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地球温暖化対策を決める会議はアクシデントだらけ?ニュースの裏側から見る、COP30の意外な10の事実

  • 2026.1.23
Getty Images, Media is Hope

毎年開催されるCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)。気候変動対策について、具体的な目標や達成期限などを決める国際的な会合だが、2025年11月に開かれたCOP30では、4万人を超える参加者が一時避難する事件が2度も発生したり、トイレの水がなくなる事態が起きたりと、アクシデントが多発!?

ここでは、ニュースを見ただけではわからないCOP30の意外な事実を、現場で起きたハプニングや珍事件とともにご紹介。現地のリアルな情報を聞いたのは、気候変動を解決できる社会の実現を目指し、メディアと社会をつなぐ活動を行う「Media is Hope」の名取由佳(なとり・ゆか)さん。会場までのとてつもない長い道のりや、なかなか知りえない会場の食事事情なども合わせてお届け!

1. 日本から会場まで、往復66時間以上!?

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COP30の開催国はブラジル。会場として選ばれた都市は、首都ブラジリアでも、大都市サンパウロでもなく、ベレン。「なぜ、ベレン?」と思った人もいるのでは。

ベレンは、アマゾンの入り口に位置するブラジル北部の都市。巨大な熱帯雨林が光合成によって大量の二酸化炭素を吸収し、酸素を放出していることから「地球の肺」と呼ばれるアマゾン。世界の酸素の約20%を生産しているとも言われ、地球の気候の安定に貢献している側面もある一方、森林破壊の最前線にもなっている現状がある。

そんな世界の気候変動対策に関わる重要なスポット、アマゾンに、そしてそこに暮らす先住民族に光を当てたいというブラジルの強い想いによって、今回ベレンに決定。会場までのフライトチケットを検索すると、最も短い移動時間でも日本からは往復で約66時間かかるというから、とてつもなく長い移動距離!

名取さんは片道35時間かかってようやく到着!

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「アクセスのいいフライトはすでに満席状態で、私が予約できたのは、2回の乗り継ぎとバス移動を挟んだルート。東京・成田空港→カタール・ドーハ空港→ブラジル・サンパウロ・グアルーリョス空港→バス移動でサンパウロ・ヴィラコッポス空港→ベレン空港と、片道だけで35時間以上もかかってしまいました」

「ベレンのホテルの数がもともと少なかったことに加え、COP30でニーズも高まり、ホテルはほぼ満室。平時の5倍の値段でしたが、なんとか宿泊先を確保できてよかったです。宿泊先を確保できなかった人たちは、港につけた客船で寝泊りをしていたと聞きました」

「開催国の強い想いもあってベレンに決まりましたが、アマゾンや周辺に住む人たちの貧困状況を目の当たりにしたり、先住民族の生活を脅かすような森林伐採などの課題の現状を知るいい機会になりました」

2. COP30は「先住民族のCOP」?

picture alliance / Getty Images

毎年、COPに参加している先住民族。年々、参加人数が増加傾向にある先住民族の公式な発言の場である「国際先住民族フォーラム(IIPFCC)」が設立されたのは、2008年のこと。COP30は開催前から「先住民族のCOP」と呼ばれていた通り、世界中から集まった人数は、COP史上最大規模の約5,000人となった。とはいえ、先住民族と気候変動対策はどれくらい深い関係があるのだろうか?

ある調査によると、ブラジル国内の先住民族の権利と領土が法的に守られた場所で失われた植生は40年間でわずか1.2%なのに対して、それ以外のイリーガルな地域全体では同期間に14.8%が失われている。先住民族の暮らしが守られている場所では自然もちゃんと守られている一方、先住民族が住んでいてもおかまいなしに、森林伐採や鉱山開発、農地拡大のために切り開かれている場所も。つまり、生活が脅かされている先住民族がいることも意味する。

先住民族が守ってきた「地球の肺」を、これ以上破壊してしまうことは、地球温暖化を加速化させることにもつながりかねない。だからこそ、今回のCOP30では「先住民族の土地を守ること」が重要な議題の一つになった。

歌やダンスを通して、先住民族の文化に触れた名取さん

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「会場のすぐ外では、『森林保護を!』という訴えを掲げて、先住民族がリードするデモもありました。違法に森林伐採している企業や組織、そしてそれを黙認している現状への怒りを感じました」

「現地では、先住民族の方と交流する機会もありました。会場周辺では、デモだけでなく、歌やダンスで文化を伝えたり、現地のクラフトを売っていたりする先住民の方もいました。いろいろな立場の方がいて、COPとの関わり方も多様です。『アマゾンやブラジルに来てほしい。課題の現状や、自然の素晴らしさを体感してほしい』という声をたくさんもらいました」

3. 土砂降りの雨が、会場の一部に浸水!

XaviFerrando / Getty Images

COP30会期中、肝心の議論とは別に話題にあがったのが、会場施設の準備不足。COP30が開催されても、施設の一部は建設途中だったという。

熱帯雨林気候であるため、乾季であっても週に数回、あるいは1日1回程度のスコールが発生するのが珍しくない、ベレン。会期中は、毎日のようにスコールが発生したようだが、土砂降りのあとは、会場に雨漏りが発生したり、浸水したり……。そのようななかでも、平然と会議は進められていたよう。

建設中の施設が会場になるのは、3年連続参加の名取さんも初めての経験

Media is Hope

「COP30がはじまっても、建設が終わっていない現場を見たときは、かなり心もとない状態だと思いました。一方で、会場施設間の移動に使える充電式のライドシェアサービスが用意されていて、広大な敷地内の移動はとても便利でした」

4. トイレの水が足りなくなる!?

Alison Rose / Getty Images

ほぼ毎日、スコールが会場を直撃するのにも関わらず、水不足でトイレが使えなくなるという事態も発生!

名取さんもトイレ探しに走り回った!

「トイレ自体はたくさん設置されていましたが、その半分がなんらかの問題で使えない状態。特に女性用トイレは列に並ぶことが多かったので、空いている場所や使用可能なトイレを探すのにひと苦労。このあたりでも、インフラの脆弱性を体感しました」

5. 冷房が効かない?汗をかきながらの交渉

Sean De Burca / Getty Images

そんなインフラの問題は、空調にも。ベレンの11月の平均最高気温は32°C、最低気温は 24°Cと安定して暑い気候。真夏でも35℃を超えることがあまりないベレンでも、会場の空調が効いていないエリアでは、うちわが欠かせないほど暑かった模様。

各国の代表団は、その厳しい暑さのなかで汗をかきながら交渉。その暑さは、国連がブラジル政府に対して抗議するほどだったよう。

6. 約4万人が避難する事件が2度も発生

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小さなハプニングが起こるのは想定の範囲内かもしれないが、参加者約4万人の避難が求められる事態が会期中に2度も起こるとは、誰が予想できただろう。

1回目の避難は、会場へのパスを持たない先住民のグループが、アマゾンでの石油開発反対などを訴えるために、会場の警備を突破してきたとき。手に握られていたのは、「私たちの森は売り物ではない」と書いた掲示物。こうした気候マーチは、COP27から禁止されていたが、COP26以来の4年ぶりに許可がおり、ベレン市内でも数万人規模のマーチが行われていた。事件後はブラジル政府による会場警備体制が強化されたが、先住民族やNGO、市民の世界へ訴える姿勢はブレず、その後も会場内外でマーチやスピーチなどが平和的に行われた。その効果もあってか、COP30では、森林減少と森林劣化を止めるための基金が立ち上がるという大きな成果が!

2回目の避難は、会場内での火事。急遽、避難指示が出されて、会議やセミナーは途中でストップ。原因は、電子レンジなどの電圧の違いによる発火と見られている。事件直後は、煙を吸って治療を受けた人もでるなど、会場内も騒然としたよう。

7. 会場の食事は、低炭素&地産地消がマスト?

COP会場のケータリングは、温室効果ガスの一つ、メタンを排出する牛肉の量をおさえ、ベジタリアンメニューを設置するなど、環境負荷が少ないものを期待されるのが一般的。今回、ブラジル側は、メニュー全体の40%をベジタリアン・ヴィーガンメニューにしたり、グルテンフリー、ラクトース(乳糖)フリーなどの多様な食事制限に対応。ほかにも地産地消で地元食材を活用することや、堆肥化可能またはリサイクル可能な食器の使用することに取り組むなど、さまざまな食文化を尊重しつつ、健康的で多様な食事の選択肢を提供すると発表した。

なかでも人気が集まったのは、アマゾンの果実を使った地元で有名な老舗アイスクリーム店「カイル」。ピスタチオやクプアス(カカオの仲間)、ブラジルナッツを使った特別メニューの「COP30」や「アサイー」など、ここでしか味わえないフレッシュなフレーバーに注文が集まった。普段1カップ約300円(1レアル=29円換算)のアイスが、会場では約720円。それでも多くの人が行列をつくったそう。

8. “地球温暖化を食い止める牛肉”が注目の的?

Lucas Ninno / Getty Images

今回、ホットトピックの一つだった持続可能な農畜産業。ベジタリアンメニューと比較して、肉中心の食事は環境負荷が高いと言われているものの、ブラジルにとって畜産業、特に牛肉は国を支える一大産業。世界の輸出量の2,3割を占める世界最大の牛肉輸出国でもある。ただ、牛を飼うためにアマゾンの土地を切りひらき、森林伐採が進んでいるという課題もあるブラジル。経済と環境の両方がWin-Winとなる対策が急務!

そこでCOP30で注目されたのが、土壌や牧草地、家畜を管理して温室効果ガスの排出を削減しながら育てるという「低炭素な牛肉」。ブラジルの食肉業界が、牧草地などの適切な管理によって「牛のメタン排出量を土壌の炭素吸収で相殺できる」とアピールした。この根拠について、専門家やNGOからは「森林消失によるインパクトをカバーできていない」「『低炭素』という言葉がグリーンウォッシュにあたる」などと、厳しい目が向けられていて、まだまだ完璧な策とは言えなさそう。

9. 気候変動=健康問題!

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「もし、私たちの地球が患者だったら、集中治療室に入院することになるでしょう」という世界保健機関(WHO)テドロス事務局長の言葉は、もはや単なる例え話ではなくなってきているかも。これまでの研究から、地球温暖化が病気のリスクを高める傾向が見えてきたことからも、COP30では健康も重要なテーマの一つに。

議論の結果、気候変動に強い「保健システムの構築」や、「人間と動物の健康、環境の健全性を統合したアプローチ」などを提案したWHOの『ベレン健康行動計画』を各国政府が支持。「気候危機は、健康危機でもある」という共通認識がとられた瞬間に。

10. 次のCOPは異例の開催?

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次回のCOP31は、トルコのアンタルヤで開催が決定。開催場所を巡っては、1年近くにわたって競合していたオーストラリアが立候補を撤回し、トルコに譲ったことで議論は決着。代わりにオーストラリアは交渉議長国を務めることになり、2つの国が共同開催する異例のCOPになる。

地球の平均気温の上昇を1.5℃以内におさえるという約束をしたパリ協定ができて、10年目だった2025年のCOP30は、化石燃料からの脱却の道のりを明確に描くことができなかったり、日本が「本日の化石賞」をまた受賞したりなど、総じて、期待を下回る結果だったというニュースが目立った。

その一方で、森林減少防止のために国際社会が本格的に動きはじめたり、アメリカ連邦政府の不在のなかで、同国の企業やNGOといった政府以外の参加者たちによる気候変動対策をリードしていく動きが際立ったりなど、ポジティブな面も。つまり、世界がパリ協定で決めた目標を諦めたわけでないことも事実。立場の違いを越えて協力していくという姿勢を崩してはいない点にも、希望のまなざしを向けたい。

名取さんにとって、COPはパワースポット!

COP30会場のボランティアスタッフ。「みんなやさしく、ホスピタリティ抜群! ロジのサポートが行き届いていました」と名取さん Media is Hope

「3年連続でCOPに現地参加していますが、COPは世界中のコミュニティがギュッと集まっている空間。先進国から後進国、例えばロシアやウクライナなどの現在進行形で戦争している対立国などが『気候変動とどう向き合うか』という一つの課題を介して、同じ場所に集まり、同じ時間を共有している、とても奇跡のような場所だと感じます」

「課題もありますが、私にとって、COPとは地球温暖化を食い止めようと各地で活動する人たちからパワーをもらえる場所。これからも、自分の立場からできることをつづけようと決意を改める場です」

PROFILE
Hearst Owned

名取由佳(なとり・ゆか)

大学卒業後は幼い頃からの夢だったエンターテイメント企業に就職し、イベントの企画やVIP対応、新人育成など5年間勤務。「本当の幸せや豊かさとは?」を考えるようになり2019年に退職。その後は、気候変動解決に向けた新たな価値の創出や社会システムの構築、社会の抜本的な改革に向けて奮闘中。Media is Hope共同代表理事。

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