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ヴォイニッチ手稿は「暗号」で書かれた可能性が浮上

  • 2026.1.5
Credit: ja.wikipedia

世界には、長年にわたって研究者たちの好奇心をかき立てながら、いまだ正体を明かさない奇書がいくつか存在します。

その中でも「世界で最も謎めいた写本」と呼ばれてきたのが、ヴォイニッチ手稿です。

意味不明な文字列と奇妙な挿絵に満ちたこの手稿は、100年以上にわたって解読が試みられてきましたが、いまだ決定的な答えは得られていません。

そんな中、この不可解な文書が「暗号」によって作られた可能性を示す最新研究が注目を集めています。

研究の詳細は2025年11月26日付で科学雑誌『Cryptologia』に掲載されました。

目次

  • 謎の奇書「ヴォイニッチ手稿」とは何か?
  • 謎を解く鍵になる「ナイッベ暗号」とは?

謎の奇書「ヴォイニッチ手稿」とは何か?

ヴォイニッチ手稿/ Credit: ja.wikipedia

ヴォイニッチ手稿は、15世紀初頭に作られたと考えられている未解読の写本です。

放射性炭素年代測定により、使用されている羊皮紙は1404年から1438年頃のものであることが判明しています。

写本は、正体不明の文字体系でびっしりと埋め尽くされており、そこに描かれている挿絵もまた謎だらけです。

見慣れない植物、天文や占星術を思わせる図、浴槽のようなものに浸かる裸の女性たち、そして意味不明な構造物が次々と現れます。

これらの図像は何を意味しているのか、あるいは意味を持たない装飾なのか、その点すら意見が分かれています。

1912年、この写本は古書収集家ウィルフリッド・ヴォイニッチによって世に知られるようになりました。

手稿を発見したウィルフリッド・ヴォイニッチ/ Credit: ja.wikipedia

現在はイェール大学のバイネッキ貴重書・写本図書館に所蔵され、誰でも高精細画像で閲覧できるようになっています。

最大の謎は、本文に使われている「ヴォイニッチ文字」です。

「単なるデタラメな記号の羅列であれば、ここまで規則的な構造は生まれないはずだ」と指摘する研究者もいます。

実際、文字の出現頻度や単語の長さには、自然言語に似た統計的特徴が見られます。

一方で、どの既知言語にも当てはまらず、決定的な解読に至った例はありません。

そのため、これまで提唱されてきた仮説は多岐にわたります。

未知の言語で書かれた文書、複雑な暗号文、中世の錬金術書、あるいは意図的に作られた偽書。

ヴォイニッチ手稿は、そのどれであっても不思議ではない状況にあり続けてきました。

謎を解く鍵になる「ナイッベ暗号」とは?

そして最近、この手稿が「暗号で作られた可能性」を改めて具体的に示す研究が発表されました。

その中心となっているのが「ナイッベ(Naibbe)暗号」と呼ばれる新たな暗号モデルです。

この暗号は、ラテン語やイタリア語といった既存の言語テキストを材料にします。

まず、ラテン語やイタリア語のテキストを文字の連なりにまで分解し、その後、1文字または2文字のまとまりにランダムに区切り直すことで、文章のリズムを撹乱するアルゴリズムである。

一文字のまとまりは、そのままヴォイニッチ語風の「単語」になります。

二文字の場合は、最初の文字が接頭辞、次の文字が接尾辞として処理され、やはり一つの単語として表現されます。

重要なのは、この処理によって生成されたテキストが、見た目だけでなく統計的性質においてもヴォイニッチ手稿とよく似た振る舞いを示す点です。

文字の出現頻度、単語の長さ、繰り返しのパターンなどが、偶然とは考えにくいほど近いものになることが確認されています。

ヴォイニッチ手稿の文字部分の拡大図/ Credit: ja.wikipedia

この研究の著者は、ナイッベ暗号が「ヴォイニッチ手稿そのものを解読した」と主張しているわけではありません。

むしろ強調されているのは、「このような仕組みで、あの不可解なテキストが生成されること自体は十分に可能である」という点です。

これまで、ヴォイニッチ手稿の文字列が持つ奇妙な統計構造は、偽書説にとっても反論材料になってきました。

「意味のないデタラメで、ここまで一貫した構造を作るのは難しい」という考え方です。

しかしナイッベ暗号は、人間が当時の技術でも扱えたであろう単純な操作の積み重ねによって、あの構造を再現できる可能性を示しました。

つまり、この研究は「ヴォイニッチ手稿が暗号文である」と断定するものではありませんが、「暗号によって作られたとしても不思議ではない」という選択肢を、これまで以上に現実的なものとして提示したのです。

謎は深まるが、視界は開けた

ヴォイニッチ手稿は、いまなお正体不明の存在です。

意味を持つ文書なのか、精巧な暗号なのか、あるいは中世の人々が生み出した壮大な知的遊戯なのか。答えは出ていません。

しかし、ナイッベ暗号を用いた最新研究は、この謎に新たな光を当てました。

少なくとも、あの奇妙な文字列が「人為的なルールに基づいて作られた可能性」は、以前よりも具体的に議論できる段階に入ったと言えるでしょう。

ヴォイニッチ手稿の魅力は、どんな仮説を立てても、それを映し返すかのように新たな疑問が生まれる点にあります。

解読への道は依然として険しいままですが、その分だけ、この写本は今後も研究者と読者の想像力を刺激し続ける存在であり続けそうです。

参考文献

Mysterious Voynich manuscript may be a cipher, a new study suggests
https://www.livescience.com/archaeology/mysterious-voynich-manuscript-may-be-a-cipher-a-new-study-suggests

Is This How The Voynich Manuscript Was Made? A New Cipher Offers Fascinating Clues
https://www.iflscience.com/is-this-how-the-voynich-manuscript-was-made-a-new-cipher-offers-fascinating-clues-81786

元論文

The Naibbe cipher: a substitution cipher that encrypts Latin and Italian as Voynich Manuscript-like ciphertext
https://doi.org/10.1080/01611194.2025.2566408

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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