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NHK夜ドラ“シーズン2”も放送、4年前「夜ドラの評判を上げた」大人気漫画の“実写化”NHKドラマシリーズ

  • 2026.5.26

SNS上でも未だに「夜ドラの評判を上げた」「たまにグサッとくる」と声が挙がる、2022年にシーズン1、2024年にはシーズン2も放送されたNHK夜ドラ『作りたい女と食べたい女』(通称:つくたべ)。同名の人気漫画の実写ドラマだ。

料理を作るのが好きな野本さん(比嘉愛未)と、食べるのが好きな春日さん(西野恵未)が、ただ一緒にご飯を食べる物語。ただそれだけの話に見えるのに、胸の奥がじんわり温まる回もあれば、ふいにグサッと刺さる回もある。時に、現実を直視させる優しさ。料理を通して描かれるのは、“生きやすさ”の再設計だった。

※以下本文には放送内容が含まれます。

孤独の形を変える料理

料理が好きで、もっとたくさん作りたい。でも一人暮らしで少食だから、いつも我慢してしまう野本さん。料理を作ることが好きなのに、“作れない”ことがストレスになる。この矛盾は、料理好きな人なら一度は経験があるのではないだろうか。作る楽しみは、食べる量では測れないのに、現実は冷蔵庫の容量と賞味期限で容赦なく線を引いてくる。

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比嘉愛未(C)SANKEI

そこに現れるのが、同じマンションに住む春日さんである。豪快な食べっぷりで、気持ちよく、そして綺麗に完食してくれる彼女。野本さんにとっては、夢みたいな相手だ。一人では食べきれない作りすぎた料理を口実に、思い切って誘ってみる……たったそれだけの行為が、二人の生活を大きく変えていく。

食卓の気持ちよさも徹底している。『つくたべ』に出てくる料理は、見た目が美しいだけじゃない。たくさん作ってこそ本領が発揮される料理が並ぶ。唐揚げ、餃子、コロッケ、巨大オムライス……なんでも、遠慮なく盛っていい。春日さんがそれを嬉しそうに食べる姿は、飯テロを超えて、ちょっとした解放の絵になる。

材料費を折半しようとしたり、きちんと感謝を言葉にしたり、相手の領域を侵さない距離感を守ろうとする春日さんも律儀だ。食べる側と作る側が対等で、そこに上下関係や搾取はない。だから見ていて安心できるし、観終わったあとにそっと回復する感覚がある。

夜ドラという枠にフィットしたのも、この構造の強さゆえだと思う。短い時間で、料理の幸福と、人の距離の変化を同時に描ける。湯気の立つ時間の中に、人と暮らすとはどういうことかが、そっと折りたたまれている。

“普通”の押し付けを跳ね返す

優しい顔をして“社会の圧”を含ませている点も、本作の魅力。野本さんは料理好きだが、職場でその“好き”が都合良く消費されることにモヤモヤしてしまう。たとえ褒め言葉の形をしていても、“女性の料理=男のため”という勝手な前提が潜んでいるからだ。
野本さんが守りたいのは、ただ作りたいから作るという自分の衝動だ。誰かの評価ではなく、自分の満足と喜びのために台所に立つ。その当たり前を、ドラマは静かに肯定する。

春日さん側にも、社会の圧はやって来る。定食屋で普通盛りを頼んだのに、女性だからという理由でご飯が少なく盛られる描写が象徴的だ。本人の注文よりも、いつの間にか根付いた固定観念が優先される。女性は少食であるべき、大盛りは恥ずかしいものといった空気が、さりげなく日常を侵食している。

こういったシーンが“グサッ”とくるのは、あえて説明台詞で説教していないからだと思う。代わりに、本人の困り顔や一瞬の沈黙でおかしさを醸し出しているのだ。視聴者が、自分の生活に潜む似た痛みを思い出してしまう余白がある。

恋と友情のグラデーション、多様性の誠実さ

『つくたべ』のもう一つの強みは、人と人の関係を、恋か友情かの二択にしないところ

野本さんと春日さんの距離は、最初は“料理を介した交流”から始まる。けれど回を重ねるほど、野本さんの感情は少しずつ別の色を帯びていく。ここが丁寧だ。
恋愛ドラマのように、事件や弾みで関係が急加速するのではなく、食卓の積み重ねで徐々に気づいていく感情。好きという気持ちは、告白より前に生活のなかで育まれる。その描き方が誠実である。

さらに本作が描く“居場所”は、二人の部屋だけに留まらない。ほかにも傷つきを抱えた女性たちが集まり、互いの領域を侵さずに寄り添い合う光景は、現代社会の避難所=セーフスペースのように機能している。
同性同士の部屋探しの難しさや、周囲の理解の遅さ、ラベルの扱いに対する揺れ。そうした現実の壁を、ドラマはファンタジー化せずに抱えたまま進む。それでも、食卓の時間が確かに人を支える。これは、現代のクィアドラマ/シスターフッドドラマとして、とても重要な誠実さだと思う。

あなたはそのままでいいし、理不尽に怒っていいと肯定してくれるドラマ。湯気の温度はやわらかく、包丁の音は優しく響く。それでも、現実への眼差しは甘くない。そのバランスが、何度でもこの作品を観たくなる理由だ。


出典:夜ドラ『作りたい女と食べたい女』NHKアーカイブスより

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_

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