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『鏡山旧錦絵』演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんの一押しステージ情報!

  • 2026.1.4

演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんのおすすめ作品をご紹介。今回は、『鏡山旧錦絵』をピックアップ。


パワハラ上司を成敗!? 仇討ち本懐に胸がすく

歌舞伎の世界を舞台にした映画『国宝』が空前の大ヒットを記録するなか、そのロケ地のひとつにもなっていた国立劇場は、建て替えのため2023年11月から閉館中。しかも昨今の物資高騰の煽りで建て替え工事の入札不調が続き、計画の見直しが行われて、再開場は2033年を“目指す”と発表されている。つまり、希望的観測でもあと8~9年は休館したままということ。まあオペラの殿堂として名高いドイツのベルリン州立歌劇場でさえ、当初計画の2倍の歳月と予算を費やし7年後にやっと再開したくらいで、何処も事情は大変なものだし、そもそもほとんどの国民にとって、別に支障はないことだろう。でも、国立劇場は、好事家のための古典芸能の公演場所というだけではなく、歌舞伎、文楽、日本舞踊、邦楽など、日本が誇る伝統芸能の保存と継承を、その大きな使命とする機関でもあるのだ。となれば10年の空白期間が日本文化の根幹に及ぼす影響は、実は小さくないはずで、『国宝』みたいな映画だって、そのうちつくれなくなるかもしれない。そんな危機感を共有しつつ、休館の間ふだんは歌舞伎を上演しないさまざまな劇場でアウェイ公演を続けている国立劇場の存在に、ぜひ目を留めてみてほしい。
 
2026年の初春公演は、オペラやバレエや現代演劇の専門劇場、新国立劇場で上演する『鏡山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)』。実際に起きた女性どうしの敵討ち事件をベースにした、見どころの多い歌舞伎だ。
 
大名屋敷で奥方や姫に仕える女中たちの首席の立場に君臨する局の岩藤と、次席の尾上。岩藤は、姫君が自分より尾上を重用することを妬んで、尾上に恥をかかせようと武芸の試合を申し出る。が、尾上の召使いのお初が助っ人に入ったことで、もくろみは失敗。岩藤の恨みはさらにエスカレートし、尾上のミスをねつ造した上に、皆の面前で糾弾し草履で打ち据えるという暴挙に出る。あまりの恥辱に耐えかねた尾上は、書き置きを残して自害。お初は岩藤を待ち伏せて敵を討ち、その功績で二代目尾上に格上げされる。
 
徹底的な悪党でラスボス感漂う岩藤と、まじめで節度がある故にいじめに苦しむ尾上、若く怖いもの知らずで上司思いのお初。三人のキャラクターが魅力的な、歌舞伎にはめずらしい女性中心の世界が展開する。江戸時代は、同じ境遇にある奥勤めをする女性たちが休暇で自宅に戻る宿下がりの時期にあてて上演され、大人気を博したそう。現代だって、お局の原形(!)岩藤が成敗されるラストに、溜飲が下がること請け合い。初芝居でスカッとして、一年を気持ちよく始めよう。

召使いお初(八代目尾上菊五郎)

国立劇場令和8年初春歌舞伎公演
通し狂言『鏡山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)』
出演=七代目尾上菊五郎、八代目尾上菊五郎、坂東彦三郎、中村時蔵、中村萬太郎、中村玉太郎、市村橘太郎、河原崎権十郎、市村萬次郎、坂東彌十郎、中村魁春 他
2026年1月5日(月)~27日(火) ※9日(金)・22日(木)は休演 新国立劇場 中劇場
(問)国立劇場チケットセンター  TEL:03-5352-9999

文=伊達なつめ

※InRed2026年1月・2月合併号より。情報は雑誌掲載時のものになります。
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