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小島慶子さん、心配って実は何も生まない。『呑気に過ごす〝ナマケモノ〟精神が吉!』

  • 2025.12.22

エッセイスト、メディアパーソナリティの小島慶子さんによる揺らぐ40代たちへ「腹声(はらごえ)」出して送るエール。今回は「2026年の目標」について。

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小島慶子さん

1972年生まれ。エッセイスト、メディアパーソナリティ。2014〜23年は息子2人と夫はオーストラリア居住、自身は日本で働く日豪往復生活を送る。息子たちが海外の大学に進学し、一昨年から10年ぶりの日本定住生活に。

『呑気に過ごす〝ナマケモノ〟精神が吉!』

初夢、書き初め、初詣。2026年の目標はなんですか。今年の干支はお馬さん。颯爽と駆け抜ける一年、いいですね。でも私の目標はナマケモノ。そう、木にぶら下がっているあれです。

神社仏閣では、ついつい即効性を求めてしまう人も多いはず。今月いい仕事が来ますように…… 今年こそ目標達成できますように…… とか。でもご利益って、だいぶ時が経ってからふと振り返った時に気づくもの。実は悩んでいる時にもいろんなものに恵まれていたんだなーとか、あの時の苦労はその後の仕事で役に立ったなとか、遅まきながらわかることってありますよね。

神様や仏様がミラクルパワーで幸運を恵んでくれることも、もしかしたらあるのかもしれないけど、多くの場合は年の功で人生の読み方が変わった結果、なんだ自分、割とうまくいってるじゃん! と思えるようになるんじゃないかと思います。より広い視野や、異なる視点で自分を眺めることができるようになった時に、もともと手にしていたものの貴重さやありがたみに気づくのです。

仕事にも私生活にも思い悩んで将来を悲観していた20代を思い出すと、あんなに心配しないで、もっと呑気に楽しく過ごしていればよかったなーと思います。細かいことを気にせず、もっと自分の興味のあること、心地いいことを大事にすればよかった。できれば今タイムマシーンで飛んでいって、気楽に生きていいんだよと悩める慶子に言ってあげたいです。世間知らずだったから、自分が恵まれていることにも無自覚でした。他人と比較してばかりで、もったいなかったなあ。

心配って、何も生まないんですよね。私が今こうしていられるのは、過去にたくさん心配したおかげではなくて、いろんな出会いや巡り合わせがあって、多くの人に助けてもらったおかげ。その出会いや巡り合わせもウジウジ悩んだから得られたわけではなく、日々仕事をしている中で頂いた偶然のご縁です。だったら、心配したり悩んだりした時間を違うことに使っていればよかった! と心底思います。

小さなことにも感謝して機嫌よく流れに身を任せていれば、どこかには流れ着く。住めば都という言葉もあります。しかしついつい心配してしまうのが性分というもの。だから私は、ナマケモノをお手本にしているのです。

ナマケモノは、その名の通りとっても動きの少ない動物です。動作もめちゃくちゃスロー。でも意外にも、泳ぐのが得意なのだそうです。木からボチャッと川に落ちても沈まず、上手に流されて、辿り着いた岸の木にゆっくりのぼる。無駄な抵抗はせずに、身を任せてサバイブするのだとか。なんと省エネで平和な生き方でしょう。怠けているのではないのです。動き回って生き残るのとは異なる戦略なのですね。ちなみにナマケモノは普段あまりにもじっとしているので体に苔が生えてしまうのですが、その苔をおやつにして生きています。サステイナブル!

以前、ある経営者がこう話してくれました。「事業をやっていると、いろいろ気掛かりで夜眠れないことがある。でもその時に思い出すんだ。これまで大変な時にもなんとかなってきたんだから、きっと今回もなんとかなるさ、って。でね、本当になんとかなるんだよ」。キャリアを積むと、思い込みではなくて実体験として「苦労もしたけど、なんとかなった」という自信があります。それが心の支えになるという話には、なるほど確かになーと納得したのでした。ジタバタするより、肩の力を抜いて自分を信じる。これはいろんな経験を積んだからこそできることでしょう。40代以降は、そんな流され上手のお年頃ですね。

ナマケモノ的サバイバルで肝心なのは、現状が「実はなんとかなっている」と気づく力ではないかと思います。水に落ちても慌てずに浮いていれば、水を飲まずに済みます。私は心配性なので先のことばかり考えて焦ったり不安になったりするのですが、最近はようやく今自分が手にしているものを数えるところから始められるようになりました。

まずは、楽に息を吸って吐くことができることを確認します。昔、ひどい風邪を引いた時に鼻呼吸が全くできなくなり、喉も腫れ上がって十分に息が吸えず、それはそれは辛かったのです。普通に息が吸えて吐けるってなんてありがたいことなんだ!! と思ったあの時を思い出し、すうはあできる幸せをゆっくり味わいます。その気持ちのいいこと。そして家族の顔を思い浮かべる。すると、現状に感謝する気持ちが湧いてくるのです。

頭の中はいつも先走って、今ここにいる自分を忘れてしまいます。たてがみを靡かせて未来へと駆け抜けるのもかっこいいけど、体に生えた苔をもぐもぐ味わいながら、静かにぶら下がっていられる平穏を嚙み締めるのもいいものです。年末年始の大忙しが落ち着いたら、そんなナマケモノの気持ちでおうちの中を眺めてみてください。きっと重ねた年の分だけ、自分を信じていい気がしてくるはずです。

健やかな楽しい年になりますよう!

文/小島慶子 撮影/河内 彩 ※情報は2026年1月号掲載時のものです。

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