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50億年後、太陽が滅亡した後の太陽系はどんな状態になるのか?

  • 2025.12.20
白色矮星を中心に木星軌道の距離をガス惑星が周回する星系のイメージ
白色矮星を中心に木星軌道の距離をガス惑星が周回する星系のイメージ / Credit:W. M. Keck Observatory/Adam Makarenko

私たちの太陽は、残りの寿命がおよそ50億年程度だと予測されています。

最後のとき太陽は、木星軌道近くまで膨張してその内側にある惑星を飲み込み、その後は地球サイズまで収縮して核だけを残した白色矮星になります。

そんな状態になった太陽系を私たちが目にすることはありませんが、ハワイのケック天文台は、そんな太陽が失われた後の太陽系にそっくりな状態の星系を2021年に観測しています。

この星系では、白色矮星を中心に、太陽系の木星軌道の距離に木星に似たガス惑星が周回しており、それより内側の惑星は失われているという。

研究の詳細は、2021年10月13日付で科学雑誌『nature』に掲載されています。

目次

  • 太陽系の最後
  • 未来の太陽系と同じ運命をたどった星系

太陽系の最後

赤色巨星となった太陽で焼き尽くされる地球の想像図
赤色巨星となった太陽で焼き尽くされる地球の想像図 / Credit:Wikipedia

恒星は質量によって運命が変わります。

太陽質量の約8倍以下の恒星(主系列星)は、寿命が約100億年程度とされていて、寿命が尽きると大きく膨張し、その後は地球以下の大きさの白色矮星という高密度の核だけを残し、予熱で輝く星になります

このサイズの星は超新星爆発は起こしません。

太陽系は誕生して45億年近くが過ぎているため、あともう50億年経つと、太陽は寿命を迎えることになります。

このとき太陽は木星軌道近くまで膨張して、地球も飲み込まれてしまいます。

100億年で太陽が膨張するのは、そのくらいの期間で内部の水素を使い果たしてしまうためです。

太陽は水素の核融合によるエネルギーで圧力を高め巨大な自重で潰れるのを防いでいます。

核融合できなくなった太陽は、自重で潰れていき内部の温度が高まっていきます。

するとその熱で外層に残った水素が核融合を始めるため膨張するのです。

しかし、それは長くは続きません。結局外層を吹き飛ばしてしまい、最後は核だけが残るわけです。

こうした予想はありますが、その後の太陽系は実際どのような姿になるのでしょうか?

オーストラリアのタスマニア大学などの研究チームは、そんな未来の太陽系にそっくりな状況となった星系を、ハワイのマナケイア山頂にあるW.M.ケック天文台で検出しました。

その星系は、天の川銀河の中心付近に位置していて、白色矮星の周りを木星に近い軌道で巨大ガス惑星が回っていたのだといいます。

これは太陽が死んだ後も木星や土星などの惑星は生き延びる可能性を示唆しています。

未来の太陽系と同じ運命をたどった星系

チームは最初、重力マイクロレンズ法と呼ばれる手法を使って、この惑星を発見しました。

これは惑星と、それよりずっと手前にある重い天体、地球が一列に整列したとき発生する拡大現象です。

そこで、チームはこの惑星を照らしている主星を探そうとしましたが、それが思いのほか暗かったため戸惑ったといいます。

データの分析などで、これはその後、白色矮星を周回している惑星だと判明しました。

そしてこの発見が、私たちの太陽のような主系列星が死んだあと、その星系がどうなるかを知る、重要なサンプルであることがわかったのです。

地球は太陽に近いため、太陽が死を迎えたとき、赤色巨星として膨張する太陽から逃れることはできないでしょう。

しかし、太陽から離れた、木星や土星ならこの災厄を生き延び、その後も白色矮星となった太陽の周りの軌道に留まることが可能なようです。

下の画像は発見された白色矮星で起きた状況を再現したアニメーションです。

https://player.vimeo.com/video/629600608?h=921e8e2eb4&title=0

A Crystal Ball into our Solar System’s Future from Keck Observatory on Vimeo.

木星に似た巨大ガス惑星は、太陽から遠い軌道を回っているため、この爆発的な出来事から生き延びています。

主星は水素を燃やし尽くし、その後、崩壊するとき赤色巨星へと膨らんだ後、地球とほぼ同じ大きさ(ただし質量は太陽の半分近くある)の、熱くて高密度のコアだけを残します。

白色矮星は予熱で輝く暗い天体なので、非常に検出が困難です。

しかし、ケック天文台はレーザーガイド星補償光学系システムと近赤外線カメラ(NIRC2)という装置を組み合わせて、高解像度の近赤外線画像を撮影し、この新しく発見された白色矮星と、その外側の惑星を分析することに成功しました。

この分析によると、中心の白色矮星は太陽質量の約60%であり、生き残った巨大ガス惑星は木星より約40%大きいものだったといいます。

研究者は、はるか未来の話とはいえ、もし太陽の最後の日まで人類が生き延びていたとしたら、木星や土星の衛星へ避難すれば、人類は太陽の最後を眺めつつ、生き残ることができる可能性があるようだと話します。

もちろん、このように太陽の死を木星のような惑星が生き延びることが、どの程度一般的な出来事なのかまだなんともいえません

今後も、似たような星系が見つかっていくことで、これがどの程度珍しいことなのか、あるいは当たり前のことなのか次第に明らかになっていくでしょう。

あと50億年も滅亡せずに生き延びて、木星の衛星から太陽の最後を眺める人類が果たしているのでしょうか?

参考文献

A crystal ball into our solar system’s future
https://www.keckobservatory.org/white-dwarf-system/

元論文

A Jovian analogue orbiting a white dwarf star
https://www.nature.com/articles/s41586-021-03869-6

ライター

海沼 賢: 大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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