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「美しすぎる」「最高のキャスティング」6年ぶり出演俳優、NHK作品で挑んだ“ほぼ真逆”の役柄…“曲者っぷり”に注目

  • 2026.5.26
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『風、薫る』第7週(C)NHK

朝ドラ『風、薫る』第7週にて、帝都医大病院外科教授・今井益男として登場した俳優・古川雄大。SNS上では「美しすぎる」「最高のキャスティング」といった声が並んだ。白衣に負けない気品、舞台仕込みの所作、そして“冷徹に見える合理”の裏にある責任感。りん(見上愛)や直美(上坂樹里)ら看護婦見習いたちが実地研修で突き当たるのは、患者だけではなく制度と権威の壁だった。その壁を、ただの悪役ではなく“人間”として成立させたところに、古川雄大という俳優の強さが感じられる。

※以下本文には放送内容が含まれます。

権威の可視化

古川雄大が演じる外科医・今井は、登場した瞬間に“病院の権力”を強調するかのようだった。ドラマでこの権威性を描くのは、実は難しい。台詞で長々と肩書きを説明するだけでは、視聴者は納得しないし飽きるからである。

しかし古川の場合、説明は最小限で済む。長身のバランス、指先まで意識が通った動き、そして視線の運び方。舞台で鍛えられた身体の精度が、そのままトップエリートの説得力になっている。

彼がもともと有している美しさこそが、今井という人物の位置を一瞬で伝えるための装置になっているかのよう。明治期の医局社会、帝都医大という組織、その頂点にいる者の余裕と圧。視聴者はその圧を、まず視覚で受け取る。美しさが、役柄の機能に直結している。

しかも古川の美しさは、いわゆる正統派の“綺麗さ”だけではない。どこか癖のある匂いが混じる。端正な輪郭ほど、わずかな異物感が際立つもの。笑っていない目、整った所作のなかにある距離感。思わず見惚れてしまうのに、少し怖い。その混ざり方が、今井という役に厚みを与えている。

医療を背負う者としての厚み

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『風、薫る』第7週(C)NHK

今井がこの物語で担うのは、看護婦見習いたちの前に立ちはだかる“壁”としての機能。ここで重要なのは、その壁が単なる意地悪な上司や悪役として描かれていないことである。

看護という新しい概念が芽を出そうとする時代に、医局の秩序と効率を背負う立場として彼がいる、という配置が効いている。

りんたちが患者の異変を進言しても、そう簡単には取り合われない。けれど、冷たさの裏にあるのは“病院を成立させる責任”だ。医師たちは忙しい。全員を丁寧に診たくても時間がない。そのため自ずと判断は速く、説明は短くなる。ここに、医療の現実がある。今井はその現実の象徴でもある。

古川の芝居が巧いのは、そんな冷徹さを誇張しすぎず、判断の速さと迷いの隠し方で今井を形作っている点。表情を大きく動かさずとも、視線の角度や間の取り方だけで、拒絶と評価を出し分ける。看護婦見習いたちが“下女”扱いされる空気のなか、彼自身もまた“医局の代表”として振る舞っている。

つまり今井は、看護そのものを否定するために存在しているのではない。彼はあくまで、自分の信じる医療の秩序を守るためにいる。

守るものがある人間は、どうしても強く、そして冷たく見える。古川はその構造を、声を荒げずに成立させている。いったい彼は何を恐れ、何を守ろうとしているのだろう。視聴者にそう想像させる時点で、もう“ただの対立役”ではない。

“朝ドラ”で更新される曲者っぷり?

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『風、薫る』第7週(C)NHK

古川が朝ドラに出演するのは6年前に放送された『エール』以来。彼の役柄は、ヒロインの歌の先生・御手洗清太郎。ミュージックティーチャーを自称する彼のキャラクターは強烈で、一度見たら忘れられないほどのインパクトだった。今回演じている今井は、あの時の強烈なキャラクターとはほとんど真逆に見える。

だからこそ、俳優としての振り幅が鮮烈に伝わってくる。舞台のトップスターとして培ってきた“魅せる技術”を、映像ではむしろ引き算として使っているようだ。大げさに見せないのに、存在感が消えない。

冷徹に見える合理主義の裏に、情熱とプライドが必ず潜んでいる今井。ドイツ留学帰りのトップエリートという冗談のような肩書きは、優秀さの証明であると同時に、孤独の証明にもなり得る。周囲が期待する“正しさ”から逸れられない立場。だからこそ、看護婦見習いたちの理想や善意が、ときに危うく見えるのだろう。

今後、りんたちが“看護”を形にしていくうえで、今井という壁は避けられない。けれど壁は、越えるために存在する。古川雄大が今井益男を単なる敵ではなく、“医療を背負う者”として立体的に見せたからこそ、対立はただの衝突では終わらないはずだ。

視聴者が見たいのは、誰かが折れる場面ではなく、価値観が更新される場面なのだから。


連続テレビ小説『風、薫る』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_

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