1. トップ
  2. お仕事
  3. 『億単位』の研究プロジェクトを任されたら人はどうなるのか?それがピンチに陥ったら?【前編】

『億単位』の研究プロジェクトを任されたら人はどうなるのか?それがピンチに陥ったら?【前編】

  • 2025.12.25

億単位プロジェクト、その響きだけが一人歩きしている

現在私は、いわゆる「億単位の予算」が動くプロジェクトのリーダーという立場で仕事をしています。所属している企業は、その業界ではそこそこの大手。世界でみても上位になるそうです。この一文だけ切り取られると、どうにも景気の良い話に聞こえるらしく、「すごいですね」「花形じゃないですか」「会社のエースですね」などと、身に余る言葉をかけていただくこともあります。が、ここで一度、声を中くらいのボリュームで訂正しておきたい。全然、花形ではありません。むしろ、派手さとは対極の場所で、毎日コツコツと胃をキリキリさせながら進めている、かなり地味な役回りです。

私の脳みそは最新版ではなく、だいぶ旧型です

そもそも、私自身のスペックが高くありません。最新OS搭載のハイスペック脳みそではなく、例えるならポケベルからガラケーに移行するかどうかで一度立ち止まったタイプの脳。いや、正直に言うと黒電話寄りかもしれません。そんな私が入社した当初、研究員として配属されたのは中央研究所でした。何を間違えたのか、超花形の部門です。しかーし!担当していたのは誰も振り向かない、かなりマニアックで地味な分野。「これ、将来どう使うの?」と聞かれても、即答できないテーマを、真面目にコツコツ続ける日々でした。

研究から一転、工場で知った「最後の砦」という現実

ほどなくして、転居を伴う異動が決まり、新しい部署では研究というより、ほぼ工場勤務のような仕事に就くことになります。製品は研究室の中で完結せず、そのままお客様の手に渡る。つまり、不具合が出れば言い訳は効かない、まさに最後の砦。 ここで私が学んだのは、「理論的に正しい」よりも「確実に動く」ことの重みであり、現場で汗をかく人たちの視点を知らずして、技術は語れないという現実でした。

取るに足らない改良が、思わぬ評価につながる

周囲の方々に恵まれ、進められることはすべて進めたつもりです。派手なブレイクスルーではなく、一緒に作業する人がほんの少し楽になるような、小さな技術改良を積み重ねる毎日。他人から見れば「そんなの誤差では?」と言われかねない内容だったと思います。それでもある日、「おっ、あの人、地味だけど面白いことやってるな」と、ふと引っかけてもらえたのです。なんとなんと、私に人事異動が通達されたのです。

再び研究員、そしてAIという追い風

4年前、再び研究員に戻ることになり、そこで取り組んだテーマが、プログラミングやAIを活用する技術でした。この分野、正直に言います。結果が出やすい。工場の改善や基礎研究に比べると、成果が数字や形になって現れるスピードがまるで違います。良くも悪くも、時代の追い風が吹いていました。んでもって、今になって思うこと。

鬼のように遅い進捗でも、続けていた話

実は私、2013年頃から少しずつ数学をやり直し、統計を学び直し、産休から復帰した後にはプログラミングを戦略的に学び始めていました。進捗は驚くほど遅く、天才型とは真逆。それでも、とにかく細く長く続けました。気づけば「上手ではないけれど、長くはやっている人」になっていたのです。その頃、一緒に研究していた後輩がいました。これがまた、たまたま、いや本当に「たまたま」という言葉では足りないほど、超絶に優秀な人材でして、理解も早く、手も動き、こちらが半分説明する前に「つまり、こういうことですよね」と先回りしてくるタイプ。私と彼で二人三脚のように進めた研究は、驚くほどテンポよく成果が出て、社内でも「あのテーマ、最近すごいらしいよ」と、ちょっとした噂になるほどでした。正直、ノリに乗っていました。ようやく長い下積みが報われた気がして、「あ、もしかして今、仕事が楽しいフェーズなのかもしれない」と、珍しく前向きな気持ちにもなっていたのです。人事評価は、拍子抜けするほど、あっさりと、ごくごく平凡なものでした。彼は迷いませんでした。

「ここではやっていけません」と、静かに会社を去っていきました

分かる。ものすごく分かる。というか、私自身も、そのとき本気で「辞めたい」という言葉が頭をよぎっていました。ただ、辞めなかった。いや、正確に言うと、辞められなかった。そして皮肉なことに、彼が去ったあと、私のところに、さらに大きな話が転がり込んでくることになるのです。それが、まさか「億単位の予算を動かすプロジェクト」につながるとは、このときは、まだ知る由もありませんでした。後半に続きます!

ぽにさんのブログ「ともばたけ - 共働きに奮闘するお家ブログ」はコチラ

元記事で読む
の記事をもっとみる