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セレブリティも愛してやまないレストラン、NOBUの始まり【松久信幸さんのフィロソフィー vol.1】

  • 2025.12.30

五大陸の全てに、自らの名を掲げたレストランを約70軒展開し、セレブリティを含む多くのファンを有する世界的シェフ、松久信幸さん。文化の違いを超えて各地で愛され続けるシグネチャーディッシュの数々は、正統な日本料理の本質を踏まえた創意にあふれる美味なクリエイションです。パイオニアとして尊敬を、成功者として称賛を集めてなお、「料理はハート」という真摯なポリシーを日々全身で体現。その万丈のライフストーリーから紡ぎ出されたリアルな人生哲学を、3回にわたってお届けします。 第1回は、1987年開店のマツヒサに始まったセレブリティと松久さんとの関係にフォーカスします。

松久信幸さん。 Hiroaki Ishii

NOBUができればその街は楽しくなる

<strong>White Fish Sashimi with Dry Miso 白身魚のサシミ ドライミソがけ<br></strong>南欧のNOBUを訪れた際に、現地でオリーブオイルが多用されるのを見て、ノブさんがひらめいたのが、「醤油とわさびだけでなく、オリーブオイルを刺身に使ってみよう」。オリーブオイルにレモンの代わりに柚子を調合したドレッシングを作り、仕上げにフリーズドライの味噌「Dry Miso」を添えて。味噌は乾かすとうま味が増すことからノブさんが発案した、オリジナルの調味料です。まさにテイスティで美しいシグネチャーデッシュ。¥3,200[サ別] Hiroaki Ishii

「38年前、ビバリーヒルズに『マツヒサ』をオープンしたときは、こんなに世界に広がるとは、また、そうしようとも思っていませんでした。ただ一つ一つやってきたことが、今につながっているんです。日本で寿司職人の仕事を覚え、ペルー、アルゼンチン、アラスカ、やがて世界中の食文化と出合ってビジネスを行い、現地の人たちと交流し…。この年齢になっても学ぶ機会のある立場にいることは、すごく幸せです。この頃よく昔を振り返るんですが、これまでの全ては無駄じゃなかった。全ての経験が今の自分を作り上げてくれている。心からそう思えます」

2025年秋にオープンしたNOBUローマ。 Hearst Owned

マツヒサ、NOBUという海外における日本料理の草分け的レストランのオーナーシェフ、松久信幸さん。今やその2ブランドは約70店舗、特にNOBUは北米、南米、ヨーロッパ、アジアなど五大陸に店を構えるほど、世界中で受け入れられています。ノブさんは年10カ月、世界の店舗を巡っているとか。

共同経営者で友人のデ・ニーロ、投資家メイヤー・テッパーと。ホテルへの進出もデ・ニーロの発案。 Hearst Owned

その今につながる1号店が、1987年開店のマツヒサ。オーセンティックでいて独創的なノブ流の日本料理が評判を呼び、ハリウッドの綺羅星のようなセレブリティたちも常連に。のちの共同経営者、俳優のロバート・デ・ニーロもその一人で、入店待ちの行列にはかのマドンナが並んでいたとも伝わります。

「マドンナも30年以上来てくれています。最近ではNOBUトウキョウに来てくれました。以前、僕の著書の刊行に寄せて『NOBUができれば、どれだけその街は楽しくなるか』とコメントをくれたんですが、店のスタッフの自信にもつながる言葉でしたから、うれしかったですね」

NOBUバンコクは眺望もその個性。ニューカイロ、マドリードの新店も進行中。 (C) Nobu Bangkok

現場で包丁を握ると同時に、運営面で生じる新しい課題への決断も迫られる。シェフ、経営者、両方の采配を求められる立場です。

「今はさすがに料理以外のことにも時間を割かなければいけません。ただそれでも、僕の頭や心を占めるのは料理です。寿司は、握るだけなら年数を重ねれば誰にでもできますが、一つのことを奥深く突き詰められるようになって初めてプロと言える。そして最も大事なのはハート。『料理はハート』だと僕はよく言うんですが、ハートがなければ何も始まらないんじゃないでしょうか」

【ラ・シエネガ通りから始まったNOBUの伝説】

開店当初のマツヒサの前で。 Hearst Owned

今や街に欠かせない場所となったマツヒサがあるのは、ロサンゼルスのレストラン激戦地、ラ・シエネガ通りです。その日仕入れた新鮮な食材をベストな形で提供したいと、客ごとに即興で料理を作る「おまかせ」のスタイル。そのファンになったロバート・デ・ニーロは、最初のアプローチからノブさんの準備が整うまで5年以上待って、温めていたニューヨーク出店の計画を実行。そこから世界を股にかける二人のパートナーシップが始まりました。

「NOBU TOKYO」
所在地/東京都港区虎ノ門4-1-28 虎ノ門タワーズオフィス1F
営業日/ランチ〈平日〉11:30~13:45(L.O.)〈土・日曜日、祝日〉12:00~14:00(L.O.) ディナー 18:00~21:00(ドアクローズ)
定休日/不定休
料金/ランチコース¥6,800、¥12,800 ディナーコース¥14,000、¥18,000、¥28,000
※[全てサ別]。アラカルトもあり。
TEL/050-3145-0011
URL/noburestaurants.com

初出:リシェスNo.54 2025年11月28日発売
PHOTOGRAPHS:HIROAKI ISHII
INTERVIEW:MAYUMI YAWATAYA
EDITING:YUKO KAMIYAMA

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