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『ハムネット』は“痛みと向き合う物語”。クロエ・ジャオ監督が考える、表現者の使命とは

  • 2026.1.22
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『ノマドランド』('20)でアカデミー賞監督賞と作品賞を受賞した初のアジア人女性監督クロエ・ジャオが、待望の新作を携えて来日。その2026年アカデミー賞候補と呼び声高い『ハムネット』は、主演にジェシー・バックリーとポール・メスカルを招き、シェークスピアの妻の視点から名作「ハムレット」の誕生を描く感動作だ。

左からスティーヴン・スピルバーグ、クロエ・ジャオ監督、ジェシー・バックリー Gilbert Flores / Hearst Owned

名作が生まれた裏側の悲劇を、オスカー受賞の俊英が深く、静かに紡ぐ

「製作総指揮を務めたスピルバーグの会社からこの作品をオファーされたとき、私は母親ではないので、子を失う母の映画は作れないと断りましたが、原作のマギー・オファーレルの小説を読んで没入して。それまでの4年くらいと『ハムネット』製作が始まってからも、私は大きな喪失を抱えていて、シェークスピア夫妻に自分を重ねる部分がありました。ヒロインは息子の死の痛みを自然の中で体を動かし叫ぶことで、シェークスピアは自作の中で痛みと向き合い芸術で表現する……痛みをリリースする女性性と男性性、それぞれの側面を描きながら、私自身もその両方の方法によって、自分の痛みと向き合うことができました」

Agata Grzybowska / Hearst Owned

喪失の痛みと向き合う登場人物を通して私自身も自分の痛みを解放できた

16世紀イギリスの片田舎。村人がみなねずみ色の服装なのに対し、『ハムネット』のヒロインは赤いドレスを着て、森の自然と対話する女性として描かれる。

「私たち人間はもともと自然の一部だと思っています。でも現代社会では人と自然が切り離され、人生の中で起こる破壊や喪失、老いや死といった苦しみを恐れるようになってしまった。だから物語を通じて苦しみに意味を与え、登場人物自身が自然の一部であることを受け入れる、その作業を手伝うのが私たちストーリーテラーの役割だと思います」

Courtesy of Focus Features / Hearst Owned

物語のシェークスピア夫妻に自らの原動力を重ね、静かに言葉を紡ぐジャオ。「愛しい映画といえば、ウォン・カーウァイ。特に“赤”を思い浮かべた『花様年華』('00)や、世界観やカメラワークの観点から『トリコロール/青の愛』('93)、また今回の撮影監督ウカシュ・ジャルの『関心領域』('23)も大好きな映画です」

ジャオ監督の愛しい映画

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『トリコロール/青の愛』('93)

ポーランドの鬼才クシシュトフ・キェシロフスキが自由、平等、博愛をテーマに描いた3部作の一編。音楽家の夫と娘を事故で失ったヒロイン(ジュリエット・ビノシュ)の喪失と再生を紡ぐ。

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『花様年華』('00)

1962年の香港を舞台に、互いに配偶者を持つ男女が惹かれ合い、苦悩する姿を描いたウォン・カーウァイ監督の匂い立つ傑作ラブストーリー。トニー・レオンとマギー・チャンが主演を務める。

photo ©2025 FOCUS FEATURES LLC., AFLO, GETTY IMAGES

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『ハムネット』

1580年、英国。鷹を操り、薬草に通じるアグネス(ジェシー・バックリー)は貧しいラテン語教師ウィリアム(ポール・メスカル)と惹かれ合い、結婚。彼女は夫を作家としての成功を願いロンドンに送り出し、母親として奮闘するが、不吉な病が村を襲う。2026年4月10日、全国公開。

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クロエ・ジャオ(Chloé Zhao)

1982年、中国・北京生まれ。15歳でロンドンの寄宿学校に入り、ロサンゼルスで政治科学、ニューヨークで映画を学ぶ。『ザ・ライダー』('17)『ノマドランド』('20)で多数の賞に輝く注目監督。

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