲笑される場面があった。ガブリエラは「古着を着るのが恥ずかしいという考えは、もう時代遅れに感じます。むしろ今は“誇りの証”になっています。コーディネートをどこで買ったのかと聞かれて、『ヴィンテージだよ』とさりげなく答えられる瞬間ほど、満足感のあることはありません」と語る。

ドラマ「ゴシップガール」でジェニー・ハンフリー演じたテイラー・モンセン。 James Devaney / Getty Images

「BROTHER LDN」のナターシャ・デメトリウ氏も、この変化を実感しているという。「最新コレクションの“新作”を持つことがステータスだった時代は、もう古い。いまは過去のコレクションから希少でユニークな一点を見つけ出すことこそが価値なのです」と古着の魅力を伝えている。

ナターシャの専門はアーカイブ・ヴィンテージ。最近一般にも浸透し始めたこの言葉は、くたびれたおさがりと、ステータス性を帯びたセカンドハンドを区別するために使われている。カイリー・ジェンナーが着用した「ヴェルサーチ」のドレスもその例であり、ナターシャの店に並ぶトム・フォード時代の「イヴ・サンローラン」のブラウスも同様。いずれも歴史的価値を持つデザイナーズピースで、“わかる人にはわかる”特別なオーラをまとっている。どのヴィンテージがアーカイブ級かを見極めるには、「特別な粘り強さと審美眼が必要」だとナターシャは語る。

Elena Popova / Getty Images

いつものオンラインショッピングの流れを思い浮かべてみてほしい。フィードに流れてきたインフルエンサーに刺激を受け、数クリックで注文し、あとは自宅に届くのを待つだけ。すべてはほんの数回のタップで完結する。そのプロセスは瞬間的なドーパミンを与え、興奮状態を持続させるよう設計されているけど、本当に自分らしいワードローブを築くには、かえって難しくしてしまう。

だからこそ、自分だけの確かな審美眼を持ち、宝探しのようにアイテムを見つけ出し、大切に思えるワードローブを作り上げていること自体が“誇れること”になる。かつて取材したコレクターは、アントワープの蚤の市でカーテンの山の中から価値ある「メゾン マルジェラ」のスカートを掘り当てたという。

lechatnoir / Getty Images

アヴァンギャルドな一点物だけでなく、ナターシャは「とにかく仕立てが素晴らしいもの」にも目を向ける。ファッション・サステナビリティの分野で働く熱心なスリフター、ソフィア・ラナワン・クリストファーセン氏も、自分の買い物では同じ視点を大切にしている。彼女は匂いや縫い目、素材構成などから本物の掘り出し物を見極める術を身につけたという。「イタリアやフランス製のウールやシルク、アメリカ製のデニムなどですね」と語る。

「Vinted」のようなアプリでは、検索ワードをとことん具体的に設定する。「90年代 ウール ブレザー セットアップ スカート付き」といった具合に入力し、さらに他言語に翻訳して、異なるマーケットからもヒットするよう工夫する。そして「目当ての一着に出合うために、100件の出品をチェックすることもある」という。ソフィアのようなスリフターにとっての醍醐味は、丁寧に作られたイタリア製シルクシャツのようなさりげなく上質なアイテムを、本来の価値のほんの一部の価格で手に入れることだ。「私のバリューは、目利きがあるからこそ、これを2ポンドで手に入れられた、というところにあるんです」と彼女は話す。

若年層にとってラグジュアリーはステータスではない?

いまや、高級ブランドや高額なプライスタグが、必ずしも前述のような品質を保証するわけではない。ブランド戦略家のユージン・バーグストランド氏は最近の動画で、「ラグジュアリーファッションはもはやステータスシンボルではない」と指摘している。派手なロゴが付いた大量生産品を買う人は、割高な買い物をして環境に負荷をかける“カモ”のように見られつつあるという。

一方で、ヴィンテージのシルクシャツに袖を通せば、品質やクラフツマンシップを理解していることの証しになる。時間と知識をかけて価値の落ちにくい一着を見つけ出せる、意識の高い消費者だというメッセージにもなる。つまり、それは“投資”なのだ。

2026年クリティクス・チョイス・アワードにて2003年秋冬の「ラルフ ローレン」をセレクトしたエル・ファニング。 Jeff Kravitz / Getty Images

ヴィンテージなら、自分だけのストーリーを作ることができる

そして、もうひとつ重要なのがパーソナルな趣味嗜好の問題。ヴィンテージショップ「Onley Desirables」を開く前、ジェラルド・オンリー氏は長年ラグジュアリー業界で働いていた。なぜヴィンテージなのかと尋ねると、彼はこう答えた。「ランウェイに登場したばかりの服は、すぐにメインストリーム化してしまう。みんなが同時に同じルックを欲しがる。でもヴィンテージなら、自分だけのストーリーを作ることができる」

いまやインフルエンサーはフロントロウからライブ配信し、お気に入りのデュープ(代替アイテム)を紹介する。ランウェイへのアクセスはかつてないほど容易になった。「パロマウール」や「ハウスオブサニー」、「ダムソンマダー」といったイットガール系の新興ブランドでさえ、誕生から数年でバズを起こす時代といえる。

2026年、WWD Style Awardsにて2009春夏オートクチュールの「アルマーニ プリヴェ」を着こなしたヘイリー・ビーバー。 Gilbert Flores / Getty Images

こうした動き自体が悪いわけではない。ただ、あまりに多くの投稿や商品に触れ続けることで、私たちは消費疲れを感じるようになる。そこに強力なSNSのアルゴリズムが加われば、自分だけの確かな審美眼を育てることは、ますます難しくなっていく。

その光景は、抹茶やナチュラルワインの行列でも見かける。そこに並ぶ人たちはみな洒落ているけれど、どこか気まずいほど似通っている。ランウェイでも同様に、デザイナーたちは“バズる瞬間”のため、あるいはジェラルドの言うところの「とにかく話題性のため」に服を作る傾向が強まっている。そして手頃な代替品が、すぐに市場に出回る。

セカンドハンドはそれとは違う。InstagramやTikTok以前にデザインされたアイテムは、時間をかけ、情熱と個人的な視点をもってゆっくりと掘り出される。

ソフィアが指摘するように、古着には“さりげない門番”のような要素が備わっている。「誰かにコーディネートを褒められても、リンクをそのまま共有することはできませんから」。誰もがどこか似た装いになりつつある今、皮肉にも“誰かの昔の服”こそが、あなたを際立たせる。

Juan Maria Coy Vergara / Getty Images

プロが教える、セカンドハンドショッピングのコツ

  1. セカンドハンドショップやフリマサイトに無数に並ぶ出品の中から目当ての一着を見つけるには、自分が何を探しているのかを明確にし、それをきちんと言葉にすることが大切。単に「ヴィンテージのブレザー」を探すのではなく、特定の年代の、特定の素材で、特定の色、さらにはお揃いのスカート付き――といった具合に、できるだけ具体的に絞り込んでいく必要がある。
  2. 出品ページは細かくチェックすること。ナターシャとソフィアはいずれも、手ブレしたiPhone写真が使われている出品に惹かれるという。そうした写真は、業者ではなく、親しみやすい個人出品者である可能性が高いから。ソフィアの言葉を借りれば、「写真がブレている“おばあちゃん出品者”は詐欺をしないし、値下げにも応じてくれるし、袋に小さなチョコレートを入れてくれたりする」のだという。
  3. タグの確認も有効だ。ピュアウールやシルク、レザーといった上質な素材が使われていれば、丁寧に仕立てられたヴィンテージである可能性が高い。
  4. ほかに見極めるポイントは、ヨーロッパ、日本、アメリカ製であること。ボタンが共布で包まれていたり、厚みのある樹脂や貝、木製だったりと質が高いこと。ファスナーがYKK製であること。ブレザーやコートに裏地が付いていること。そして、ペイズリーやタータンなどの柄が縫い目できちんと合っていることも重要。
    「粗い写真だけでは判断が難しいこともあります。でも実物が届けば、クラフツマンシップは自然と見えてきます」とナターシャは語る。
  5. 認証オプションを積極的に活用すること。多くのアプリには購入者保護制度が備わっているため、届いたヴィンテージ品に違和感を覚えたら、自分の直感を信じて返品を申請することも大切。
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