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43万年前の「最古の木製道具」をギリシャで発見

  • 2026.1.28
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

私たちが「原始的な道具」と聞いて思い浮かべるのは、多くの場合、石器です。

しかし英レディング大学(University of Reading)の最新研究で、約43万年前の人類がすでに木を加工した手持ち道具を使っていたことを示しました。

ギリシャで発見されたこの手持ちの木製道具は、現時点で確認されている中で最古のものとされ、人類の技術史を書き換える発見として注目されています。

研究の詳細は2026年1月26日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されました。

目次

  • 湖畔の泥が守った「43万年前の木製道具」
  • ゾウの解体現場と、人類の技術的柔軟性

湖畔の泥が守った「43万年前の木製道具」

【発見された木製道具の画像がこちら

木製道具が見つかったのは、ギリシャ中部にあるマラトゥーサ1遺跡です。

この遺跡は中期更新世にあたる約43万年前の地層を含み、かつて湖が広がっていた湿潤な環境でした。

研究チームが注目したのは、出土した多数の木片の中から特定された2点の加工木製品です。

1つ目はハンノキ属の木で作られた全長約81センチメートルの棒状道具です。

表面には削り跡や叩き切った痕跡が残されており、偶然ではなく意図的に形づくられたことが分かります。

摩耗の状態から、この道具は湖岸の泥を掘るための多目的な掘削棒として使われていた可能性があります。

2つ目は、ヤナギまたはポプラ属の木から作られた全長5.7センチメートルほどの小型道具です。

年輪が削り取られ、先端が丸められていることから、人の手で加工されたことは明らかですが、用途ははっきりしていません。

ただし研究者らは、石器の縁を整える再加工作業に使われた可能性を指摘しています。

木材は非常に腐りやすく、通常は長期間保存されません。

今回の道具が残されたのは、湖畔の湿った堆積物に素早く埋もれたことで、分解が抑えられたためと考えられています。

ゾウの解体現場と、人類の技術的柔軟性

これらの木製道具は、切断痕が残るゾウの骨や石器、加工された骨と一緒に見つかっています。

これはマラトゥーサ1遺跡が、初期人類による動物解体や道具使用の現場だったことを示しています。

さらに、大型肉食動物の爪痕とみられる深い傷が残った木片も発見されており、人類と肉食獣が同じ獲物をめぐって競合していた可能性が示唆されました。

ゾウの骨には、人類による切断痕の後に、肉食獣がかじった痕跡が残っており、この場所が緊張感のある資源争奪の場だったことがうかがえます。

これまで知られている最古級の木製道具は、ドイツや中国、ザンビアなどで見つかっていますが、それらはいずれも今回の発見より新しい年代です。

ザンビアのカランボ滝では約47万6000年前の木材利用の証拠がありますが、こちらは道具ではなく構造材と考えられています。

今回の研究は、初期人類が石器だけに頼る存在ではなく、木という素材を選び、加工し、用途に応じて使い分けていたことを示しています。

見えなかった技術史が少しずつ姿を現す

木製道具は残りにくいため、これまでの考古学記録では「存在しなかった」かのように扱われてきました。

しかし、マラトゥーサ1遺跡の発見は、私たちが見落としてきた初期人類の技術の一端をはっきりと示しています。

石、骨、そして木を組み合わせて環境に適応していた人類の姿は、想像以上に柔軟で創造的でした。

43万年前の湖畔に残された、ささやかな木の道具は、人類の技術史がまだ完全には掘り尽くされていないことを静かに教えてくれます。

参考文献

430,000-Year-Old Stick Found in Greece Among Humanity’s Oldest Wooden Tools
https://www.sciencealert.com/430000-year-old-stick-found-in-greece-among-humanitys-oldest-wooden-tools

430,000-Year-Old Wooden Handheld Tools are Earliest Ever Found
https://www.sci.news/archaeology/earliest-handheld-wooden-tools-14512.html

元論文

Evidence for the earliest hominin use of wooden handheld tools found at Marathousa 1 (Greece)
https://doi.org/10.1073/pnas.2515479123

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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