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休暇の回復効果は「最大43日」続く可能性――世界32研究のメタ分析が推定

  • 2026.1.5
休暇の回復効果は「最大43日」続く可能性――世界32研究のメタ分析が推定
休暇の回復効果は「最大43日」続く可能性――世界32研究のメタ分析が推定 / Credit:Canva

年末年始の長い休みのあと、「仕事始めがつらい」と感じたことがある人は多いと思います。

しかし、アメリカのジョージア大学(UGA)などの研究者によるメタ分析によって、休暇の効果は仕事復帰の21日後(平均)でも残っており、計算上は最大43日後まで休暇の回復効果が続く可能性が示されました。

また研究では仕事始めが辛くても、休暇前の状態よりはかなりマシであることも示されています。

これは従来考えられていた「休暇の効果は小さくすぐ消える」という見方が早計だった可能性を示す結果となりました。

研究内容の詳細は『Journal of Applied Psychology』にて発表されました。

目次

  • 「休暇の余韻」は本当にあるのか?理論と過去研究のギャップ
  • 仕事始めはつらいけど、ちゃんと「休暇は効いている」
  • 休暇は贅沢ではなく「目に見えない投資」である

「休暇の余韻」は本当にあるのか?理論と過去研究のギャップ

「休暇の余韻」は本当にあるのか?理論と過去研究のギャップ
「休暇の余韻」は本当にあるのか?理論と過去研究のギャップ / Credit:Canva

「どうして正月明けの出勤日は、あんなに魂が抜けたような気分になるのだろう」と思ったことはないでしょうか。

カレンダー上では十分休んだはずなのに、仕事始めの日が近づくと、妙に心がザワザワしてきます。

そしていざ仕事が始まってみると、休暇中に溜まっていたはずのエネルギーがすぐに底をつき、「エンジンがなかなかかからない」感覚がしばらく続いてしまいます。

ところが、ちょっと落ち着いて自分のことを振り返ってみると、意外なことにも気づきます。

少なくない人々は「やる気の充電」や「心の余裕」のような要素が、休暇前よりはいくぶん「マシ」になっていると感じられるでしょう。

しかし科学的に「休暇の余韻」の存在を掴もうとする試みは難航していました。

2009年のメタ分析で、心理学の研究者たちがこの問題に挑戦しましたが、その結果は「確かに休暇の効果はあるけれど、せいぜい一時的で、小さな影響にすぎないという」結論になっていました。

つまり「休暇を取るのは良いことだが、効果は大きくないし、すぐ消える」と思われてしまったのです。

冷酷な経済学の視点から極端に見れば、労働者に休暇は不要という結論にもなりかねません。

ところが、「本当にそれだけ?」と疑問に感じた別の研究者たちがいました。

彼らが目をつけたのは休暇についての有力な2つの理論です。

1つ目は「人は仕事やストレスで消耗した心や体を回復させるために、完全に負担を外す時間が必要だ」とする「努力−回復モデル」です。

2つ目は「人は体力や気力、ストレスに耐える力などのエネルギー(資源)を使い切らないように守り、増やそうとする性質がある」とする資源保存理論と呼ばれるものです。

これら2つを簡単にまとめると「休暇は人々のエネルギーを守り、増やす」というものになります。

これは先行メタ分析の「休暇の効果は大きくないしすぐ消える」という調査結果に反するものです。

(※ここで重要なのは、先行のメタ分析では、休暇の効果を「休む前」と「休んだ直後」を中心に比較し、休暇後の期間について十分なデータがなかったのです。)

そこで今回、研究者たちは世界中から、休暇についての多くの研究を集めて、休暇の前から休暇中、仕事に戻った直後、さらに数週間後までを丁寧に追いかけ直しました。

こうすれば、「休暇の効果がどれくらいのピークまで上がり、その後どんな速さで落ちていくか」という変化のカーブをしっかり描けます。

もしこの波が明確にわかれば、「仕事始めがつらい理由」や「休暇を取る意味」、さらには「休み方の工夫次第で、この波の形を変えられるかもしれない」という疑問にも、数字を使ったはっきりした答えを示せるようになるでしょう。

言い換えれば、「休暇という充電のピーク値」を正しく理解することで、長期休暇の使い方が、より効果的になる可能性さえあるのです。

仕事始めはつらいけど、ちゃんと「休暇は効いている」

仕事始めはつらいけど、ちゃんと「休暇は効いている」
仕事始めはつらいけど、ちゃんと「休暇は効いている」 / Credit:Canva

研究者たちは、世界中の科学論文の中から、「休暇の前後で同じ人の状態を測った研究」を探し出し、最終的に32本の研究・256の効果量(効果の大きさの目安)を分析しました。

対象は、健康な働く大人が中心です。

研究は主にヨーロッパや北米、アジアの9か国で行われており、日本のデータも少数ながら含まれています。

すると予想通り、平均では休暇に入ると心身の調子がかなり大きく上がり、休暇の終わりから復帰直後にかけては下がる傾向がありました。

つまり「休暇中のピーク」から見ると、仕事始めの落差はやはりそれなりにショックがある、という形です。

ただ、このとき「休暇を取った意味がなくなったか」といえば、実はそうでもありませんでした。

なぜなら、仕事に戻った直後でも、多くの人の心身の調子は「休暇前の水準よりまだ少し良いレベル」で保たれていたからです。

復帰直後は休暇の終わりということで暗黒の日のように感じてしまいがちですが、それでも総合的な心の状態はまだ休暇前よりは上の水準にあり、その後の数週間でゆっくりと元に戻っていく傾向が見られました。

そして各研究で平均すると、休み明け後の最後の追跡測定(平均約20.9日後)でも、まだ休暇前より良い状態が残っていたと報告されています。

研究者たちはこのデータをもとに、「もし直線的にゆっくり下がると仮定するなら、休暇前のレベルに完全に戻るのはだいたい43日後あたりだろう」と慎重に推定しています。

では、「どんな休み方をした人がよりよく回復していたのか」という点はどうでしょうか。

休暇といっても、家でゴロゴロ過ごす人もいれば、スポーツや散歩を積極的に行う人、また仕事のメールが気になってずっと見てしまう人もいます。

これらの過ごし方が、回復の度合いにどう影響するかを見たのです。

その結果、「仕事のことを完全に忘れて頭を切り替えること」が、休暇中や休暇直後の良い状態とはっきり結びついていました。

専門用語ではこれを「心理的ディタッチメント」(仕事から頭を切り離すこと)と呼びますが、要するに簡単に言えば「休暇中も仕事のことを考えているようなら、休みの意味は半減する」と言えるわけです。

また、散歩や軽い運動など体を動かす活動も、心と体の回復と適度な関連があることがわかりました。

逆に、テレビをだらだら見るような「受動的な休息」の場合は、良い状態とのはっきりした結びつきはあまり見られませんでした。

つまり、ただ何もしないよりは、「仕事から心を切り離しつつ適度に体を動かす」ことが、休暇をより効果的なものにすると言えそうです。

このように今回の研究では、休暇の効果が単に「休暇中だけ楽しい」ものではなく、「休暇後にも残る回復力」として数字で示されました。

休暇の「充電」がどれくらいのスピードで増え、どれくらいのペースで減っていくかがはっきりすれば、より効果的な休暇の取り方も考えられるでしょう。

休暇は贅沢ではなく「目に見えない投資」である

休暇は贅沢ではなく「目に見えない投資」である
休暇は贅沢ではなく「目に見えない投資」である / Credit:Canva

今回の研究から導かれた最大のポイントは、「休暇は単なる一時的なご褒美ではなく、数週間にわたって仕事や日常生活のパフォーマンス(仕事や日常生活のしやすさや成果)を下支えしうる『目に見えない投資』になり得る」ということです。

休暇が終わった直後の、いわゆる「仕事モードへの復帰」の瞬間にこそ、気持ちの落差が大きくなりますが、そこで調子が一気に休暇前の最悪の状態に戻るわけではありません。

むしろ休暇前の疲れ切った状態に落ち込むまでは、意外に時間がかかるのです。

研究者たちは、「休暇の効果は大きく、過去の研究で考えられていたほどすぐには消えない」とまとめています。

このことは、個人にも会社にも大きな意味を持ちます。

個人レベルでは、「ちゃんと休暇を取ること」は、単なる心のガス抜きではなく、その後数週間の自分のパフォーマンス(仕事や日常生活のしやすさ)が底上げされることにつながりうる「コスパの良い投資」として見直すことができます。

会社側にとっても、「休暇を取らせることはさぼりを許すことではなく、中長期の成果を守るための仕組みだ」と言い換えやすくなります。

著者たちは論文の最後で、従業員が十分な休暇を持ち、それを実際に使えるようにし、休暇中は仕事から頭を切り離せるような環境や職場の雰囲気、ルールを整えるべきだと提言しています。

もちろん「約43日」という数字は、復帰後の測定値から直線的に外挿した推定にすぎず、必ずしも全員に当てはまるわけではありません。

実際の回復カーブが人によって曲がっている可能性や、途中で仕事や家庭のストレスが再び高まる可能性を考えると休暇効果の持続時間は人によって大きく違うものになるはずです。

それでもこの研究には、はっきりとした成果があります。

バラバラだった休暇研究を32本まとめることで、「休暇前 → 休暇中 → 仕事に戻った直後 → そこからしばらくあと」という時間の流れ全体を一枚のカーブとして描き出したこと。

休暇の長さだけでなく、「仕事から頭を切り離せたか」「体を動かしたか」といった質の面が、回復とどのようにつながっているかを整理したこと。

そして、「仕事始めがつらい」という多くの人の実感を、「あなたが弱いから」ではなく「休暇のピークから落ちるとつらく感じやすい」という形で説明しなおす言葉を提供してくれたことです。

休暇は、ただのご褒美ではなく、「その後の数週間の自分と職場を少しだけマシにするための、静かなインフラ」である──そう考えてみると、次の連休のカレンダーが、少し違って見えてくるのではないでしょうか。

もしかしたら未来の世界では、休暇は特別なご褒美ではなく、仕事を長く続けるための“基本装備”として、もっと当たり前に設計されるようになるのかもしれません。

元論文

I need a vacation: A meta-analysis of vacation and employee well-being.
https://psycnet.apa.org/doi/10.1037/apl0001262

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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