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大英博物館が求める「トレジャーハンター」ってどんな人?

  • 2026.1.16
大英博物館が求めている「トレジャーハンター」とは? / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

「失われた宝を探すトレジャーハンター」と聞くと、映画『インディ・ジョーンズ』のように、遺跡を駆け巡り秘宝を発見する華々しい活躍を思い描くかもしれません。

しかし現実世界で今まさに求められている「トレジャーハンター」の仕事は、そんな冒険とは正反対の、とても地味で根気のいる作業です。

2023年、イギリスの大英博物館で、ギリシャ・ローマ部門の所蔵品が大量に盗難・紛失・破損していたことが公表されました。

この回収作業は未だに続いており、失われた文化財を追跡し回収する「トレジャーハンター」のような専門人材を、新たに必要としています。

目次

  • 2023年、大英博物館で発覚した「大規模盗難」
  • 博物館が求める映画とは真逆の「トレジャーハンター」

2023年、大英博物館で発覚した「大規模盗難」

事の発端は、大英博物館の所蔵品とみられる品物がオンラインなどで売られている、という外部からの指摘でした。

その後の調査を経て、2023年に大英博物館は、ギリシャ・ローマ部門で大規模な盗難や紛失、破損が起きていたことを公表し、独立した検証も行われることになりました。

問題となっているのは、宝石、ガラス製品、金の装身具などを中心としたコレクションです。

年代はおよそ3000年にわたり、古代からの貴重な品々が含まれているとみられます。

現在の推計では、およそ1500点以上、報道によっては最大2000点近くが影響を受けた可能性があるとされています。

そのうち約650点はすでに回収されていますが、依然として半数以上の行方が分かっていません。

より深刻なのは、「何が失われたのか」を博物館側が完全には把握できていないという点です。

本来なら、博物館の所蔵品には一つ一つ登録番号が振られ、台帳やデータベースで管理されているはずです。

しかし今回のケースでは、記録が不十分なものや、そもそも正式に登録されていなかった品が含まれていたと指摘されています。

古い紙の目録にしか情報がない品もあり、長い間、所在の確認が行われてこなかった資料もあったとみられます。

その結果、所蔵品がいつ消えたのか、どこから持ち出されたのか、誰の手に渡ったのかを追跡することが非常に難しくなりました。

これは単なる窃盗事件というより、収蔵管理の体制そのものに大きな問題があったことを示しています。

こうした背景から、大英博物館は失われた文化財を追跡し、可能なかぎり回収していく専門家、いわば「トレジャーハンター」のような人材を新たに求めています。

では、そのトレジャーハンターとはどのような仕事をする人なのでしょうか。次項で詳しく見てみましょう。

博物館が求める映画とは真逆の「トレジャーハンター」

大英博物館が求めているトレジャーハンターは、映画に登場するような、遺跡を掘り進めて宝物を手に入れる冒険家ではありません。

どちらかといえば、「図書館司書」や「記録を整理・管理する専門家」に近い存在です。

この仕事の中心は、膨大な記録と向き合うことだからです。

過去の台帳や目録などのアーカイブ資料を一つ一つ見直し、どの所蔵品がいつの時点まで確認されていたのか、どの箱や棚に保管されていたのか、といった情報を丁寧に整理します。

これにより、どの品がいつ頃から姿を消していたのか、どのグループが特に危険にさらされていたのかが、少しずつ浮かび上がってきます。

同時に、世界中の美術市場を追いかける仕事もあります。

オークションハウスのカタログやオンラインの出品情報を確認し、「これは大英博物館の所蔵品ではないか」という怪しい品がないかをチェックします。

ディーラーや美術商、コレクターに直接連絡を取り、情報を集めることも欠かせません。

こうした作業は、どれも地味で時間がかかります。

1回の調査で見つかるのは、せいぜい1点か2点ということも多いといいます。

それでも、アメリカからまとめて268点が返還されるなど、大きな成果が生まれることもあります。

さらに、この仕事には「時間との戦い」という側面もあります。

特に深刻なのが金製品です。

金は価値が高く、溶かしてしまえばただの地金として売ることができます。

そうなると、元がどの文化のどんな装身具だったのか、どんな技術や歴史的背景を持っていたのかは、ほぼ完全に失われてしまいます。

つまり、金製品が溶かされてしまう前に見つけ出せるかどうかが、文化財としての生命を守れるかどうかの分かれ目になるのです。

近年では、オープンソース情報の活用や、AIによる画像照合といったテクノロジーもこの捜査を助けています。

過去の写真や記録と、現在市場に出ている画像を照合することで、長く行方不明だった所蔵品を特定できる可能性が高まっています。

しかし最後は、人間の目と経験、そしてあきらめずに探し続ける粘り強さが欠かせません。

地味で終わりの見えない作業の先に、ようやく一つの品物が博物館に戻ってくる。そうした成功体験が、この作業者たちの大きな支えとなっています。

大英博物館が求めるトレジャーハンターとは、派手なアクションで宝を奪い返すヒーローではなく、失われかけた歴史を記録と知恵と根気で救い出す、粘り強い専門家なのです。

参考文献

The British Museum Is Hiring a Treasure Hunter— But Not the Kind You See in Movies
https://www.zmescience.com/science/archaeology/the-british-museum-is-hiring-a-treasure-hunter-but-not-the-kind-you-see-in-movies/

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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