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パニック障害の人に共通する「脳の変化」を発見

  • 2026.2.9
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

突然、理由もなく激しい不安に襲われ、動悸や息苦しさ、めまいが止まらなくなる。

こうした発作を繰り返す「パニック障害」は、多くの人が抱える精神疾患です。

では、その不安や恐怖は、脳の中で何が起きていることと関係しているのでしょうか。

今回、世界中の研究者が集めた約5000人分の脳画像を解析した豪メルボルン大学(The University of Melbourne)らの大規模研究によって、パニック障害の人に共通する「ごくわずかながら一貫した脳の変化」が初めて明確に示されました。

研究の詳細は2026年1月13日付で科学雑誌『Molecular Psychiatry』に掲載されています。

目次

  • 世界規模の解析で見えてきた「共通点」
  • 不安や恐怖と関係する脳の領域

世界規模の解析で見えてきた「共通点」

これまでパニック障害の脳を調べた研究は数多くありましたが、参加者が数十人から百人程度と少なく、研究ごとに結果が食い違うという問題がありました。

そこで今回、国際研究チームは、世界各地の研究データを統合し、10歳から66歳までの約5000人を対象に脳の構造を調べました。

そのうち約1100人がパニック障害の診断を受けており、残りは精神疾患のない人たちです。

研究チームはMRIを用い、脳の「皮質の厚さ」や「表面積」、そして脳の奥にある重要な部位の大きさを統一した方法で測定。

その結果、パニック障害の人では、脳の表面にあたる皮質が全体的にわずかに薄く、前頭葉や側頭葉、頭頂葉といった領域が平均して少し小さいことが分かりました。

重要なのは、この違いが非常に小さい点です。

見た目で分かるほどの差ではありませんが、世界中のデータをまとめて分析することで、同じ傾向が一貫して確認されました。

これは「パニック障害の脳には共通した特徴がある」ことを、これまでで最も信頼性の高い形で示した結果だといえます。

不安や恐怖と関係する脳の領域

今回変化が見られた前頭葉や側頭葉、頭頂葉は、感情に意味づけをしたり、身体の感覚を受け取ったり、それにどう反応するかを調整したりする働きを担っています。

たとえば、危険かどうかを判断する、不安を抑え込む、心臓のドキドキや息苦しさといった身体の変化を「どう受け止めるか」を考える、といった役割です。

さらに、脳の奥にある「視床」や「尾状核」という部分も、パニック障害の人ではわずかに小さい傾向がありました。

これらは感覚情報を整理したり、感情と行動を結びつけたりする中継地点のような場所です。

研究者たちは、こうした小さな構造の違いが、不安や恐怖を必要以上に強く感じてしまう状態と関係している可能性があると考えています。

また興味深い点として、21歳より前に発症した人では、脳内の空間である「側脳室」が大きい傾向も見つかりました。

これは、発達の早い段階でパニック障害が現れる場合、脳の成長の過程と何らかの関係がある可能性を示しています。

一方で、症状の重さや服薬の有無と、これらの脳の変化がはっきり結びつくわけではないことも分かりました。

つまり、今回の研究は「原因を断定するもの」ではなく、「共通して見られる特徴」を示したものです。

脳の変化は「ごく微妙」だからこそ意味がある

今回の研究が示した脳の変化は、とても小さく、誰か一人の脳を見て診断できるようなものではありません。

しかし、世界規模のデータを集めることで、その微妙な違いが確かに存在することが明らかになりました。

これは、パニック障害が「気のせい」や「性格の問題」ではなく、脳の働きと関係する現象であることを科学的に裏付ける結果ともいえます。

今後は、こうした脳の特徴が年齢とともにどう変化するのか、治療によって変わるのかを調べる研究が期待されています。

パニック障害の理解が進むことで、不安に苦しむ人たちにとって、より安心できる治療や支援につながる可能性があります。

参考文献

Structural differences found in brains of people with panic disorder
https://medicalxpress.com/news/2026-02-differences-brains-people-panic-disorder.html

元論文

Structural brain differences associated with panic disorder: an ENIGMA-Anxiety Working Group mega-analysis of 4924 individuals worldwide
https://doi.org/10.1038/s41380-025-03376-4

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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