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「自責思考」はダイエットに逆効果!肥満外来の名医が教える【食欲の暴発】との向き合い方

  • 2025.12.19
教えてくれたのは…
髙倉一樹先生

内科医・消化器内科医、産業医。1976年、横浜生まれ。東京慈恵会医科大学卒業後、臨床医として東京慈恵会医科大学附属病院、東急病院、川口市立医療センターなどに約18年間勤務。膵臓がんの基礎研究のため、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に客員研究員として2年半留学。これまで臨床・基礎研究に関する医学論文を多数執筆している。現在、UnMed Clinic Motomachi 院長。複数企業の嘱託産業医を務めるほか、東京慈恵会医科大学環境保健医学講座非常勤講師、日本予防医学会理事。

食欲の暴走は体内チームの「連携ミス」が原因

「自責思考」はダイエットに逆効果!肥満外来の名医が教える【食欲の暴発】との向き合い方

空腹ではないのに「どうしても何か口にしたい」「もっと食べないと満足できない」と思い、お菓子に手が伸びてしまう。そんなふうに、ダイエットを始めた頃のあなたは、自分の食欲があたかも「制御不能」であるかのような感覚を抱いていたかもしれません。そして、食欲に抗えない自分に対して、「自制心が足りないのでは」「意志が弱いのかもしれない」と、必要以上に自分を責めていたのではないでしょうか。

しかし、お伝えしたいのは、そうした感覚や行動には、身体や脳の働きとして十分に説明できる理由があるということです。これは、意志の問題ではありません。あまりにも複雑で繊細な仕組みが、そこには関わっているのです。

それが、あなたの「体内システム」という存在です。

ホルモンの個性を知れば、対処法も見えてくる

「自責思考」はダイエットに逆効果!肥満外来の名医が教える【食欲の暴発】との向き合い方

あなたの食欲や体重の調整に深く関わっていて、体内において「指令を届ける」存在、それが「ホルモン」です。私たちの身体の中では、さまざまな器官が連携しながら、生命維持に必要な働きを支え、食欲や代謝のバランスを調整しています。ホルモンは、ある器官で分泌されると血液に乗って運ばれ、離れた場所にある組織へと指令を届けます。いわば、体内の各所でホルモン同士が情報をやり取りしながら、それぞれの役割を果たしているのです。

このホルモンの働きをうまく味方にできるかどうか─それが、ダイエット成功の大きなカギを握っています。

では実際に、あなたの体内チームではどんなメンバー(ホルモン)が、どんな働きをしているのでしょうか。ここからは、ダイエットに関わるメンバーの顔ぶれの中から、ちょっぴり厄介な“コルチゾール”についてご紹介しましょう。その個性を知れば、おのずと対処法も見えてきます。

コルチゾールを例えるなら…「ピリピリ上司」

「自責思考」はダイエットに逆効果!肥満外来の名医が教える【食欲の暴発】との向き合い方

働く私たちにとって、日々のストレスは避けて通れない現実です。終わらないタスク、詰め込まれた会議、ひっきりなしのメール……。そんな「戦場」のような職場で、私たちの身体の中では、あるホルモンが静かに動きはじめます。それが、コルチゾール。いわゆる「抗ストレスホルモン」とも呼ばれるものです。

チームに例えるなら、コルチゾールは「常にピリピリしている上司」のような存在。状況によっては、敵のように感じる場面すらあります。

コルチゾールは、強いストレスを受けたときに副腎皮質から分泌され、心拍数や血糖値を上昇させ、身体を臨戦態勢に導きます。もともとは命を守るための反応ですが、現代のようにストレスが慢性化すると、コルチゾールの分泌も過剰になり、それが食欲の暴走という形で表れるようになります。いわゆる「ストレス太り」の背景には、コルチゾールという「ピリついた上司」が、繰り返し理不尽な指示を出し続けているような、異常な指揮命令系統が存在しています。

「自責思考」はダイエットに逆効果

「自責思考」はダイエットに逆効果!肥満外来の名医が教える【食欲の暴発】との向き合い方

コルチゾールが分泌されると、無意識のうちに糖質や脂質の多い食べ物に手が伸びやすくなります。脳が「早くエネルギーを確保せよ!」と命じてくるからです。さらに厄介なことに、コルチゾールには代謝を低下させる作用もあるため、摂取したエネルギーはうまく消費されず、結果的に脂肪が蓄積しやすくなってしまいます。

この負のスパイラルに拍車をかけるのが、ダイエットで陥りがちな「自責思考」です。「また食べすぎてしまった」「やっぱり私は意志が弱い」、そんなふうに自分を責めることで、さらなるストレスが生まれ、コルチゾールの分泌が増え、結果として食欲がさらに加速してしまうのです。これは、真面目にがんばっている人ほど陥りやすい構造でもあります。

だからこそ私は、外来でも「ダイエットはがんばらないように」といつもお伝えしているのです。

攻略法は「食べること」で感情を処理しない

「自責思考」はダイエットに逆効果!肥満外来の名医が教える【食欲の暴発】との向き合い方

では、どうすればこの「ピリついた上司」をこれ以上増長させずに、ダイエットの悪循環から抜け出すことができるのでしょうか。実は、ポイントは意外とシンプル。

「食べることで感情を処理しない」ことです。

例えば、「ムカついたから甘いものを食べる」「疲れたからとりあえずビールを飲む」など、感情の対処を「食べること」で済ませていると、コルチゾールの指揮権はどんどん強まってしまいます。そこで、自分の感情をうまく切り替えるスイッチを食べること以外で持つことが大切です。それが、次のようなマイクロアクションです。

  • 怒りやイライラを感じたら、まずは「深呼吸」
  • 夜のストレス発散には、「推し動画とストレッチ」で切り替え
  • 甘いものは「15〜16時に食べる」など時間を決めて楽しむ

このように、あらかじめ自分の中に、無理のない仕組みを持っておくことで、コルチゾールに振り回されない生活が少しずつ整っていきます。

ただし、コルチゾールは決して悪者ではありません。本来は、緊急時に命を守るために必要な司令塔であり、うまく働いているときは、むしろパフォーマンスを支えてくれる存在です。問題は、四六時中ピリピリしてしまうこと。実は「頼りがいのある上司」という一面も持っていることを覚えておきましょう。

だからこそ、あなた自身がコルチゾールというピリついた上司の陰の理解者となり、うまくコントロールしていくことが必要なのです。

※本記事は、『肥満外来 無理なくやせる科学的メソッド』(髙倉一樹・著)を一部抜粋・再編集したものです。


『肥満外来 無理なくやせる科学的メソッド』

肥満外来 無理なくやせる科学的メソッド

肥満外来の医師が教える、多忙な人でも“がんばらずに結果が出る”科学的ダイエット。必要なのは根性ではなく、続けられる“マイクロアクション”。水を飲む、ガムを噛む、1分のスクワットなどの小さな積み重ねが、代謝を動かし「体重が整う」身体へと導きます。約2000人を診てきた治療経験にもとづき、“失敗しようのない”実践法を紹介。話題のGLP-1薬を用いたメディカルダイエットの安全な活用法も、医師の視点から丁寧に伝えます。ダイエットが続かない&リバウンドを繰り返す人にこそ読んでほしい1冊。


構成/金澤英恵 写真協力/Shutterstock

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