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夜の営みが大嫌い…でも拒否したら夫に嫌われる? 妻の切実な痛みと悩みを描き、夫婦間の見えづらい問題を投げかける【書評】

  • 2026.3.1

【漫画】本編を読む

夫婦であっても、当然ながら好みや思考が常に一致するわけではない。このごく当たり前のことを、私たちはどれほど理解できているだろうか。『夫に「したくない」が言えない』(高尾まこと/KADOKAWA)は、妻が夫の要求を拒否できない悩みを、極めて現実的な感情の積み重ねとして描いたコミックエッセイだ。

主人公は愛する夫と結婚し、かわいい子どもにも恵まれて幸せな日々を送る主婦・志穂。産後半年ほど経ったある日、夫から夜の誘いを受ける。しかし、大学時代の彼氏との初体験で感じた強烈な痛みが原因で「セックスが大嫌い」になった志穂は、その彼氏に浮気されたことで、自分が我慢すればうまくいくと痛みを隠すようになっていた。「体の関係がないと心の距離が離れてしまう」と悩む志穂だが、同窓会で同じ悩みを抱える同級生に再会したことをきっかけに、夫婦の関係が変化していく――。

本作が鋭いのは、夫婦間の性の問題をただの「性欲の不一致」や「どちらかの身勝手さ」だけに回収しない点だ。描かれているのは「嫌だと言えない関係」そのものである。しかも「夫が加害者、妻が被害者」という単純な構図でもない。むしろ夫に悪意はなく、普通の夫として描かれている。セックスレスでも、DVでも、浮気でもなく、離婚するほど険悪ではない。しかし、だからこそ問題は見えにくく、声を上げづらくなって心は徐々にすり減っていく。夫婦間でもデリケートな話題であるだけに、苦しむ志穂のつらさがじわじわと迫ってくる。

「したくない」と言うこと自体は、決して愛の否定ではない。それでも男女問わず、志穂と同様にそれを「拒絶」や「関係の破壊」と自責の念に囚われてしまう現実がある。本作を読むと「本当に自分の気持ちを選べているのか」と、静かに問い返したくなるだろう。

文=七井レコア

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