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「年金は何歳から受け取ればお得か」の答えはたった一つ…日本人が勘違いしている"年金の真実"

  • 2025.12.9

将来、自分が年金をいくらもらえるのか不安に思う人は多い。確定拠出年金アナリストの大江加代さんは「年金は『保険』のひとつなのに、『貯蓄』だと勘違いしている人がいる。そういう人ほど年金を損得で考えてしまう」という――。(第1回/全3回)

※本稿は、大江英樹・大江加代『知らないと損する年金の真実【改訂版 2026年新制度対応】』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。

年金手帳とミニチュアの人形
※写真はイメージです
「年金は保険」と言われてどう思う?

さて、ここからは公的年金というものの本質を正しくお話ししたいと思います。それもできるだけ難しい話は避け、ごくシンプルに3つに絞ってわかりやすくお話しします。

まずひとつ目は、「年金は“貯蓄”ではなく、“保険”である」ということです。実はこの概念は年金で最も大切な本質であり、この考え方がちゃんと理解できれば年金に対する誤解や間違いの8割以上は解消すると言っても良いと思います。

読者の中には「え! 保険って、あの生命保険とか自動車保険の保険でしょ? 年金の一体どこが保険なの?」と思う人もいるでしょう。「保険」と聞くと、民間の生保や損保が提供している保険がすぐ思い浮かびますから、それと年金がどう結びつくのかがピンとこないのだろうと思います。

たしかに民間の保険会社はさまざまな保険を提供していますが、実は最も大事な保険は民間の保険ではなく、「社会保険」なのです。社会保険というのは、病気になった時に治療費がまかなえる健康保険や失業した時の雇用保険、あるいは年を取って要介護状態になった時に補助される介護保険といったものです。年金もそんな社会保険のひとつです。

不幸が突然起きても困らないための仕組み

そもそも「貯蓄」と「保険」の違いって何でしょう? この2つは全く異なる概念のものなのです。貯蓄は、「将来の楽しみのために自分で蓄えるもの」、これに対して保険は、「将来の不幸のためにみんなで備えるもの」です。

いずれも、「将来」のために「準備しておく」ことは同じですが、その目的や方法は全く正反対です。貯蓄の場合は、「来年は海外旅行に行こう」とか、「子供が大学に進学するためのお金を作っておこう」、あるいは「将来、家をリフォームするためにお金を積み立てておこう」といった具合に自分や家族の楽しみのために蓄えておきますが、保険は、一家の働き手が突然亡くなったり、病気や失業、火災や自動車事故に遭ったり、といった人生において起こり得る不幸に備えるものです。

ただし、この不幸は楽しみと違って突然訪れることも多いものです。そんな時に困らないようにするためにみんなでお金を出し合っておいて、そんな不幸が突然訪れた人にお金を回してあげる、それが保険という仕組みなのです。

何歳まで生きるかは誰にもわからない

では、公的年金は一体どんな不幸に備える保険なのでしょうか。年金が想定している最も大きな不幸は「予想外に長生きすること」です。

「え? 長生きするって幸せなことじゃないの?」と思うかもしれませんが、長生きして幸せなのは、健康でお金がある場合です。長生きはしたけれどお金が全くなくなってしまったのでは、悲惨なことになりかねません。

そこで、金融機関の人などは、よく「年金なんてあてになりませんから、老後に備えて自分で投資(貯蓄)しましょう」と言いますが、何歳まで生きるかは誰にもわかりません。自分で備えると言っても「いくらあれば安心か?」というのは正直に言ってわからないのです。だからこそ終身、つまり死ぬまで受け取ることのできる年金制度が必要なのです。

これは言わば所得保障の役割を果たすもので、「老齢年金」というものです。事故や病気や火災といった不幸は必ず起きるかどうかはわかりませんが、年をとって働けなくなるというのは等しく誰にでも訪れます。だからこそ死ぬまで受給することができる「老齢年金」というのは「長生きリスク」に備える公的年金の最も大事な役割なのです。

傷害保険や生命保険と同じような役割

2番目の不幸は病気や怪我で障がいを負ってしまった場合です。これに対応するのが「障害年金」です。「老齢年金」の場合は原則65歳、繰り上げても60歳からしか年金を受給できませんが、障害年金だと、一定の要件はありますが年齢に関係なく、障がいを負った時から、こちらも終身で受けることができます。民間の保険で言えば、仕組みは異なりますが、「傷害保険」に似た役割ですね。

そして3番目の不幸は死亡です。自分自身は死んでしまえばそれでおしまいですが、自分が一家を支える働き手であった場合、残された家族の生活に支障が生じます。そこでそれをカバーするために思いつくのは生命保険ですが、公的年金には「遺族年金」という制度があるため、残された家族に対して生活の立て直しができるまで、年金が支給されます。

したがって、民間の生命保険に加入する場合でも自分がもし亡くなった場合、遺族年金がどれぐらい支給されるのか、をよく調べた上で生命保険に入った方がいいでしょうね。

「年金=貯蓄」と勘違いしていると…

このように公的年金には3つの不幸に備える機能がありますが、大事なことは、それぞれが別の年金制度ということではなく、厚生年金や国民年金に加入していれば、「老齢年金」、「障害年金」、そして「遺族年金」のいずれも受給することができるということです。

すなわち一番基本になるのは「老齢年金」ではありますが、何らかの不幸が起きた時にそれに合わせて支給されるということを知っておいてください。

さて、ここまでで「年金は保険である」ということがおわかりいただけたと思います。ところが世の中の多くの人はこのことに気付いておらず、「年金は貯蓄だ」と思っている人が多いのです。年金が貯蓄だと勘違いしているとどんな不都合が生じるでしょう。それは年金を「損得」で考えてしまうことです。

「INSURANCE」と書かれたジグソーパズルのピース
※写真はイメージです
「何歳から受け取るか」議論は意味がない

よく「年金は何歳から受け取れば得か?」みたいな記事が雑誌などに出ることがありますが、年金を損得で考えても意味はありません。年金は保険ですから一番大切なのは「損得」ではなくて「安心感」なのです。

保険に入るのは、何か悪いことが起きた場合でも金銭的な補償が得られるという安心感を得るためですよね。でも、もしその悪いことが起こらなければ払った保険料は無駄になります。しかし、それは必ずしも無駄とは言い切れません。万が一に備える安心感を買ったと思えば誰もが納得できるはずです。

年金も同じで「どんなに長生きしても死ぬまで年金が受け取れる」という安心感が大切なのです。仮に100歳まで生きれば65歳から支給される年金は35年間受け取ることができます。でももし60歳になる少し手前で死んでしまえば、年金は1円も受け取ることができませんから、それまでに40年近く払った保険料は無駄になり、損です(残された家族がいれば、遺族年金は支給されますが)。でも死んでしまえば損も得も関係ありません。

大切なのは損か得かではなくて、何歳まで長生きしても生活することができるという安心感にあるのです。

年金収入だけで暮らせるという「安心感」
大江英樹・大江加代『知らないと損する年金の真実【改訂版 2026年新制度対応】』(ワニブックス【PLUS】新書)
大江英樹・大江加代『知らないと損する年金の真実【改訂版 2026年新制度対応】』(ワニブックス【PLUS】新書)

サラリーマンであれば平均的には1人あたり月額で約15万円程度の年金が支給されます。共働きで2人とも厚生年金に入っていれば、給与の額によって変わりますが大雑把に言えば、この倍の約30万円になります。

また夫婦のどちらかが働いていない場合、いわゆる専業主婦(夫)で世帯主の被扶養者になっている場合は、その専業主婦(夫)については基礎年金部分だけが支給されますので月額で約23万円になります。(※令和7年度年金額改定 厚生労働省より)

この金額が多いか少ないかは、その人のライフスタイルによって変わってくるでしょうが、厚生労働省が調査した「2023年 国民生活基礎調査」によれば、収入に占める年金の割合が100%という世帯が41.7%となっていますから、年金収入だけで暮らしている世帯が半数近くあるということになります。

これが終身で支給されるという安心感は、とても大きいのではないでしょうか。年金の本質は“保険”なのです。

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