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「お正月だけは不便」念願のマイホーム1年生の30代主婦がやってしまった“致命的な計算ミス”【一級建築士が解説】

  • 2026.1.16
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

「普段の生活では、何も不便を感じることはなかったです。でも、お正月だけは玄関が靴で埋め尽くされて、まともに歩くことすらできませんでした……」

そう苦笑い混じりに振り返るのは、郊外に注文住宅を建てて1年目のFさん(30代女性)。

年始、親戚や友人を招いた際、玄関には入りきらないほどの靴が溢れかえりました。ベビーカーを置くスペースもなく、行き場を失ったお客様の重たいコートは、リビングの椅子に山積みされる事態に。

「家の顔」とも言える玄関が、一瞬で物置のような状態になり、親族の視線もどこか気まずい……。

Fさんは「『家族4人ならこれで十分』という見積もりが、人が集まる時期にこれほど響くとは思いませんでした」と、収納計画の難しさを痛感したそうです。

なぜ「来客の瞬間」に玄関は破綻するのか

玄関は、日常の家族構成だけで設計すると、来客が増えた途端にキャパシティを超えてしまう場所です。

来客の靴だけでなく、お子さんの外遊び用のおもちゃ、雨の日の濡れた長靴、さらに宅配対応で出し入れしたサンダルなどが重なると、一気に床面は埋まってしまいます。

ここで見落とされがちなのが、「一時置きスペース」の不足です。基本的に来客は、自分の靴を下駄箱にしまいません。脱いだ靴を端に寄せる場所、濡れた傘を立てる場所、そして「コートを掛ける場所」や「手土産を置く場所」。これら「一瞬だけ発生する物」の居場所がないと、玄関は数分で生活感に飲み込まれてしまうのです。

原因は「収納の広さ」より「動線」にある

Fさん宅にも、実は流行りの「土間収納」はありました。しかし、入口が狭く出し入れしにくい位置にあったため、普段から「結局使わない、開かずの扉」になっていたそうです。

土間収納は広さだけでなく、「玄関からの動線」こそが命です。

扉を開けた瞬間に、迷わず物を入れられる配置か。家族専用の動線(ファミリー玄関)と、お客様から見える動線を分けられているか。

例えば、コート掛けが玄関から少し離れた廊下にあるだけでも、人は「面倒だから」とリビングのソファにバサッと置いてしまいます。この「ちょっとした手間」の積み重ねが、家全体の散らかりを生むのです。

後悔を防ぐ設計と、今すぐできる「おもてなし」の工夫

新築を計画中なら、玄関は「普段」の使い勝手に加え、「最大人数」時のシミュレーションもしておくことが大切です。

例えば年始に10人集まるなら、10足の靴を置くのに対応できる床面積と、10着の厚手のコートを仮置きできるフックを用意しておくこと。ポイントは「収納量」そのものよりも、「帰宅してすぐに放り込める回収動線」を作ることです。

すでに住んでいる場合でも、諦める必要はありません。

  • 薄型のシューズラックを追加して床面を空ける
  • 壁付けの長押(なげし)やフックを設置し、コートの仮置き場を作る
  • 来客時だけ折りたたみベンチを置く(靴の脱ぎ履きを助けつつ、下を靴置きにする)

これだけの工夫で、玄関の「受け入れ能力」は劇的に向上します。

玄関は「ピーク時」の姿で決まる

玄関の使い心地は、日常ではなく「人数が増えた瞬間」にその真価が問われます。靴、コート、ベビーカー、手土産。置き場所が決まっていないものが一気に集まるのが、お正月という時期です。

せっかくのマイホームの満足度を下げないためにも、「最大人数で使った時の景色」を一度想像してみてください。 もし今、玄関の乱れにストレスを感じているなら、少しだけ「仮置きの場所」を足してあげましょう。

それだけで、おもてなしの心もしっかり伝わる、清々しい「家の顔」を取り戻せるはずです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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