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2000光年先に「レモン型」の奇妙な系外惑星を発見

  • 2025.12.25
レモン型惑星のイメージ画像/ Credit: University of Chicago(2025)

宇宙には、私たちの常識を軽々と飛び越える天体が存在します。

NASA(アメリカ航空宇宙局)のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による最新観測で、地球から約2000光年離れた場所に、レモンのような形をした奇妙な系外惑星が存在することが明らかになりました。

その姿だけでなく、大気の成分や誕生の経緯までもが謎に包まれており、研究者たちは「これまでに見たことのない惑星」だと口をそろえています。

研究の詳細は2025年12月16日付で科学雑誌『The Astrophysical Journal Letters』に掲載されています。

目次

  • レモン形に引き伸ばされた惑星と異様な大気
  • 惑星なのか、それとも星のなれの果てか

レモン形に引き伸ばされた惑星と異様な大気

この系外惑星は「PSR J2322-2650b」と呼ばれ、質量は木星とほぼ同じです。

しかし、その姿は球形ではなく、強い重力によって引き伸ばされたレモン形をしています。

原因は、この惑星が「ミリ秒パルサー」と呼ばれる高速回転する中性子星のすぐ近くを回っていることにあります。

恒星との距離はわずか約160万キロメートルで、1周するのにかかる時間はわずか7.8時間しかありません。

ウェッブ望遠鏡は赤外線で宇宙を観測しますが、この中性子星は主にガンマ線などの高エネルギー放射を放っているため、恒星のまぶしさに邪魔されず、惑星の大気を詳細に調べることができました。

その結果、研究チームは驚くべき事実を発見します。

大気中に、水や二酸化炭素、メタンといった一般的な分子がほとんど見られず、分子状炭素(C2やC3)が大量に存在していたのです。

さらに、この炭素は惑星の内部で高圧にさらされ、ダイヤモンドとして結晶化している可能性も示唆されています。

惑星なのか、それとも星のなれの果てか

この天体が研究者を悩ませている最大の理由は、「どうやって生まれたのか」がまったく分からない点にあります。

通常の惑星形成理論では、これほど炭素に極端に富んだ組成は説明できません。

また、恒星が削り取られてできた天体である可能性も検討されましたが、核物理学的に「ほぼ純粋な炭素」が生じるとは考えにくいとされています。

チームは、この系が「ブラックウィドウ型」と呼ばれる特殊な連星系である可能性に注目しています。

これは高速回転するパルサーが、近くの小さな伴星を長い時間をかけて削り取る系です。

この過程で、かつては恒星だった天体が、核融合を行えないほど小さくなり、惑星と恒星の境界に位置する存在へと変化した可能性があります。

内部で炭素と酸素が結晶化し、軽い炭素だけが上層へ浮かび上がることで、現在の奇妙な大気が生まれたのかもしれません。

この「レモン型惑星」は、惑星とは何か、恒星とは何かという根本的な問いを突きつけています。

誕生のシナリオはまだ決着がついておらず、研究者自身も「分からない部分が多いこと」を認めています。

しかし、その未知こそが科学を前進させる原動力でもあります。

2000光年彼方に浮かぶこの奇妙な世界は、宇宙がいかに多様で、予測不能な場所であるかを、あらためて私たちに教えてくれているのです。

参考文献

Ludicrous Lemon-Shaped World Is Like Nothing We’ve Ever Seen
https://www.sciencealert.com/ludicrous-lemon-shaped-world-is-like-nothing-weve-ever-seen

NASA’s Webb telescope finds bizarre atmosphere on a lemon-shaped exoplanet
https://news.uchicago.edu/story/nasas-webb-telescope-finds-bizarre-atmosphere-lemon-shaped-exoplanet

元論文

A Carbon-rich Atmosphere on a Windy Pulsar Planet
https://doi.org/10.3847/2041-8213/ae157c

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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