1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 古人類化石「リトルフット」、新種人類の可能性が浮上

古人類化石「リトルフット」、新種人類の可能性が浮上

  • 2025.12.17
リトルフットの頭蓋骨化石/ Credit: commons.wikimedia

1980年に南アフリカで発見された古人類化石「リトルフット(Little Foot)」

この極めて保存状態の良い化石が、これまで考えられてきた既知の種ではなく、まったく新しい人類の仲間だった可能性があると、豪ラ・トローブ大学(La Trobe University)により発表されました。

長年続いてきた分類論争に、改めて大きな疑問符が投げかけられています。

研究の詳細は2025年11月29日付で科学雑誌『The American Journal of Biological Anthropology』に掲載されました。

目次

  • 最も完全な古人類化石「リトルフット」とは
  • 「新種の人類」の可能性が浮上

最も完全な古人類化石「リトルフット」とは

リトルフットは、南アフリカのステルクフォンテン洞窟で発見された古人類化石で、現在知られている中でも最も完全なホミニン(人類系統)骨格とされています。

正式な標本番号は「StW 573」で、最初の発見は1980年にさかのぼります。当初見つかったのは、足首にあたる4つの小さな骨でした。

これが「リトルフット」という愛称の由来でもあります。

リトルフットの頭蓋骨化石/ Credit: commons.wikimedia

これらの骨は長らく保管されたままでしたが、古人類学者ロナルド・クラークによって分析され、アウストラロピテクス属のものであると判断されました。

1997年にはクラーク率いる研究チームが再び洞窟を調査し、岩壁に半ば埋まった非常に完全な骨格を発見しました。

ただし、この化石はコンクリートのように硬い岩に包まれており、完全な発掘と分析には20年以上の歳月を要しました。

その間、リトルフットは「アウストラロピテクス・アフリカヌス」なのか、それとも別種なのかという議論の中心に置かれてきました。

「新種の人類」の可能性が浮上

こうした長年の議論に一石を投じたのが、ラ・トローブ大学の古人類学者ジェシー・マーティン博士が主導した最新研究です。

研究チームは、リトルフットを「アウストラロピテクス・アフリカヌス」の標本および、「アウストラロピテクス・プロメテウス」とされてきた唯一の化石「MLD 1」と詳細に比較。

3次元スキャナーを用いた高精度なデジタル再構築の結果、リトルフットとMLD 1の間には少なくとも5つの明確な解剖学的差異が見つかりました。

このことからチームは、リトルフットを「アウストラロピテクス・プロメテウス」に分類する形態学的根拠はないと結論づけています。

さらに、MLD 1自体も既知のアフリカヌス標本と本質的な違いがないとされ、プロメテウスという種名そのものがアフリカヌスに統合されるべきだという見解も示されました。

その一方で、リトルフットはどちらの種とも十分な共通点を持たず、未知のアウストラロピテクス属の新種である可能性が高いと指摘されています。

今回の研究は、リトルフットに新種名を与えるところまでは踏み込んでいません。

その役割は、20年以上にわたりこの化石の発掘と分析に携わってきた研究チームに委ねるべきだとしています。

しかし、確かなのは、人類の進化史がいまだ「未完成のパズル」であるという事実です。

最も有名で、最もよく研究されたはずの化石でさえ、その正体が再び問い直される。

リトルフットは、人類の家系図がまだ書き換えられる余地を残していることを、静かに示しているのかもしれません。

参考文献

Iconic fossil may be new type of human ancestor
https://www.latrobe.edu.au/news/articles/2025/release/iconic-fossil-may-be-new-type-of-human-ancestor

‘Little Foot’ May Be a Whole New Member of Our Family Tree After All
https://www.sciencealert.com/little-foot-may-be-a-whole-new-member-of-our-family-tree-after-all

元論文

The StW 573 Little Foot Fossil Should Not Be Attributed to Australopithecus prometheus
https://doi.org/10.1002/ajpa.70177

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる