1. トップ
  2. 「毎月払い続けている…」我が子のために4LDKを建てた30代夫婦の末路。査定で響いた300万の誤算【不動産のプロは見た】

「毎月払い続けている…」我が子のために4LDKを建てた30代夫婦の末路。査定で響いた300万の誤算【不動産のプロは見た】

  • 2026.1.11
undefined
出典:PhotoAC ※画像はイメージです

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々土地や建物の売却相談に向き合っている岩井です。

家を建てる際、「子ども部屋は用意してあげたい」「将来を考えて、少し余裕のある間取りにしておこう」と考える方は多いのではないでしょうか。もちろんその判断自体が間違っているわけではなく、実際、完成直後は「理想のマイホームができた」と満足されるご家庭がほとんどです。

ただ、よかれと思って広くした家が数年後に家計を圧迫する存在に変わってしまうケースも、私は何度も見てきました。

今日はその中でも、贅沢をしたわけでも無理な借入をしたわけでもないにもかかわらず、使われない部屋のためにお金を払い続ける状況に陥ってしまった、30代夫婦の実例をご紹介します。

子どもの将来を考えた「4LDK」という選択

今から7年ほど前、Aさんご夫婦が最初に私のもとへ相談に来られたときのことです。当時、Aさんご夫婦は30代後半で、中学生と小学生のお子さんが2人いました。

「賃貸だと、どうしても手狭でして。子どもたちにも、そろそろ自分の部屋を用意してあげたいんです」

そう話すAさんは、堅実に子育てをされているご家庭という印象でした。このとき検討されていたのが、郊外の分譲地に新築一戸建てを建てる計画です。

建物は4LDKで、間取りの内訳は次のとおりでした。

  • 子ども部屋が2室
  • 主寝室
  • 将来用の予備室(在宅ワーク・来客・趣味用)

「今は使わなくても、将来きっと役に立ちますよね」

そんな考えから、部屋数にはあえて余裕を持たせました。住宅ローンは35年返済。

返済額も「今の収入なら無理はない」と判断できる水準で、当時は堅実な計画に見えていました。完成当初、Aさんご家族の満足度はとても高いものでした。

「子どもが自分の部屋を持ててすごく喜んでいます。収納も多くて、生活がかなり楽になりそうです」

この時点では、将来の不安はまだ何も表に出ていなかったのです。

数年後、静かに始まった“空室化”

状況が変わり始めたのは、それから数年後のことでした。上の子が進学を機に家を出て、続いて下の子も就職と同時に独立。気づけば、家に残ったのはご夫婦2人だけになっていました。

かつて子ども部屋だった2室は、ほとんど使われなくなります。

当初は「物置として使えるから無駄にはならない」「来客があったときに使える」と、前向きに受け止めていたそうです。

しかし時間が経つにつれ、空いた部屋の役割は次第に変わっていきました。

  • 段ボール置き場
  • 季節家電の収納スペース
  • 使わなくなった家具の退避場所

生活の中で使われてはいるものの、暮らしの質を高める空間ではなくなっていたのです。

一方で、家にかかる支出は減りませんでした。

  • 住宅ローンの返済
  • 固定資産税
  • 外壁や屋根など、将来の修繕費(一般的に10〜15年周期)

「使っていない部屋の分まで、毎月お金を払い続けている気がするんです」

そう話すAさんの表情には、家計への不安がはっきりと表れていました。

「この家、将来も住み続けられるのか?」という不安

転機となったのは、子どもたちが独立し、夫婦2人の暮らしが現実になってからでした。将来の生活を具体的に想像するようになったことで、不安が一つずつ浮かび上がってきたのです。

「この階段、10年後も普通に上り下りできるかな…」
「掃除や管理、これからもっと大変になるよな…」
「修繕費って、まとまった金額が一気に来るのか…」

家は本来、安心して暮らすための資産のはずです。しかしAさんご夫婦にとっては、年齢を重ねるほど、負担が増えていく存在のように感じられるようになっていました。

そうした不安が積み重なった結果、購入から数年が経ったタイミングでAさんご夫婦は住み替えを検討し、あらためて私のもとへ相談に来られたのです。

査定で突きつけられた「数百万円の誤算」

現地を確認し、市場データをもとに査定を行ったうえで、私は率直にこうお伝えしました。

「このエリアでは、4LDKが必ずしも有利とはいえません」「物件によっては、3LDKのほうが購入層が広く、動きやすい傾向があります」

築年数が進むにつれ購入検討者の中には、広さそのものよりも維持にかかるコストを重視する人が増えていきます。その結果、部屋数が多いことが、必ずしも評価につながるとは限りません。

今回提示した査定額は、Aさんが購入時に想定していた金額より300万円以上低い水準でした。ローン残債との兼ね合いによっては、売却してもローンを完済できない可能性があることも現実的に見えてきます。

「贅沢はしていないのに…」「間取りを少し広くしただけなんです…」

そうつぶやいたまま、Aさんはしばらく言葉を失っていました。

間取りの選択が、将来の家計を縛ることもある

このケースで、誰かが極端な失敗をしたわけではありません。無理な借入をしたわけでも、見栄を張ったわけでもありません。

ただひとつ、

「将来もずっと使い続ける前提で部屋数を決めた」

それだけのことでした。

家づくりは、完成した瞬間がゴールではありません。ライフステージが変われば「広さ」や「部屋数」は、価値から負担に姿を変えることがあります。

使われない空間のために、ローンや税金、修繕費を払い続ける。それは、気づかないうちに家計を圧迫し続ける構造なのかもしれません。

これから家づくりを考える方には「今の理想」だけでなく、10年後、20年後の暮らしを数字で想像することをぜひ意識してほしいと思います。間取りの選択ひとつが、将来の家計や人生を想像以上に縛ることがあるのです。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名OK】