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【U22 BOYS】市川染五郎、20歳の才能をひも解く20の質問

  • 2025.12.10
ジャケット¥115,500 シャツ¥69,300 パンツ¥69,300/以上ベッドフォード(バースリー) ブーツ¥49,500/アール(ティーニー ランチ) その他スタイリスト私物 Hearst Owned

まだ20歳。だが、彼のまとう落ち着きと色気は、年齢の数字をあっさりと裏切る。歌舞伎界のプリンス・市川染五郎。高麗屋の芸を継ぐ者として、伝統を重んじながらも表現の幅を静かに広げてきた彼が、ついに初の現代劇ドラマに挑む。

彼が出演するのは、Prime Videoが12月19日(金)より世界一挙配信するドラマシリーズ『人間標本』(全5話)。ベストセラー作家・湊かなえが10年以上の歳月をかけて温めてきた禁断のテーマを扱うミステリーを原作にした本作で、西島秀俊演じる榊 史朗の息子・榊 至役を務める。時代や環境は変わっても、「人物を生きる」という軸は揺るがない。弱さを知り、強さに変える。よりよい未来を見据え、今を生きる彼の現在地とは? 20歳にちなんで20の質問でその才能に迫る。

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自分にはできない表現を見たら、うらやましいなと思います

Q1. 20歳という節目に初の現代劇として湊かなえさん原作の『人間標本』に出演することに、どのような思いがありましたか?

まず、「20歳」とか「初の」とか、全く意識していなくて。節目で区切るよりも、今の自分ができることを精一杯やることを積み重ねていきたいと思っているので、そこに対して特別な意識はありません。ただ、記者会見でもお話したように、映画『告白』で叔母の松たか子が主演しているという湊先生とのご縁も感じていましたし、湊先生の世界観が以前から好きだったんです。グロテスクな要素もありますけれども、そういうところも美しく見せてしまうところが素敵だなと思っていました。歌舞伎にもそういう作品もあるからかもしれませんが、その世界観の中に存在できることが、率直に嬉しかったです。

Q2. 現代劇は歌舞伎とは異なる表現媒体ではありますが、だからこその難しさはありましたか?

基本的に、人間を演じるという意味で、役に取り組む上でのプロセスとしては、歌舞伎であっても現代劇であってもほとんど変わりはないと思っています。ただ、描かれる時代が違えば生活様式も異なるので、着ているもの、髪型、話し方も変わってくる。着ているものが違うだけで、普段何気なくやっている動作が変わってくるものなので。例えば、楽な姿勢で立つときにポケットに手を入れるという動作は、着物だったらできない。白塗りをして派手な衣装を着て、かつらをつけてというビジュアルと比べたら、当然現代劇のほうが普段の自分に近いので、だからこそ役という自分とは違う人物への切り替えをナチュラルにすることが難しかったです。普段、歌舞伎をやっていると、その役の格好をした自分を見て切り替えができるのですが、どうしてもその境目が現代劇では曖昧ですから。

山中で6人の美少年の“人間標本”が発見されるところから物語が始まる。 ©2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.

Q3. 『人間標本』は才能への渇望や、才能とは何かを考えさせられるようなドラマでしたが、特別な才能を持った誰かをうらやましいと思う気持ちはありますか?

もちろんあります。歌舞伎をやっていても、当然自分にはできない表現をされている方を見たらうらやましいなと思います。それはその方が持って生まれたものだとも思うので、どうにもできない部分でもありますけれども、なるべくいろんなことができる役者ではいたいので、できない表現をできるようにする努力はもちろんします。ただ、何かと比較するつもりは全くないのですが、歌舞伎は本来、自分の家の持ち味と言いますか、継承してきたものを突き詰めていくという、それぞれの家の色を体現していくということが美学としてあると思います。だから、もちろん歌舞伎以外の映像作品にも挑戦して、いろいろできることも身につけたいけれど、それ以上に自分の家の芸が似合う役者でなくてはいけない。うちの高麗屋の芸が似合う役者になること。とにかくそこをいちばんに目指しています。

Q4. 自分にはできないと感じる表現とは具体的にどのようなものですか?

大きく言えば、例えば女形が似合わないので、できる方は羨ましいですね。立役でも柔らかい役はありますから、そういう柔らかさや丸みというものを出すことができる方はすごいなと思います。逆に言うと、高麗屋は、武骨でどっしりした役をやってきた家なので、もちろんまだまだですし、自分で言うことではないですが、方向的にはどちらかと言うとそういう役の方に向いている役者なのかなと。祖父が「何でもやる必要はないけれど、何でもできなきゃいけない」とよく言うのですが、そういった中性的な役や女形も役者である以上、できるようにしておかなきゃいけないなと思っています。

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弱さを知っているからこそ、いろんな物事を広く見られる

Q5. 逆に、自分にしかできない表現をどう意識していますか?

自分にしかできないことがあるかはわかりませんが、さっきお話ししたような、自分のカラーと言いますか、ここ1~2年で、自分がどういう方向の役者なのかが少しずつ見えてきた気がします。そこを軸として突き詰めていきたいなという思いはあります。例えば、歌舞伎でいうと2024年2月に江戸川乱歩の小説『人間豹』を歌舞伎化した『江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)』という作品で、荒々しい怪物の役を演じている際に、自分は割と低い声が出るほうなので、そういう役に向いているのかなと思いました。今年の1月には、『絵本太功記』で武智光秀という役を勤めさせていただいて、それもどっしりした役で、この役は自分に合っているなと感じたり。いろんな役をひとつ一つ経験させていただいているからこそ見えてくるものが、たくさんありました。

Q6. 天才と努力の関係については、どういうふうに捉えていますか?

天才というのは、元々持って生まれたものだと思います。でも、その持って生まれた才能を最大限発揮できる環境、人や作品との出会いがなければそれは発揮できないわけです。自然とご縁があってそういう環境に出会ったり見つかったりする場合もあれば、自ら探しにいかなきゃいけない場合もあると思います。だから、生まれながらに才能があるからといって、それに気づいて磨かなきゃいけないのは自分なので、結局努力は必要になってくるものかなと。

Q7. ご自身が生まれ持った才能って、なんだと思いますか?

才能かどうかはわからないですが、客観的に自分を見られるところだと思います。役者として、それはとても大事な部分かなと。主観だけでは芝居はできないですし、客観的に自分の長所や短所を知っているからこそ、役者に限らず、よりいい方向に改善していけると考えているので、そういう視点を持っていることはよかったなと思います。

市川染五郎演じる榊 至は、西島秀俊演じる父・榊 史朗とふたり暮らし。 ©2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.

Q8. 『人間標本』は、一歩道を踏み間違えると取り返しのつかないことが起こるという人間の脆さが、誰もが持っているものとして描かれていますが、ご自身の脆さ、弱さとどのように付き合っていますか?

もちろん役者として、弱みや欠点はたくさんありますけれど、落ち込んでもすぐ、じゃあどうやったら改善できるかなという思考に持っていけるんですよね。やっぱり、弱さを知っているからこそ、いろんな物事を広く見られると思いますし、強くなっていくための伸びしろは、弱くなっているときこそ大きくなるのかなと。歌舞伎をやっていても、できないことで悩むことはありますが、それがひとつ一つバネになって、違う思考に変わっていける気がしています。そういう意味で、弱さを感じるときはもちろんありますけど、何事も前向きに考えるほうなので、精神は強いと思います。

Q9. 親子の関係性もキーとなる作品ですが、ご自身は歳を重ねる中で親子関係にどんな変化を感じていますか?

うちの場合、家族も同じ職場で同じ仕事をしながら働いているので、変化もありますし、逆の考えを持つ部分もお互いにあると思います。芝居でつながっている家族なので、今回演じながら、こういう親子もあるのだなと感じました。

Q10. もし将来、自分が親になる可能性があったとしたら、どんな親子関係でありたいとか考えますか?

考えますね。もし、役者の道を選んだとしたら、気兼ねなくコミュニケーションを取れる距離感ではいたいですけれど、あまり手取り足取り教えすぎず、自分で考えさせられたらなと思っています。

同世代俳優との共演も話題。左から、秋谷郁甫、荒木飛羽、山中柔太朗、黒崎煌代、松本怜生。 ©2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.

Q11. 今回、現代劇ドラマで同世代の役者さんたちと共演する経験は、どんな刺激がありましたか?

歌舞伎の同世代はもう生まれた頃から知っている人たちですが、それとは違う出会いはなかなかないので、その空気感も刺激的でした。みなさん明るい方たちばかりだったので、作品が重たい作品ですから、その明るさに助けられた部分も大きかったです。

Q12. 今後、やってみたい役はありますか?

悪い人はやりたいですね(笑)。映画『ゴッドファーザー』シリーズが好きなので、マフィア映画でスーツをバシッと着こなしているような色気のある悪役をやってみたいです。

Q13. 歌舞伎を題材とした映画『国宝』が大ヒットを記録し続けていますが、歌舞伎役者としても、その影響は実感されていますか?

もちろん実感しています。歌舞伎座の舞台に立っていても、いい意味で本当に幅広い世代の方々に来ていただいています。作品や公演によって変動はありますが、若い方からご高齢の方までそれぞれの世代が同じ割合でいらっしゃるように感じられて、それは嬉しいですね。

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もっと知りたい! 素顔に迫る一問一答

Q14. プライベートでの夢や叶えたいことがあれば聞かせてください。

ラブラドール・レトリバーを飼っているのですが、レストランに一緒に行くことはあるけれど、もっと自然に囲まれたところに連れて行きたくて。海にも連れて行きたいですね。

Q15. 朝起きて最初にすることは?

洗顔です。前は水だけで洗っていましたが、歌舞伎の舞台に立っていると荒れやすいので、洗顔の仕方や洗顔料をいろいろ模索して、最近はちゃんと朝も洗顔料で洗うというところに落ち着きました。

Q16. 台本を覚えるときに欠かせないシチュエーションは?

車の中が多いですね。楽屋で一度読んで、なんとなく頭に入れて、移動の車の中はひとりになれるので、ブツブツ言いながら覚えています。

Q17. ひとりでいるときの最高のリフレッシュ法は?

それこそ車を運転することですね。本当に車は子どもの頃から好きなので。

Q18. 今いちばん聴いている音楽は?

いろいろ聴きますが、沢田研二さんや山口百恵さんの時代の歌謡曲はよく聴いています。

Q19. 20歳になってよかったと思う瞬間は?

お酒を飲めるということかな。20歳になったからって、何が変わるの?と思っていたので。実際、何も変わらなかったし、そこくらいです、変わったのは。お酒は好きで、最近は赤ワインを飲むことが多いですね。

Q20. 20年後の自分にメッセージを送るとしたら?

20年後、40歳ですね。もちろんそれまでの過程が大事ですが、以前から、早く40代になりたいと思っているんです。役者として、体も動けるし、いろいろ経験を重ねている年齢だと思うので、いちばん脂が乗っている時期なのかなと。だから、その頃までには、「できないことはないよね」と言われるくらいの役者になっていたいですね。

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『人間標本』

2025年12月19日(金)よりPrime Videoで世界配信

PROFILE

SOMEGORO ICHIKAWA 2005年3月27日生まれ、東京都出身。十代目松本幸四郎の長男。祖父は二代目松本白鸚。07年6月、歌舞伎座『侠客春雨傘』で初お目見え。09年6月、歌舞伎座『門出祝寿連獅子』で四代目松本金太郎を名乗り初舞台。18年1月、歌舞伎座 三代襲名披露興行にて、『勧進帳』源義経ほかで八代目 市川染五郎を襲名。近年の出演作に『レジェンド&バタフライ』(23年)など。26年に舞台『ハムレット』が開幕。

photo : TOMOHARU KOTSUJI styling : NAO NAKANISHI hair & makeup : YUKI KAWAMATA/HAPP'S. text : TOMOKO OGAWA editor : NAOTO OKADA/ELLE

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