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「加熱用カキ」を誤って生のまま食べてしまった…どんなリスクが生じる?症状出たときに必要な“応急手当”【専門医が解説】

  • 2025.12.25
加熱用のカキを誤って生のまま食べてしまった場合のリスクとは?
加熱用のカキを誤って生のまま食べてしまった場合のリスクとは?

冬によく食べられる魚介類の一つが「カキ」です。スーパーに行くと生食用のカキや加熱用のカキが売られています。ところで、ネット上では「加熱用のカキを誤って生のまま食べてしまった」という声が上がっています。

もし加熱用のカキを生のまま食べてしまった場合、どのように対処する必要があるのでしょうか。生食用のカキと加熱用のカキの違いも含め、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック(大阪市天王寺区)院長で総合内科専門医、消化器病専門医、内視鏡専門医の安江千尋さんに聞きました。

症状が出たときは脱水に要注意

Q.市販のカキは生食用と加熱用があります。これらはどのような違いがあるのでしょうか。

安江さん「市販のカキの『生食用』と『加熱用』の違いは、鮮度や品質の優劣ではなく、衛生管理の基準にあります。カキは海水を大量に取り込みながら成長するため、海水中に存在する細菌やウイルスを体内に蓄積しやすい性質があります。特に蓄積しやすい代表的なウイルスとしてノロウイルスが挙げられます。

生食用のカキは、採取する海域が生食に適していると指定されていたり、出荷前に清浄な海水で一定時間飼育する人工的な浄化処理が行われたりするなど、生で食べることを前提とした厳しい衛生管理がされています。

一方、加熱用のカキは『十分に火を通して食べる』ことを前提としており、生食用ほど厳密な管理工程を経ていない場合があります。そのため、見た目や新鮮さだけでは安全性は判断できず、『加熱用』と表示されたものは必ず加熱調理が必要です」

Q.加熱用のカキを誤って生食した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。また、生食用のカキを加熱した場合はいかがでしょうか。

安江さん「加熱用のカキを生のまま食べてしまった場合、感染性胃腸炎のリスクが高まります。特に注意が必要なのがノロウイルスで、非常に少量でも感染し、激しい嘔吐(おうと)や下痢、腹痛を引き起こすことがあります。他にも細菌による食中毒の可能性があります。

生食用であっても『必ず安全』というわけではなく、体調や免疫状態、摂取量などによっては感染性胃腸炎を発症することがあります。

一方、生食用のカキを加熱して食べること自体は全く問題ありません。中心部まで十分に加熱すれば、ウイルスや細菌は失活し、安全性はさらに高まります。一般的には、中心温度85~90度で1分30秒以上の加熱が目安とされています。『生食用=生でしか食べられない』という誤解もありますが、加熱しても味や栄養面で大きな問題はありません」

Q.もし加熱用のカキを誤って生のまま食べてしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。症状が出たときに必要な応急手当について教えてください。

安江さん「加熱用のカキを誤って生で食べてしまっても、すぐに行える予防的な治療や薬はありません。無症状の場合は、過度に不安になり過ぎず、まずは経過観察が基本となります。

ノロウイルスなどの潜伏期間はおおむね24〜48時間とされているため、この期間は吐き気や嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの症状が出ないか注意しましょう。症状が出た場合に最も重要なのは脱水の予防です。水や経口補水液を少量ずつ、小まめに摂取してください。嘔吐や下痢が激しい場合、高熱や血便がある場合、ぐったりして水分が取れない場合、高齢者や妊娠中の女性、基礎疾患のある人に症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。家庭内感染を防ぐため、症状がある間は感染者本人が調理を避け、手洗いを徹底することも重要です」

Q.加熱用のカキを誤って生のまま食べる事故は多いのでしょうか。

安江さん「『加熱用のカキを誤って生で食べた』というケースだけを集計した明確な全国統計は多くなく、正確な頻度を示すのは難しいのが現状です。ただし、カキは冬場に家庭や飲食店で食べる機会が増えるため、表示の見落としや『新鮮そうだから大丈夫』『少量なら平気』といった誤解から、リスクのある食べ方をしてしまうケースは一定数あると考えられます。

実際、カキはノロウイルス食中毒の原因食品として、毎年、自治体や医療関係者による注意喚起が行われています。特に自宅調理やバーベキュー、酒席などでは加熱が不十分になりやすく、生食事故につながることがあります。最も確実な予防策は、購入時に表示を確認し、『加熱用』と書かれているカキは必ず中心まで十分に火を通すことです」

オトナンサー編集部

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