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「今期のダークホース」「かなりの名作」“評価を高め続ける”TBSドラマ、終盤も相次ぐ絶賛【ドラマストリーム】

  • 2026.3.30

静かなスタートからじわじわと評価を高め、気づけばSNS上でも「やっぱり今期のダークホース」「かなりの名作の部類」といった声が相次いでいるTBS系ドラマストリーム『終のひと』。葬儀業界を舞台に、余命わずかな葬儀屋・嗣江(柿澤勇人)と、彼を取り巻く人々の“終わり”と“生”を描いてきた本作は、最終回に向けた第9話・第10話で一気に核心へと踏み込んだ。逃避行、告白、そして“死が怖い”という本音。最終回を目前にして見えてきたのは、ただの葬儀ドラマでは終わらない、人間の奥行きそのものだった。

※以下本文には放送内容が含まれます。

葬儀屋という仕事のリアル

『終のひと』がここまで重厚な作品として受け止められている理由は、やはり葬儀業界への誠実なまなざしにある。
仏具の扱い、火葬場の空気、そして“下げ”といった専門用語の自然な使われ方。細部に至るまで丁寧な取材に裏打ちされた描写が、この物語を単なる“葬儀ドラマ”ではなく、生活の延長としてのリアリティへと引き上げている。

しかし、本作の核心はそこに留まらない。

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(C)「終のひと」製作委員会

葬儀屋という仕事は、日常的に他人の死と向き合う職業だ。だからこそ、どこかで“死を受け入れている人間”として見られがちでもある。しかし『終のひと』は、その前提を静かに覆していく。
どれだけ多くの死を見てきても、それはあくまで“他人の死”だ。自分の死とは決して重ならない。頭では理解していても、身体はそれを受け入れられない。

この“わかっているのに怖い”という感覚こそが、嗣江という人物の核にある。そしてそのリアルさが、この作品を安易な感動に落とし込まない強度を生んでいる。

“終わり”が照らす生のかたち

第9話は、そんなテーマを別の角度から突きつける回だった。

余命わずかな少年・岬(望月春希)が、嗣江に“誘拐してほしい”と頼む。退院間近の彼が望んだのは、初恋の人にもう一度会うこと。ただそれだけの願いだった。その願いはわがままではなく、切実な“選択”として響く。
一度は断った嗣江も、彼の本心に触れ、やがてその願いを受け入れる。ふたりの逃避行は短く、儚い。それでも、確かに“生きている時間”の輝きを映し出していた。

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(C)「終のひと」製作委員会

続く第10話では、梵(西山潤)が慕っていたキヨ婆(小柳友貴美)の葬儀が描かれる。
ここで印象的なのは、葬儀が単なる別れではなく、“思いを受け渡す場”として機能している点だ。残された人々が、それぞれの記憶や感情を持ち寄り、故人を送り出す。その過程が丁寧に描かれることで、死は断絶ではなく、連なりとして感じられる。

第9話と第10話は、どちらも“終わり”を描いている。しかし不思議なことに、そこにあるのは喪失だけではない。むしろ、生きることの輪郭がくっきりと浮かび上がってくる。
『終のひと』は、死を通して生を描く作品なのだと、あらためて実感させられる展開だった。

人間性の核心が開かれる瞬間

そして第10話の終盤、本作は決定的な一歩を踏み出す。嗣江が、梵に自身の末期がんを打ち明けるのだ。
それまでにも、梵はどこかで嗣江の病状に気づいていた気配はあった。しかし、それが言葉として明かされた瞬間、空気は一変する。嗣江の死は“予感”から“現実”へと変わった。

ここで梵が提案するのが“生前葬”だ。

それは単なる感傷ではない。嗣江の生き方を見てきたからこそ、その最期をどう迎えるかを真剣に考えた結果の選択だった。恐怖も、悲しみも、寂しさも引き受けたうえで、それでも何かを残そうとする意志がそこにある。

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(C)「終のひと」製作委員会

嗣江は、自分が“葬儀屋だから死に慣れている”という見方を否定した。手が震え、煙草に火をつけられないほど、自分の死が怖いのだと隠さずに示してみせた。この瞬間、嗣江という人物の輪郭が、一気に深くなる。
死に相対し続けてきた男が、それでも自分の死を前にして崩れそうになる。その矛盾こそが、人間の本質なのだろう。

嗣江を演じる柿澤勇人の芝居は、この“崩れきらない不安定さ”を見事に体現している。強がりでもなく、達観でもなく、ただ怖いという感情がそのまま滲み出る。そのリアルさが、観る側の心に静かに食い込んでくる。


TBS系 ドラマストリーム『終のひと』毎週火曜 深夜0時58分放送 ※一部地域を除く

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_