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「ゲーム音楽」は雑念を減らし、「映画音楽」は物語を想像させる

  • 2026.1.13
ゲーム音楽と映画音楽は違った私たちの思考に違った効果を及ぼす / Credit:Canva

作業用BGMとして、ゲームや映画のサウンドトラックを聴くことはあるでしょうか。

集中したいときにはゲーム音楽、気分を変えたいときには映画音楽というように、何となく使い分けている人もいると思います。

実はこの「何となくの使い分け」には、少なくとも思考パターンという点では心理学的な裏付けがある可能性が示されました。

イギリスのダラム大学(Durham University)の研究チームは、音楽ジャンルや親しみの度合いが、聴いている最中の頭の中の思考をどのように変えるのかを調査しました。

この研究は、音楽が感情だけでなく、私たちの内側の思考の流れそのものを方向づけていることを示しています。

研究成果は2025年7月5日付の『Psychology of Music』に掲載されました。

目次

  • 音楽を聴くとき、頭の中では何が起きているのか
  • ゲーム音楽と映画音楽はそれぞれ別の思考をつくる

音楽を聴くとき、頭の中では何が起きているのか

私たちは音楽を聴いているとき、ただ何となく聴いているようでいて、頭の中ではいろいろなことを考えています。

昔の思い出がよみがえったり、映画のワンシーンのような情景を思い浮かべたり、逆に全く関係のない仕事や家事のことを考えてしまうこともあります。

これまでの研究でも、音楽が記憶や想像を刺激することは知られていましたが、多くは記憶だけや視覚イメージだけといったように、一つの要素に絞って調べていました。

そのため、どのような音楽が思い出を呼びやすいのか、どのような音楽が物語の空想や雑念を生みやすいのかといった、思考全体のパターンはよく分かっていませんでした。

そこで今回の研究では、音楽を聴いている最中に生じるさまざまな思考をまとめて記録し、音楽のジャンルや特徴が思考の種類をどう変えるのかを調べることが目的とされました。

研究には、イギリスとアメリカから集められた701人が参加しました。

参加者は、歌詞のない30秒間の音楽クリップを聴き、その間にどのような思考が浮かんだかを報告しました。

用意された音楽は356曲で、ジャンルは17種類に及びます。 クラシック、ポップ、ロック、メタル、アンビエント、ヒップホップに加え、映画音楽やゲーム音楽、1960年代ポップや1980年代ポップなど、日常で耳にしやすい幅広いジャンルが含まれていました。

各クリップを聴いたあと、参加者は、音楽そのものについて考えていたかどうか、自分の人生の思い出を思い出したかどうかを報告しました。

また、映画やゲームなどメディアの場面を思い出したか、架空の物語や場面を想像したか、抽象的な形や色を思い浮かべたかどうか、日常の用事や将来の予定など、音楽と無関係なことを考えていたかどうかも伝えました。

同時に、その音楽についてどれくらい親しみがあるか、どれくらい好きか、明るいか暗いか、エネルギーが高いか、曲の中でどれくらい変化があったかも評価してもらいました。

そして分析の結果、音楽を聴いている間、約9割の場面で何らかの思考が生じていることが分かりました。

よく報告されたのは、音楽そのものについての思考であり、映画やテレビ、ゲームなどのメディアの記憶でした。

頭の中で物語や場面を作るような想像や、自分の人生の思い出もよく挙げられました。

そして、こうした思考のタイプは、音楽のジャンルや親しみ、好みなどによって大きく変わっていることが分かりました。

より詳しい違いを次項で確認しましょう。

ゲーム音楽と映画音楽はそれぞれ別の思考をつくる

まず、最も特徴的だったのが映画音楽です。

映画音楽を聴いたとき、参加者は、映画やテレビ番組を思い出すメディア記憶や、頭の中で物語を作るようなフィクションの想像を、他のジャンルより多く報告しました。

その一方で、メロディやリズムなど音楽そのものを分析する思考は、他のジャンルより少ない傾向がありました。

これは、その曲を実際に知っている場合はもちろん、知らない映画音楽でも起こりやすい傾向がありました。

映画音楽はもともと物語や映像を支える目的で作られているため、そのような音作り自体が、聴き手の思考をストーリー側に引き込みやすいと考えられます。

さらに映画音楽には、親しみも特別な働きをしていました。

一般の音楽では、親しみが増すと自分の人生の思い出が出てきやすくなります。

しかし映画音楽では、親しみが高いほど映画やドラマの具体的な場面がよく思い出されていました。

つまり映画音楽は、自分だけの個人的な記憶というより、「あの作品のあのシーン」というような共有された物語の記憶を呼び起こす役割を果たしやすいのです。

一方で、ゲーム音楽は別の形で頭の中に影響していました。

ゲーム音楽を聴いているとき、参加者は、日常の用事や雑事といった音楽と無関係な思考を報告する頻度が、他のジャンルより低くなっていました。

研究者たちは、この結果をゲーム音楽の没入性と結びつけて解釈しています。

ゲーム音楽は、プレイヤーがゲーム世界に入り込みやすいように設計されており、注意を持続させる役割を持ちます。

そのため、聴いている人の意識を今目の前の体験に引きつけておき、日常のあれこれを考えにくくしている可能性があります。

ただしゲーム音楽は、映画音楽ほどはっきりとした物語の想像を増やすわけではありません。

ゲームのストーリーはプレイヤーの選択によって変わることが多く、映画のように決まった物語が頭に浮かびにくいことが関係していると考えられます。

この研究では、音楽をどれくらい好きかも重要な要素でした。

好みの度合いが高い音楽ほど、架空の物語の想像や自分の人生の思い出が増え、反対に日常の雑念や何も考えていない状態は減っていました。

また、曲の中で変化が多い音楽ほど注意が引きつけられ、日常のことをぼんやり考える時間が少なくなることも示されています。

一方で、エネルギッシュな音楽は意外にも、日常の用事や実務的なことを考える頻度をやや増やす傾向がありました。

つまり、刺激が強い音楽が必ずしも集中しやすい音楽とは限らないのです。

このように今回の研究は、ジャンルや親しみ、好み、音楽の構造が思考の種類を大きく左右することが示しました。

今後は、具体的な音楽の特徴と、どのような思考が組み合わさりやすいのかをさらに詳しく調べることで、集中しやすいBGMや記憶を呼び起こしやすい音楽、創造的なアイデアを促す音楽などの理解が深まると期待されます。

気分や目的に合わせてBGMを選ぶとき、思考にもたらす違いを少し意識してみると、音楽との付き合い方がまた一段と面白くなるかもしれませんね。

参考文献

How musical genre and familiarity shape your inner thoughts
https://www.psypost.org/how-musical-genre-and-familiarity-shape-your-inner-thoughts/

元論文

Thoughtscapes in music: An examination of thought types occurring during music listening across 17 genres
https://doi.org/10.1177/03057356251346654

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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