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運動は「ネガティブな反復思考」を抑えて”心の健康”を改善する

  • 2026.2.2
運動はネガティブな反復思考を抑え、その結果としてメンタルヘルスが改善する / Credit:Canva

心配や不安など、ネガティブな思考が頭の中でぐるぐると続くことに、嫌気がさしている人も多いでしょう。

考えたくないのに考えてしまい、気分が沈み、疲れてしまう状態は、うつ病や不安障害、不眠症など、さまざまな精神的な不調に共通して見られます。

ドイツのテュービンゲン大学(University of Tübingen)を中心とする研究チームは、運動がメンタルヘルスを改善する理由を詳しく調べました。

その結果、運動のメンタルヘルス改善効果は「ネガティブな反復思考」と「ストレスの感じ方」の変化によって説明できることが示されました。

この研究は、2026年1月9日付の学術誌『Psychological Medicine』に掲載されました。

目次

  • 運動するとメンタルヘルスが改善する
  • 運動が「ネガティブな反復思考」と「ストレスへの過剰反応」を軽減し、メンタルヘルスの改善に繋がる可能性

運動するとメンタルヘルスが改善する

運動がうつ病や不安障害の症状を和らげることは、これまで数多くの研究で示されてきました。

しかし、なぜ運動をするとメンタルが改善するのかという仕組みについては、実は十分に解明されていません。

気分転換になるからなのか、睡眠が良くなるからなのか、それとも別の心理的変化が関係しているのかは、はっきりしていない部分も多いのです。

こうした疑問に答えるため、研究チームは診断名を超えて共通する心理的プロセスに注目しました。

研究で焦点を当てたのは、主観的なストレスの感じ方と、ネガティブな反復思考と、睡眠の質という3つの要因です。

これらはいずれも、複数の精神疾患に共通して関わると考えられてきた心理的特徴です。

ここでいうネガティブな反復思考(repetitive negative thinking)とは、同じ否定的な考えや心配が何度も頭に浮かび、意識的に切り替えることが難しくなる思考のクセを指します。

重要なのは、どのような内容を考えているかではなく、思考が繰り返され、頭の中を占拠してしまう点にあります。

そして研究には、ドイツ国内の外来医療機関に通う約400人の成人が参加。

参加者はいずれも運動習慣が乏しく、うつ病、広場恐怖症、パニック障害、PTSD、一次性不眠症のいずれか、または複数を診断されていました。

参加者は無作為に2つのグループに分けられ、 一方は、薬物療法や心理療法などの通常の治療のみを受けました。

もう一方は、通常の治療に加えて、6か月間の構造化された運動プログラム「ImPuls」に参加しました。

このプログラムでは、屋外でのランニングを中心とした中強度から高強度の有酸素運動を、週2〜3回、1回30分行いました。

最初の4週間は指導者のもとで集団運動を行い、その後は自立して運動を継続しました。

その結果、運動プログラムに参加したグループでは、精神症状の全体的な重さが有意に低下していました。

さらに詳しく分析すると、この改善は主に、ストレスの感じ方とネガティブな反復思考の変化と強く結びついていることが分かりました。

では、なぜ運動によってこうした変化が起こり、それが症状改善につながったのでしょうか。

運動が「ネガティブな反復思考」と「ストレスへの過剰反応」を軽減し、メンタルヘルスの改善に繋がる可能性

研究チームは、統計モデルを用いて、運動と症状改善の間にある関係を詳しく検討しました。

その結果、運動による精神症状の改善は、今回検証した3つの要因のうち、ネガティブな反復思考と主観的ストレス知覚の低下によってほぼすべて説明できることが示されました。

つまり、運動をしたから直接症状が軽くなったというよりも、運動によって思考の回り方やストレスの受け止め方が変わり、その結果として症状が和らいだと考えられるのです。

一方で、睡眠の質は改善傾向こそ見られたものの、症状改善を説明する中心的な要因にはなりませんでした。

今回の研究では、睡眠の変化よりも、認知や感情のあり方の変化がより重要だったことになります。

では、なぜ運動をすると、ネガティブな反復思考やストレスの感じ方が変わるのでしょうか。

研究者は、主に2つの可能性を挙げています。

1つ目は、運動そのものが身体にとって一種の負荷となり、その経験を繰り返すことで、ストレスへの反応が次第に穏やかになるという考え方です。

心拍数の上昇や呼吸の変化といった身体反応を日常的に経験することで、心理的なストレスに直面した際にも過剰に反応しにくくなり、同じ出来事でもそれほど深刻ではないと受け止められるようになる可能性があります。

2つ目は、運動が注意とエネルギーを強く必要とする活動である点です。

走る、呼吸を整える、身体を動かすといった行為に集中することで、頭の中で繰り返されていた否定的な考えや心配から、意識が一時的に引き離されます。

このような思考の中断が積み重なることで、ネガティブな反復思考そのものが弱まっていくと考えられます。

もっとも、この研究にも限界はあります。

心理的要因と症状は同じタイミングで測定されているため、どちらが先に変化したのかを完全に断定することはできません。

また、比較対象となったグループは別の積極的な活動を行っていたわけではないため、集団で運動することによる社会的な影響を完全には切り分けられていません。

今後は、日常生活の中で運動を行った直後に、思考や感情がどのように変化するのかを、より細かく追跡する研究が求められます。

参考文献

Researchers identify the psychological mechanisms behind the therapeutic effects of exercise
https://www.psypost.org/researchers-identify-the-psychological-mechanisms-behind-the-therapeutic-effects-of-exercise/

元論文

Changes in repetitive negative thinking and stress perception mediate treatment effects of a transdiagnostic exercise intervention
https://doi.org/10.1017/S0033291725103085

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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