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そりゃ「名前が思い出せない」が無くなるはずだわ…「記憶力世界最強」の達人が初対面で繰り出す"雑談"の内容

  • 2025.12.9

顔と名前を覚えるのが苦手という人は多い。記憶力世界一に輝いたことのあるメモリーアスリートの平田直也さんは「記憶の中でも顔と名前の記憶は難しい部類に入る。苦手なのは記憶力が悪いせいではない。ちょっとした工夫を続けることで向上する」という――。

名刺交換をするビジネスパーソン
※写真はイメージです
誰よりも早く取引先の顔と名前を覚えられる

メモリーアスリートの平田直也と申します。

メモリーアスリートとは、「メモリースポーツ」という競技の選手を指す言葉です。メモリースポーツは、記憶力を使ったさまざまな種目を通じて順位を競い合う頭脳競技です。

1991年にイギリスで誕生し、以降世界中で大会が開催されており、現在の競技人口は数百万人以上と言われています。

メモリースポーツでは「その場で、短時間で、どれだけ多くの情報を覚えられるか」という能力が競われます。15分間でランダムに並んだ数字の羅列を覚える種目や、5分間で初見の人の顔と名前を覚える種目などがあります。

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私はこのメモリースポーツを2016年からやっており、毎日記憶のトレーニングを行い、大会に参加してきました。とくに「顔と名前」の種目が得意で、2018年の日本大会では「5分間で41人の外国人の顔と名前を覚える」という当時の日本記録を樹立したり、1分間で30人の顔と名前を覚えるという記録を出したりしています。

また、オンラインで対戦する形式のメモリースポーツでは、2019年に世界ランキング1位を達成しました。

もちろん現実世界でも記憶力を活用しており、名刺交換や自己紹介の場では誰よりも早く取引先や新しい同僚の名前などを覚えることができています。

もともとの記憶力は関係ない

このように聞くと、元々記憶力が良かったのかと思われるかもしれません。しかし、メモリースポーツで競われる記憶力に、元の記憶力は実は関係ありません。後天的にトレーニングによって鍛えられる記憶力で競われているのです。世界中のどの選手も「記憶術」と呼ばれる記憶のテクニックを学び、日々実践することで記憶力向上に努めています。

顔と名前を覚える種目の過去問の一部
顔と名前を覚える種目の過去問の一部

私もこの10年間、毎日のように記憶のトレーニングを行い、覚えられる数を増やし続けています。顔と名前に関しても、今年だけで1万人以上の顔と名前を覚える練習をしてきました。意外に思われるかもしれませんが、顔と名前を覚える能力は、練習して獲得するものなのです。

私は現在もメモリーアスリートとして大会に参加しています。そしてその知見を広めるためにメモアカという会社を起業し、小学生からシニアまで幅広い方々に記憶術を教えています。

多くの記憶のテクニックの中から、今回は社会人が最も必要としている「顔と名前を覚えるコツ」を紹介していきます。

「記憶」の中でも「顔と名前の記憶」は難易度が高い

「初めて会った人の名前が覚えられない」という悩みをよく相談されます。最初にお伝えしておきたいのは、さまざまな記憶の中で「顔と名前の記憶」は非常に難しい部類に入るということです。したがって、練習をしていない状態では覚えられなくて当然で、それはあなたの記憶力が劣っているというわけではありません。

握手をするビジネスパーソン
※写真はイメージです

なぜ顔と名前を覚えるのが難しいのか。それは、顔と名前に関係がないからです。

人間は関連があるものや理由・背景があるものは覚えやすいと言われています。しかし、顔と名前には関連性がありません。「この顔に生まれたからこの名前になった」というのは原則あり得ませんね。だから、顔と名前を覚えるのは難しいのです。

それではどうやって覚えやすくするかというと、なるべく自分の心に残るような「トリガー」を作るということと、復習をするのがポイントです。

一般的に記憶の強さは「質×量」で決まります。覚えるときにどれだけ心に残るかという「質」と、覚えたものを何回復習したかという「量」の両輪が重要になります。

「復習の量」を増やして記憶に残す

復習は普段から意識している方も多いかもしれません。

名刺交換が終わった直後に脳内で名前を復唱するとよいでしょう。そして、名刺交換後に会議や会食が始まる場合は、名刺を見ながらでもよいので、意図的に名前を呼んで話しかけるようにしましょう。自分で名前を呼ぶことによって定着しやすくなり、相手の名前に触れる頻度も高くなります。

名刺交換が終わって別れた後、その日の夜のうちに名刺を見返して名前や話したことを思い出す癖もつけてください。アプリで管理して定期的に見直せる環境をつくるのもいいですね。これだけ復習をすれば強く記憶に残っていきます。

心に残す一番簡単な方法

復習と同じくらい意識してほしいのが、覚える際に「心に残るようなトリガーを作る」という質の部分です。思い出すきっかけになるものをトリガーと呼びますが、このトリガーが強ければ強いほど、多ければ多いほど思い出せる可能性は高まります。

ただ単に名字だけを復唱して覚えようとするのではなく、雑談をして趣味や出身地を聞いたり、共通点を探したりして、トリガーを強めて増やす工夫をしてみましょう。

雑談をするビジネスパーソン
※写真はイメージです

家族や親友の名前を覚えていられるのは何度も出会っていて自然と復習できているからですし、好きなアイドルやスポーツ選手などを覚えていられるのは好意を持っていて色々な情報と共に心に残っているからです。これらを初対面の名刺交換をする際にも活用してみましょう。

質を高める最も簡単な方法は、相手に興味を持つことです。好きなこと(あるいは嫌いなこと)は心が動き、結果として記憶に残りやすいです。

「どうせその日しか会わないだろう」と思ってしまうと、本当に記憶に残らなくなってしまいます。もしその可能性があっても、「この人に興味がある」「もっと知りたいな」と思って名刺交換をしてみてください。それだけで思い出せる可能性が少し上がります。

その他の方法として、同じ名前の有名人や知り合いを想像するのもよいトリガーになります。名刺交換をした際に名前を聞き流すだけだとただの文字の羅列にしかならず、印象に残りません。相手の名字や名前から、同じ名前の有名人や友人、知り合いを想像するだけで「意味のある言葉」になり、思い出せる確率が高まります。

とくにお勧めの雑談テーマ

質を高める工夫として、雑談をするというのもおすすめです。一見関係ないように思われるかもしれませんが、ささいな情報がトリガーとなって思い出せることは意外によくあります。

学生の頃、先生の雑談や小話を覚えていて、それをきっかけにテスト中に大事な情報を思い出せたという経験をした方も多いでしょう。

雑談は記憶に残りやすいです。とくに、自分の興味がある情報や想像しやすい話は印象に残るので記憶に残ってくれます。

これを利用して、初対面の人やこれから仲良くなりたい人と雑談をしてみてください。自分の好きなジャンルの話や知識があるもの、仕事に関する雑談などがとくに印象に残りやすいと思います。

名前を覚えるためのとっておきの話題

直接名前を覚えるための雑談であれば、その人の名字や名前の由来を聞いてみるのがよい方法です。武士の末裔だったり、名前に込められた意味に意外性があったりと、相手の名前に興味を持つきっかけとなり、そのエピソードから名前を思い出せるようになります。

また、趣味や出身地をお互いに話すのも効果的です。出身地は同郷であれば一発で記憶に残りますし、そうでなくても、だいたいどの都道府県を言われたとしても何かしらのイメージは持てるはずです。北海道だったら「寒い中でおいしいものを食べて育ったのかな」、東京だったら「都会で育ったんだな」などと想像ができます。

名刺にオフィスの所在地が書いてあることも多いでしょう。その場合は「○○駅の近くにあるんですね」と場所について雑談をするのも出身地と同じ理由で効果があります。そこからおすすめのお店の話などに繋がっていけば雑談も膨らみ、トリガーが次々増えていきます。

記憶に定着させるためのアクション

雑談をしてトリガーを増やした後は、確実に長期記憶にするために定期的に復習をしましょう。

復習しやすい環境を作るのも大切です。雑談の内容や想像した同じ名前の有名人など、トリガーになる情報をメモに残しておきましょう。名刺に直接書くのがはばかれる場合は、付箋に書いて貼ったり、名刺管理アプリなどを使ったりするのがおすすめです。

また、定期的に名刺一覧を見直す習慣も作りましょう。毎月名刺フォルダを全部見返す日を決めてもよいですし、私は新たに名刺をもらって名刺フォルダに入れる際に今まで溜まっている分をまとめて見返すようにしています。

とくに覚えておきたい人がいる場合は、デスクなど毎日見る場所に名刺を置いておくのも効果的です。触れる回数が増えれば増えるほど記憶に残っていきます。

スマホの顔認証システム
※写真はイメージです
ばったり会って「名前を思い出せない…」というときは

もし次にその人と会うタイミングが分かっている場合は、リマインダーを使って前日に復習するようにしておきましょう。メールやLINEなどで会話が残っている場合は、それを見直してどんな会話をしたかも振り返ると記憶がより鮮明になります。

いつ会うか分からない場合、突然出会ってどうしても思い出せないということもあります。それでも、何もしないよりかはトリガーを作って定期的に復習することは効果があります。仮に2回目に出会ったときに名前を思い出せなかったとしても、雑談の一部は思い出せるかもしれません。それだけで大きな進歩です。

2回目は無理でも、3回目は思い出せるかもしれません。「思い出せなくて悔しかった」という思いは、記憶を強くします。諦めずに工夫を続けましょう。

顔と名前の記憶は練習すればするだけ覚えやすくなります。雑談のポイントや名前から有名人を想像するポイント、復習のタイミングなどが分かってきて、コツを掴めるようになっていきます。一生役に立つスキルなので、焦らず少しずつ工夫を積み重ねてみてください。

平田 直也(ひらた・なおや)
メモアカCOO 記憶力元世界ランク1位
一橋大学商学部卒業。18歳の時に記憶力を競い合う「メモリースポーツ」に出会い、競技歴1年で臨んだジャパンオープン記憶力選手権2017で優勝し、日本チャンピオンに。その後2019年まで3連覇。2019年にはオンラインのメモリースポーツプラットフォーム「Memory League」で世界ランク1位を達成。2017年から記憶術の指導を始め、2022年に師匠の青木健と共にメモアカを創業。現在も記憶術の指導を行いながら、人の顔と名前が覚えられるアプリ「カオナマエ」や、気軽に脳トレ習慣が身につく「メモアカ式脳トレ」などのサービスを提供している。著書に『世界最強記憶術 場所法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)や『記憶力日本チャンピオンの覚えて! 謎解きドリル』(総合法令出版)がある。

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