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マーガレット・ハウエルのキッチンと道具。 (後編)

  • 2026.1.7

イギリスを代表するクロージングデザイナー、マーガレット・ハウエル。時代を超えて愛される彼女のデザインは、シンプルでありながら凛とした存在感を放つ。今回はロンドンの自宅を訪ね、日々の暮らしについて、なかでも彼女が毎日立つキッチンと長年寄り添う道具について話を聞いた。

日々の暮らしを支えてくれる、キッチンまわりの道具。

銅製の小さな鍋 銅でできた鍋は、シンプルで小ぶりなデザインが気に入って、かなり以前にチャリティショップで手に入れたもの。「調理にはほぼ使ってないけれど、この佇まいが好きです」
長年使い続けているまな板 かれこれ40年は使っているというカッティングボード。「いつどこで買ったか覚えていないけれど、適度な厚みがあって大きすぎないのがいい。使いやすいからずっと手放せない」
〈無印良品〉と日本製の古いピーラー 食材に合わせて使い分けるというピーラーは複数持っている。なかでもお気に入りがこの2 つ。上の木製は日本の古いもの。下のステンレスは〈無印良品〉。軽くて使いやすい。
アルヴァ・アアルトの花瓶 ミッドセンチュリーデザインが好きで、アルヴァ・アアルトのヴィンテージ家具も自宅で愛用している。このフラワーベースは現行品だが、窓際に置いて草花を生ける用に。
〈SR〉のカップ&ソーサーと食器 1923年に設立された鉄道会社の一つ、サザン鉄道(Southern Railway)の食器類。列車内で使用されていたものか記念品として販売されていたものをジャンブルセールで入手した。
ステンレス製ポットとポットスタンド ヴィンテージのオールドホール社のステンレス製ポットはプロダクトデザイナー、ロバート・ウェルチのデザイン。鋳鉄のポットスタンドは、山形県にある〈鋳心ノ工房〉のもの。
母から贈られたカトラリー  マーガレットが幼少期を過ごしたサリー州。当時、家の近所にあった屋外プール“The Suger Bowl”の刻印の入ったカトラリーは「母親からもらったもの。毎日使っています」
『開化堂』の茶筒 茶葉の保存は京都の老舗『開化堂』の茶筒を使用。すべて職人による手作業で、使い込むほどに風合いが増していく。写 真はマーガレットへのギフトで、旅用に作られたもの。
自然素材の調理道具 よく使う木べらやトング、ハケなど木製の調理道具は機能性と実用性、デザイン性にも優れたアイテムで長年愛用している。同じ質感のものを一緒にまとめておくことで統一感も。
食材を保存するガラスの瓶 食材の保存はすぐに量がわかるように〝目に見える形〞で置いておきたいと、〈WECK〉などのガラス瓶や空き瓶を使用。 中には、コーヒー豆やレンズ豆、米などをストック。
〈オピネル〉とアノニマスのナイフ 使用頻度の高い道具として最初にあがったのがこの2 つ。左は〈オピネル〉のナイフで毎日使用している。先端が折れて しまった古いナイフは靴の泥落とし用に用途を変更した。
日本で金継ぎしたプレート 白と緑のプレートはアフリカのもの。水色の器はジャンブルセールで入手。どちらも割れたり欠けたりしたが、水色は金 継ぎ作家の黒田雪子に依頼。新たな魅力が生まれたという。

それぞれの道具に宿った 思い出を大切に長く使う。

「毎日使う道具は全部まとめて吊るしてあります。取りやすいように、その都度、探す必要のないように」

フライパンや鍋など、使用頻度の高い調理用品は壁掛けにして、すぐに手の届く場所に置いている。マーガレットがキッチンで使う道具もまた機能性を追求したものばかり。

「いつも使うナイフは〈オピネル〉のもの。もう一本はとても実用的で長年使っていたけれど、先端が折れてしまったの。今はブーツ用に。泥落としにちょうどいいんです」

ロバート・ウェルチの調理器具をはじめとするミッドセンチュリー期のプロダクト、チャリティショップやジャンブルセールで手に入れた器やカトラリー、日本を訪れた際に手に入れたものも。

「自分のショップでも取り扱っている〈鋳心ノ工房〉のポットスタンド、『開化堂』の茶筒も毎日使っています。お気に入りのピーラーは、〈無印良品〉と日本の古い木製のもの。日本の道具は、実用的な上に、佇まいがとても美しいと感じています」

気に入ったものはずっと長く愛用するのもマーガレットのスタイル。もう記憶にないほど昔、ジャンブルセールで見つけた〈SR〉のロゴの入ったカップや食器。〈SR〉とは、イギリスの鉄道会社サザン鉄道(Southern Railway)のことで、この鉄道で使用されていたものか、記念品として販売されていたもの。

「それから、これは毎日使っているカトラリー」と見せてくれたのは、アイボリーのハンドルのナイフとステンレス製のフォーク。レトロな雰囲気が漂うカトラリーには‶The Suger Bowl"という刻印が入っている。

「‶The Suger Bowl"というのは、私が子どもの頃に過ごしたサリー州の町にあった屋外プールの名前。おそらくそこのカトラリー。すべて母からの贈りものだけれど、彼女がどうやって、これらを手に入れたのかはいまだに謎なのよ」

カトラリーには、当時、近所にあって両親と訪れたそのプールのことや一緒に過ごした住まいの思い出が詰まっていると嬉しそうに教えてくれた。マーガレットが選び取り、長年使っているものには、機能性やデザイン性、見た目の良さだけでなく、ものを通して受け継がれる思いや記憶、その断片も内包されているものが多い。実際に母親から譲り受けた台所道具の数々は自身の娘に引き継いでいるものもあり、そんな〝暮らしの記憶〞も大切にしている。

「こうして過去と今を結ぶことができるなんて素敵でしょう。だから長く使える、愛せるものがあるということは、思い出も一緒に繋いでいけるということなんです」

そこには遠い昔にマーケットで見つけた古いガラスの容器も、誕生日や記念にもらった食器も、旅先で出合った調理道具もすべて当てはまる。

「振り返るとキッチンはどこかアトリエと似ています。毎日使う場所であり、機能性を重視しながら、思い出と結びつきのある道具に囲まれている。長く身の回りに置いて自分を形づくるもの。だからこそ自分らしくいられる場所なんだと感じます」

出典 andpremium.jp
マーガレット・ハウエル

1970年、自宅を拠点に製作をスタート。服は一時的なトレンドではなく、考え抜かれた生活の一部として、素材、つくり、スタイルを大切にする。メンズ、ウィメンズのウェア、ホームプロダクツも手がけ、ヨーロッパや日本全国にショップを展開。

photo : Yuki Sugiura edit & text : Chizuru Atsuta

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