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「バックドアが開けられない…」狭い駐車場で悲劇。ノア・ヴォクシー、セレナ、ステップワゴンの“決定的な違い

  • 2026.2.13

 

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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

本記事ではスペック競争ではなく、バックドアの開け方や3列目の畳み方といった「生活のクセ」という視点から、あなたの家庭にとって後悔しない選び方を紐解いていきます。

【ミニバン比較】カタログには載らない「生活のクセ」。4強の“本当の相性”を見つける、わが家の正解

家族が増え、手狭になった今のクルマから乗り換えを検討するとき、有力な候補のひとつとして挙がるのが、ミドルサイズのミニバンではないでしょうか。ノア、ヴォクシー、セレナ、ステップワゴン。街ですれ違わない日はないほど普及しているこれらのクルマは、いずれも日本の道路事情を知り尽くしたメーカーが威信をかけて送り出した自信作ばかりです。

しかし、いざ購入しようとカタログを並べてみると、あることに気づきます。ボディサイズは数センチしか違わず、燃費も拮抗しており、価格帯もほぼ同じ。どれを選んでも「正解」に見えるからこそ、決定的な決め手に欠けてしまい、比較すればするほど「決めきれない」迷路にハマりませんか?

ですが、カタログ上の数字が似ているからといって、実際の使い勝手まで同じわけではありません。むしろ、毎日乗るからこそ気になってくる「地味な違い」にこそ、各メーカーの設計思想が色濃く反映されています。

スペックや見た目の好みだけで選んでしまい、納車後に「うちの駐車場では使いにくかった」「荷物が思ったより載らない」と後悔しないために。今回は優劣を決めるのではなく、あなたの生活スタイルにはどのクルマが馴染むのか、その「相性」を検証していきましょう。

その差は「駐車場」で如実に出る。三者三様のバックドア問題

まず注目したいのが、買い物や送迎といった日常シーンで頻繁に触れることになるバックドアです。ミニバンのバックドアは巨大で重く、開けるためには車両後方に大きなスペースを必要とします。しかし、日本の狭い駐車場や自宅のカーポートでは、後ろに十分な空間が取れないことも珍しくありません。この「開けられない問題」に対し、各社は全く異なるアプローチで解決を図っています。

たとえばホンダのステップワゴンは、スイッチひとつで制御できる「賢い機能」で快適さを提供します。電動で開閉する「パワーバックドア(パワーテールゲート)」に、開く角度を記憶させるメモリー機能が備わっており、自宅の駐車場の壁ギリギリで止まるよう設定しておけば、スイッチひとつで安全に開閉が可能です。いつも同じ場所に停めることが多い家庭には、非常にスマートな解決策といえるでしょう。

一方で日産のセレナは、構造そのものを変えることで対応しました。バックドア全体の約半分、ガラスエリアだけを独立して開閉できる「デュアルバックドア」を採用しています。これにより、後ろのスペースが通常の半分程度でも荷物の出し入れが可能となります。狭いコインパーキングなどで、わざわざクルマを前に出し直す必要がない点は、都市部で使うユーザーにとって大きな強みとなります。

そしてトヨタのノア・ヴォクシーは、アナログとデジタルを巧みに使い分けています。標準装備の「フリーストップバックドア」は、手動で開けつつ、途中の好きな位置で保持できる機構です。電源を使わないため動作が早く、直感的に扱えるのが特徴です。

さらに注目すべきは、上位グレード(S-Zなど)で選択できるメーカーオプションの「パワーバックドア」です。多くのクルマはバックドアにあるスイッチで操作しますが、ノア・ヴォクシーは車両の側面(リアクォーター付近)に開閉スイッチが配置されています。これにより、わざわざ車両の後ろに回り込む必要がありません。子どもと手を繋いでいたり、両手が荷物で塞がっていたりしても、安全な横の位置からボタンひとつで好みの位置にピタリと止められるのです。この「サイドから操作できる」という点は、毎日の子どもの乗せ降ろしや買い物において、想像以上の恩恵をもたらしてくれるはずです。

「3列目」は畳むか座るかで、評価が真っ二つに分かれる

バックドアの次に、人によって重視するかどうかが変わるのが「3列目シート」の扱いです。ここを「荷物を積むためのスペース」と捉えるか、それとも「家族が快適に過ごすための座席」と捉えるか。この優先順位によって、選ぶべきクルマは自然と絞られてきます。

もしあなたが、キャンプ道具や自転車、あるいは家具などの大きな荷物を頻繁に積みたい「収納重視派」であれば、ホンダのステップワゴンが有力な候補になります。3列目シートを床下に格納できる仕組みを採用しており、畳んだ際にはシートそのものが消えたかのような、完全なフラット空間が出現します。四角く広い空間を最大限に使えるため、箱物を積む際の効率は圧倒的です。

トヨタのノア・ヴォクシーは、左右の窓枠に跳ね上げる方式を採用しています。シート自体を薄く設計し、格納時の張り出しを抑える工夫がなされています。これにより荷室の幅をしっかりと確保しており、積載性と使い勝手のバランスが高いレベルでまとまっています。

一方で、慎重な検討が必要なのが日産のセレナです。セレナも跳ね上げ式を採用していますが、他車とは異なる点があります。筆者の主観を率直に申し上げますと、セレナの3列目シートにはかなりの「厚み」があります。そのため、跳ね上げた際にシートが荷室側へ大きく張り出してしまい、横幅のある荷物を積む際には、少し窮屈さを感じる場面があるかもしれません。もし、荷室の広さを最優先にするのであれば、この点は実車でしっかり確認しておく必要があるでしょう。

しかし、この「厚み」は欠点ばかりではありません。むしろ「3列目にも頻繁に人が乗る」という家庭にとっては、これ以上ないメリットとなります。多くのミニバンの3列目が薄く簡易的な作りになりがちな中で、セレナのシートはクッション性が高く、座面もしっかりとしています。大人が座っても不満の少ない、実用的な座り心地を提供しています。収納性を犠牲にしてでも居住性を確保したセレナは、多人数での長距離移動が多い家族にとって、頼もしいパートナーとなるはずです。

逆に言えば、ノア・ヴォクシーやステップワゴンは、収納性や床下格納を実現するためにシートを薄く設計しているため、筆者の主観としては座り心地という面ではセレナに一歩譲る印象があります。3列目はあくまで緊急用と割り切るのか、それとも常用の座席として重視するのか。ここが大きな分かれ道となります。

運転席から見える景色と“疲れ方”の違い

最後に、ハンドルを握るドライバーの視点から比較してみましょう。家族を乗せて走る以上、運転のしやすさや疲れにくさは、安全に直結する重要な要素です。

日産のセレナは、高速道路での移動が多い家庭に向けた機能が充実しています。最先端の運転支援システム「プロパイロット2.0」搭載のグレードであれば、条件を満たした高速道路上でハンズオフ(手放し)運転が可能となります。これは長距離ドライブにおける疲労を劇的に軽減してくれるため、帰省や旅行で数百キロを走る機会が多い方には、代えがたい魅力となるでしょう。

トヨタのノア・ヴォクシーは、TNGAプラットフォームにより背の高いミニバン特有のふらつきが抑えられ、運転に不慣れな方でも安心して扱える挙動を示します。加えて、先述したサイドスイッチ付きパワーバックドアのような、日常の些細なストレスを消し去る機能が充実しており、毎日の送迎や買い物といった「生活の足」として使う際の心理的な負担を極限まで減らしてくれる設計思想を感じます。

ホンダのステップワゴンは、乗った瞬間に感じる視界の良さが特徴です。水平基調のデザインにより車両感覚が掴みやすく、同乗者が車酔いしにくいような工夫も凝らされています。まるでリビングがそのまま移動しているかのような、穏やかで居心地の良い空間は、移動そのものを家族の時間として楽しみたい方に最適です。

最適な1台は「実車」の中に隠れている

ここまで見てきたように、似たようなスペックを持つ4台ですが、実はそれぞれ得意とするフィールドが異なります。

「どれが一番優れているか」という問いに、万人に共通する答えはありません。大切なのは、あなたの家庭におけるクルマの使い方と、各車の特徴がフィットするかどうかです。例えば、平日の買い物での使い勝手を最優先するのか、週末の長距離ドライブでの快適性を重視するのかによって、選ぶべきパートナーは変わってきます。

だからこそ、購入を検討する際は、ぜひ販売店に足を運び、実車に触れてみることを強くおすすめします。

カタログを眺めるだけでは気づかないことがたくさんあります。実際にバックドアを開けてみて、自分の身長で届く位置にスイッチがあるか確認してみてください。3列目シートを自分の手で格納してみて、その重さや操作のしやすさを体感してみてください。そして、運転席に座って視界の広さを確かめてみてください。

「このスイッチの位置、便利そうだな」「このシートアレンジなら、あの荷物も積めそうだ」といった、実車でこそ見えてくる良さがきっとあるはずです。スペック表の数字ではなく、あなたの生活感覚にピタリと合う1台を見つけること。それこそが、長く愛着を持って乗り続けられるクルマ選びの秘訣なのです。



ライター:根岸 昌輝
自動車メーカーおよび自動車サブスク系ITベンチャーで、エンジニアリング、マーケティング、商品導入に携わった経験を持つ。
現在は自動車関連のライターとして活動し、新車、技術解説、モデル比較、業界動向分析など、業界経験に基づいた視点での解説を行っている。


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