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200億円突破の大ヒット裏で吉沢亮が語った“覚悟”「大変な役だ」「また見ようかしら」すり足だけで費やした“長い月日”『国宝』

  • 2026.2.23

興行収入200億円を突破し、今や社会現象となっている映画『国宝』。その主演を務めた吉沢亮が、NHK『あさイチ』のプレミアムトークに登場し、その舞台裏を語った。これが成功しなければ、もう終わりだと思った……そう決意するほどの覚悟で挑んだという渾身の一作。SNS上でも「大変な役だ…」「また見ようかしら」と話題の本作について語られたその言葉は、現在出演中の朝ドラ『ばけばけ』での演技にも、確かに通じている。

※以下本文には放送内容が含まれます。

人生を賭けた挑戦

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吉沢亮 (C)SANKEI

映画『国宝』は、極道の息子に生まれながら歌舞伎役者の家に引き取られた喜久雄の人生を追う、壮大な物語。吉田修一の同名小説を原作に、李相日監督が手がけた本作は、興行収入200億円を突破し今や社会現象に。まさに国宝級の反響を呼び続けている。

そんな華やかな裏側には、喜久雄を演じた吉沢亮の覚悟と努力があった。

NHKの情報番組『あさイチ』のプレミアムトークに出演した吉沢。同番組内で映画『国宝』について聞かれた彼は、これが成功しなければ終わりだ、と自身の俳優人生を賭けた覚悟について口にした。

オファーは即決。しかし、歌舞伎という世界の奥深さは想像以上だった。1年半に及ぶ稽古と準備。舞踊家・谷口裕和から基礎の基礎を叩き込まれ、すり足だけで3〜4ヶ月を費やした。中村鴈治郎からは、技術以上に“佇まい”や精神面を学んだという。

歌舞伎特有の白塗りメイクを担った顔師の存在にも言及し、専門技術の結晶が評価されたことを「うれしい」と語った。その言葉からは、本作の大ヒットが自分ひとりの功績ではないという誠実な視点が滲む。

美しく演じられるのはわかったから、もっと喜久雄でやって、という監督からの衝撃的な言葉についても明かした吉沢。形式美を追求してきた長い月日を、一度手放す決断をしたうえで、舞台上で感情を露わにするという、通常の歌舞伎ではありえない表現へと踏み込む。それが正解かどうかも分からないまま、まさに自分の人生を賭けるように演じ切った。

その執念は、代役を立てたくなかったという彼の言葉にも象徴されていた。ほかの誰かではなく、自分がやる。その責任を負う覚悟が、スクリーンを貫いた。

“美しさ”との葛藤を越えて

吉沢は20代前半、自身の美しい容姿ばかりが評価の対象になることに、苦しさを覚えていたという。俳優である以上は芝居で評価されたい、食べていきたいと思う傍ら、役柄によってあえて太ってみせるなど、イメージと逆のことを試みた時期もあったという。

しかし現在は、“この顔で食べられているのも事実”と受け止めている。

その変化は『国宝』にも通じる。白塗りの顔は、個人の美しさを平坦にする。しかし、顔師の技術によって作られる“美”は、単なる装飾ではなく役の魂を支えるもの。外見を武器にするのではなく、外見も含めて作品に奉仕する。その境地に辿り着いた俳優の姿があった。

喜久雄と錦織の共通点?

現在出演中の朝ドラ『ばけばけ』で吉沢が演じる錦織友一は、大盤石と称される松江随一の秀才。英語教師として外国人教師ヘブン(トミー・バストウ)を支え、ヒロイン・トキ(髙石あかり)を含めた彼らの人生を導く存在だ。

吉沢の演技は、絶妙に抑制されている。視線ひとつ、わずかな間で感情を滲ませる芝居。ヘブンやトキに振り回されるコミカルさと、内面に潜む切なさのバランス。その静かな表現力は、『国宝』での極限の挑戦を経たからこそ、より深みを帯びているように感じられる。

喜久雄も錦織も、表面上は“美しい”。しかしその内側には、劣等感や葛藤が渦巻く。形式と本音のあいだで揺れる人物像を、吉沢は繊細にすくい取る。

『国宝』は彼にとって、これが成功しなければ終わりだ、と感じるほどの作品だった。次なる挑戦は、ミュージカル『ディア・エヴァン・ハンセン』。歌い、舞い、感情をさらけ出す新境地が待っている。


ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_