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「甲本ヒロト、鳥肌が立った音楽の原体験を語る」ニルヴァーナ、レッチリ…ロックの原点に見た“わけ分かんない感動”の正体

  • 2025.12.27

雑誌smartが創刊30周年を迎える2025年。そのアニバーサリーイヤー特別企画として、1990年代に数多くsmartの表紙を飾っていただいた方々に当時の話を伺う連載『Back to 90s』。最終回のゲストは、10月29日にニューアルバム『JAMBO JAPAN』をリリースするザ・クロマニヨンズの甲本ヒロト。1987年にザ・ブルーハーツでデビューし、ザ・ハイロウズを経て、40年近く音楽シーンでトップを走り続ける甲本ヒロトが見た90年代とは?

中学入学する前に買ってもらったラジオで“運命の出会い”

――smart30周年企画として、今日はいろいろ昔話をお伺いします。

甲本ヒロト(以下、ヒロト):いいですよ。覚えてないかもしれないけど(笑)。

――90年代の音楽シーンと聞いて何が思い浮かびます?

ヒロト:えーっと。90年代って、何があったかな。

――ニルヴァーナ、パール・ジャムなどのグランジが流行ったのが1989年から90年です。

ヒロト:おお。ニルヴァーナ、聞いてましたよ。パール・ジャムはそんなにだったけど。

――レッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)とかレイジ(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)のいわゆるミクスチャーロックがその後に流行りました。

ヒロト:あ、レッチリのほうが後なの? でも「Give It Away」って、80年代の終わりぐらいじゃない?(アルバム) 『Blood Sugar Sex Magic』の曲。僕、あれでどかーんときて、すごいバンドがいるなあと思った。ちょうど、ブルーハーツでアメリカを動いていたときに、ホテルで音楽番組を垂れ流していることが多くて、興味もなくボンヤリ見てたら、「Give It Away」と「Smells Like Teen Spirit」がほぼ同時期に流れたの。この2つだけ、めちゃくちゃかっこよかった。

「Give It Away」を見て、「この人たちとは話が合いそうだな」と思った。ブルースめちゃ好きなんだろうな、あと黒人のソウルとか、ルーツミュージックの人たちだなと思って、で、アルバム買ったらやっぱりロバート・ジョンソンの曲をやってたし、だよなぁって。だからレッチリは同世代の仲間という感じがした。

――ニルヴァーナはどうでした?

ヒロト:かっこいいと思ったよ。チアリーダーみたいな女の子が踊るMVがあるんだけど、それがめちゃよかった。ああ、この人たちも冗談好きなんだなぁと思って。歌詞の内容も冗談ぽかったし。

――ライブは見たんですか?

ヒロト:ニルヴァーナは見てないんですよ。レッチリは見た。素晴らしかったね。ジョン・フルシアンテがいるときがいいなあ。あの人は歴史に残る名ギタリストだよ。

――ブリットポップのブームもありましたよね。オアシスとかブラーとか。

ヒロト:ブラーはそんなにハマらなかったんだけど、いくつか面白いのがいたんだよ。プライマル・スクリームとかはいつ頃? プライマルも好きだし、あとステレオラブも好きだったな。ああいうアナログな感じが。あと、何だっけな……マニック・ストリート・プリーチャーズとかはもうちょっと前か。ちゃんと気づいてなかったけど。90年代、いいね。

――80年代ってロックンロールがあまり元気が良くなかったけど、90年になる前にまた元気になったというか。

ヒロト:そんな感じしますね。でも僕、あんまり時代は関係ないんですよ。あいつは歳とってるから昔の曲ばっかり好きなんだって言われそうだけど、12歳から昔の曲が好きだったから。12歳のときに当時流行ってる曲になんの興味もなかったけど、昔の60年代の曲を好きになって、そこから遡ってブルースを好きになって、どんどんどんどん遡っていくわけで。だから僕の感覚は12歳のときと変わってないと思います。

――中学のときにラジオから流れたマンフレッド・マンを聴いて感動したっていうエピソードですよね。

ヒロト:分かりやすいようにマンフレッド・マンって言ってるけど、本当のところ、何だったかはあやふやなんだよ。僕が衝撃を受けたときに、自分が音楽に衝撃を受けたとは気がつかなかったの。だって音楽に興味なかったんだもん。保育園のお遊戯の時間ってやつが耐えられなくて、あの屈辱感から始まって、そういうものが嫌いだった。人前で歌を歌うなんてみっともない、言語道断。踊ったり歌ったりなんて冗談じゃない、あんなものは罰ゲームだと思ってた。

だから外国の歌がラジオから流れてきても、これは在日外国人のためのプログラムで僕には関係ないと思って、全く聞いてなかった。それが、中学に入学する前に買ってもらったラジオをつけてたら、何かが流れてて、そしたら突然涙が、直角にビシャーッと出始めて、身体中に鳥肌が立って、畳をかきむしって 「ギャーッ」って叫んでて。ああ、とうとう気が狂ったなと思った。ま、後から考えたら単純に感動してたんだよね。

――(笑)。

ヒロト:それだけのことなんだけど、そんなに感動したことがなかったから。例えば、悲しい物語で泣いたりするのは感動の涙じゃなくて悲しみとか同情の涙でしょ。あとはスポ根アニメとかで主人公に感情移入して泣いちゃうとか。そういうのはあったけど、ただ意味もわからず突然ガーッとくる本物の感動を味わったのは初めてだったんだよ。

それで、番組の最後に「60年代のイギリスっていいですね」ってDJの人が言ったから、“60年代のイギリス”っていうキーワードだけを頼りにレコードを探しに行って、お目当てのビートグループに出会うんですよ、マンフレッド・マンとか(ローリング・)ストーンズ、ビートルズ、アニマルズ。そこからチャック・ベリー、ボー・ディドリー、マディ・ウォーターズに遡っていくんですけど。そのときは、60年代イギリスというキーワードしかないから、ロックだけじゃなくポップスもいっぱい聞いたんだけど、それもまた面白くて、余計広がった。それが僕の今のわけのわからないセンスに繋がってると思う。

――当時のポップスって?

ヒロト:トゥインクルっていうバブルガムポップみたいな女性歌手とか、ちょっと奇天烈なジョナサン・キングとか。それから60年代のイギリスの音楽はアメリカにルーツがあるんだなって分かって、アメリカの音楽も好きになったし。90年代からこんな話になったけど、何が言いたかったかというと、何年代って感覚は僕にはもともとないっていうこと(笑)。

――でも「俺は昔の音楽しか好きじゃないのかな」と思ってたらパンクが出てきて、同時代の衝撃を受けたんですよね?

ヒロト:そう!ビックリした。おんなじことが起きたのね、やっぱりラジオを聞いててガーンってきて、僕の体が同じように反応したんです。明らかに60年代じゃない、今の音なのにガンガンきてる。なんじゃこりゃって、奇跡が起きたと思って、それがセックス・ピストルズだった。

「わけ分かんない感動」さえあればいい

――たぶんそこでまたロックンロールの復権が起きたと思うんですけど。

ヒロト:理屈じゃ分かんないけど、僕の体の反応からするとそうとしか思えなくて。そのときは中学の2年生だったんだけど、「今、自分がやってもいいんだ」って思えたんですよ、そうしたらいてもたってもいられなくなって、親に、「僕、中学卒業したら家を出ます、バンドやります」って宣言したんです。もう中学出たら義務教育じゃなくなるから、生きようが死のうが俺の勝手、のたれ死んでも自分の責任だって言って。

僕は自分が間違えてないと思ってたから、反対するなら僕を説得してくれって言ったんですね。そうしたら親に顔面を殴られて、僕も殴り返したんです。いまでもそのときの手の感覚が残ってるけど、そのときに自分はやっちゃいけないことをやってしまったって気がついたんです。自分の主張は間違ってないけど、やったことは間違っている。だから親の言うことを聞こうと進学しました。

――その77年に受けた衝撃に近いものはその後ありましたか?

ヒロト:あんなデカいものはないです。でも、同じじゃないけど、そのレッチリの「Give It Away」を初めて聞いた瞬間とか「Smells Like Teen Spirit」に触れたときに似てるとは思った。

――そこでまたロックが復権したんでしょうかね。

ヒロト:思う思う。それは正しかったと思う。

――そして2000年以降はロックに元気がなくなった気もするんですが。

ヒロト:それでもいいバンドはいっぱいいるんじゃないかな? エイジアン・ダブ・ファウンデーションって何年?

――2000年ぐらいですかね。

ヒロト:あれ聴いたときも、イケてるなぁって思った。かっこいいなって。

――音楽もそうだけど、流行って周期説があるじゃないですか?それにロックンロールが当てはまるのかどうかは分かりませんが。

ヒロト:洋服なんかは、全く同じじゃないけどなんとか風っていうのが繰り返しくるっていうのは、分かりやすくあるんじゃないですか。ロックンロールの場合は、やっぱりスタイルじゃないんだよ。だから本当は今ヒップホップとか、あの連中からガツンとくるものが出てきて欲しいんですけどね。フォークギター1本でもいいし、なんでもいいんだけど、ガビンとくるロックンロール。

――ビースティ・ボーイズとかはヒップホップだけどパンクもやってましたけどね。

ヒロト:なんかでも、ヒップホップってベクトルが見えちゃうんだよなぁ。

――ベクトル?

ヒロト:何をやろうとするかが分かっちゃうんですよ。言いたいことが明確だったり。そこはどうでもいいんです、僕は。言いたいことが何かを別に知りたくないし、何やりたいかも知りたくない、ただ単純に、わけ分かんないけどいきなり涙が直角に出るような感動、それがあればいいんです。ヒップホップは、向かってる方向が見えちゃうんだよね。そういうものは本人の中にあればよくて、そうすると何か感じると思う。そう、わからなくていいから感じるやつが好きです。

――見えちゃうって、投げた玉がどこにくるか分かるってことですか?

ヒロト:いや、そいつがどっちに投げたいのかが見えるんです。どっちに投げたいのか、何をやりたいのかが。やりたいことなんてさ、分かんないよ。分かってたまるかよ、自分が何をやりたいのかなんて。ただ、やらずにいられないことをやるんですよ。どっちに飛んでいくかわかんないけど、投げずにはいられない衝動。

――やりたいことが見えると冷めちゃうんですかね。

ヒロト:理屈が見えちゃうと、なんかリミッターがかかっちゃうんだよ。ただの人間じゃん、こいつって思っちゃう。僕、お化けとか怪獣が好きなんだけど、ゴジラが好きなのは、これ例えとして合ってるのかな? ゴジラは時代とともにちょっとずつ変化したけど、初代ゴジラって何物か分からないじゃない?

――何だか分からないけど怖い存在でしたよね。

ヒロト:ただ怖い、ただ無茶苦茶する、それでおしまい。あのゴジラが僕は大好きなの。そのうち誰かだったり何かだったりを守るようになったり、ラストシーンで 「ゴジラは我々に何か大切なことを教えてくれたのかもしれない」ってメッセージが入ったりするじゃない? ああなっちゃうと、なんかなぁ。とにかくわけ分かんないことやって、無茶苦茶していなくなった初代ゴジラが大好き。僕は。

――『シン・ゴジラ』はどうでした?

ヒロト:シン・ゴジラ』は面白かった。

――『シン・ゴジラ』はもっとストレートにゴジラをわけの分からないものとして描いてましたよね。

ヒロト:あと、市川実日子さんもすごくよかった。いい映画見たなって気がした。

「ファッション誌を読むのは、そこに載ってない服を買うため」

――97年にはフジロックも始まって、ロックフェスが広まりました。普段は出演する側ですが、観客として行くこともあるんですか?

ヒロト:フジロックは大好きですよ。ニール・ヤングが来た年に観客として行ったんだけど。あれは、もう一生忘れられない。その日の昼間に見たパティ・スミスがあまりに素晴らしくて、もうお腹いっぱいだからニール・ヤング見ないで帰ってもいいやぐらいの気持ちで見たんだけど、2時間以上のステージで、途中ギターの弦が一本一本切れていって、最後の「Like a Hurricane」で1本だけ残った弦を弾きながら歌い始めたときにはどかーんって盛り上がった。ステージは2時間〜3時間だったけど、もっとやってほしかった。ここで死んでもいいからもっと見たいと思ったもん。

――じゃあ、それは久々のガツーンだった?

ヒロト:きましたねー、あれは。それで、ハイロウズはフジの1回目の年に出演して以来、何年間か参加できてなかったんだけど、このイベントならお願いしてでもやりたいって思った。

――さっき、流行の移り変わりの話が出ましたけど、そういうのって意識しますか?

ヒロト:いや、流行りを意識することはないけど、そういう服しか売ってなかったりするからね。

――昔のインタビューで「ファッション誌を読むのは、そこに載ってない服を買うため」って言ってましたよね。

ヒロト:ああ、そういう恥ずかしさはある。どっか照れがあるんだよね。今年の色はこれとか書いてあると、その色の服を掴もうとしたときに、これ書いてあったな、照れるなって、掴まない。ほんとはそれすら意識しないのがかっこいいんだけど、つい日和っちゃうんですね。それもダサいんだけど。

――スタイルは昔から変わらないですよね。

ヒロト:テイストがあるのかもしれない。でも今日はリングとかしてるけど、若い頃、20代の頃は何にもつけなかったよ。腕時計もしなかったし。全部嫌いだった。

――アクセサリーとかも。

ヒロト:嫌悪していた。

――無駄なものはつけたくなかった?

ヒロト:いや、おしゃれぐらいカッコ悪いことはないと思ってたから。おしゃれをするという行為がカッコ悪いと思ってたから。それも日和ってるんだよね。意識しすぎ。

――人の目を意識しすぎ?

ヒロト:そう、自意識過剰。

――意識しなそうですけど。

ヒロト:そう思われようとしてるんだよ(笑)。

――実は気にしいってことですか?

ヒロト:そう、気にし過ぎて、何だこいつ?みたいなこともある。昔、武道館でライブをやったとき、僕が前の日に着てた服のまま寝て、起きて、そのままステージに立ったのを驚かれたことがある。鏡も一度も見ないで、髪の毛も寝ぐせのまんまだったらしくて。

――めちゃくちゃかっこいいじゃないですか。

ヒロト:それは、僕なりのカッコつけだったんですよ。カッコつけてると思われたくないから、寝て起きたまんま行ったっていう。ライブの衣装を着て寝たわけじゃないですよ。あとは、単に洋服をそんなに持ってなかったし。

――前にレイ・デイヴィスが「ロックンロールっていうのは朝起きたときに一番上に積んである服を着ることだ」って言ってましたけど。

ヒロト:それもそういうカッコつけ方なんだと思う。だってその発言、かっこいいじゃないですか。そういうことです。レイ・デイヴィスも大好きです。「キンクス・ガット・ミー」という曲もあるよ。

――デニムはラモーンズを意識してるとも言ってましたけど。

ヒロト:ラモーンズっていうかね、正確にいうとアンダートーンズなんです。中学生のときにまだ全然知らなかったアンダートーンズのアルバムをジャケ買いしたんだけど、そのジャケットの写真が、スターが着る服じゃなく、本当に普段着のように見えたんです。まさに、前の日から着てた感じ。

ちょっと前の『グッド。ヴァイブレーション』っていう映画で、当時のアンダートーンズが活動していたシーンが描かれてるんだけど、まわりのバンドが「俺たちの中で一番ダサい服を着てるあいつらがなんであんなに人気なんだ」って笑ってるの。本当にそうだったんだって(笑)。もしかしたらブルーハーツのときの僕の出立ちはアンダートーンズだったのかもしれない。アンダートーンズの1stアルバムを見てみて、何か通じるものがあるから。(セックス・)ピストルズでもクラッシュでもない。

最後に聞く「90年代ってどんな時代でしたか?」

――ピストルズ的な、ガーゼシャツとかボンデージパンツにはいかなかったんですか?

ヒロト:ボンデージは履いた。ガーゼシャツも友達が持ってたものを譲ってもらって着たことはある。デビュー前だね。でもあのときのガーゼシャツは、のちの日本のパンクショップで売ってたようなやつじゃなくて本物の、ヴィヴィアン(・ウエストウッド)のやつだったと思うよ。

――まだ持ってます?

ヒロト:どっかにあるんじゃないかなー。分厚いんだよ、ガーゼが。ペラペラじゃないんだよ。

――ジョニー・ロットンのファッションに憧れた人は多かったですけどね。

ヒロト:アンダートーンズには誰も憧れなかったけど、僕、見たときに、「これだ!」と思った。

――何かがきたんですね。

ヒロト:ビンビンにきた。今でも1stアルバムはよく聞くし、「teenage kicks」って曲はバイブルですね。歌い出しの文句が“10代の夢を舐めんなよ”っていうの。

――かっこいいですね。

ヒロト:カッケー。10代の夢は手強いぜ、やっつけてみろっていう。やっつけられないんだよ、10代の夢は。それを10代のときに聞いたからね。

――他にファッション的に憧れた人っていますか?

ヒロト:見た目でかっこいいと思ったのって、誰だろう。あ、ストラングラーズも好きだった。ヒュー・コーンウェルみたいになりたかったけど、ヒュー・コーンウェルになるにはパーマかけなきゃいけなくて、僕の髪の毛はまっすぐだから無理だった。ヒュー・コーンウェルの、あのリアルな労働者風の髪型がカッコよかった。何もしてない、一晩留置場に入れられてたみたいな髪型。

――最近のファッション傾向はどんな感じですか?

ヒロト:あんまり買いに行かなくなりましたね。何人か友達ができて、そういうところを覗いたりとか。ロックTシャツはいっぱい欲しいんだけどね、昔みたいに売ってないし、かっこいいやつはヴィンテージで高いし、それも違うんだよな。

――ヴィンテージTシャツのブームがきましたからね。

ヒロト:ま、かっこいいから好きなんだろうし、ブームになるっていうことにはちゃんと理由があって、それは素敵なことだと思うけどね。僕はブームだろうがなんだろうが、ロックTシャツ好きだから。

――そういえば90年代はストーンズが『Voodoo Lounge』をリリースしましたね。

ヒロト:いいアルバムですね。あれはすごくいいと思う。もしかしたら、さっきのロックンロールが90年代に元気になったことが、ストーンズにも影響を与えた可能性がある。ミックもキースも空気をとらえる感覚はすごいから。確か『Voodoo〜』の前か後にミック・ジャガーが『Wondering Spirits』を出したんだよ。どっちが先だっけ?ちょっと調べてみて。僕の感覚では『Wondering〜』なんだけど。

――『Wondering Spirits』は93年でした、『Voodoo Lounge』が94年。

ヒロト:でしょ!その時系列が大事なんです。ミックジャガーのソロに、僕、全然期待してなかったの。それまでのソロ聴いて、やっぱりストーンズのほうがいいなと思ってたけど、『Wondering〜』聴いたら、めちゃくちゃよくて、これならストーンズいらないじゃんって思った。ミック1人でこれできるなら、もしかしてストーンズのメンバーが足引っ張ってんじゃないかと思ったぐらい。でも次の『Voodoo〜』が出たら、さらにすごかった。ってことはミック自身がそのときにもう上がってきてたんだよ。で、バンドが同じようにバチって決めた。だから『Voodoo〜』はいくつかあるストーンズのピークの一つだと思う。最高です。

――当時の若いバンドからの影響もあっただろうと。

ヒロト:かもしれない。空気を感じてたかもしれない。ライブも初来日より遥かによかったし。

――無理やりまとめますが、では90年代ってどんな時代だったと思いますか?

ヒロト:あの、捨てたもんじゃねえなと思わせてくれた時代です。諦めなくていいんだな、よし、俺たちもいっちょうやったるかっていう気にさせてくれたのが90年代です。

甲本ヒロトが表紙を飾った過去のsmart

1998年5月4日&18日号

1999年6月14日号

2001年9月17日号

2002年11月25日号

Profile/甲本ヒロト(こうもと・ひろと)
1963年生まれ。1987年にザ・ブルーハーツのボーカリストとしてシングル「リンダリンダ」、1s tアルバム『THE BLUE HEARTS』でメジャーデビュー。1995年にラストアルバム『PAN』を発表し、解散したのちに、同年、真島昌利らとザ・ハイロウズを結成。8枚のアルバムを発表し、解散。2006年にザ・クロマニヨンズを結成する。メンバーは甲本ヒロト、真島昌利、小林勝、桐田勝治。10/29に18 thアルバム『JAMBO JAPAN』が発売される。また、11月からは全国ツアーもスタート。

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