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朝ドラでも存在感を放った俳優の“ぞくっとする仕草”「絶妙な表情」幅広い役柄で視聴者を魅了する“演技派”の活躍

  • 2025.12.9
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『ちょっとだけエスパー』第6話 (C)テレビ朝日

徐々に謎が明らかになり、正義と悪が揺らぎ始めた『ちょっとだけエスパー』。怪しさ満点だった北村匠海演じる市松も、2055年から伝えられた“アイ”からのメッセージを受けて行動する人物であった。市松は、作中で悪から正義へと立場が変わる役柄ということができるだろう。

※以下本文には放送内容が含まれます。

市松が未来の自分から託された使命

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『ちょっとだけエスパー』第6話 (C)テレビ朝日

市松の物語は、Bit5に出会う前から始まっていた。パソコン作業中に、立ち上がったチャットツールで、2055年を生きる自分(通称:アイ)から未来の自分を救って欲しいと依頼されていたのだ。

アイは、自分が作った薬が2025年で悪用されて過去の改ざんが行われており、その罪を着せられ、このままだと死刑になってしまうと市松に伝える。第6話で市松が心の中でつぶやいていた「1000万人が死ぬ」というのは、過去の改ざんにより死んでしまう人の累計なのだろうか。ここには、第2話で亡くなった千田守も含まれているのかもしれない。

アイからの使命を受けて、市松は薬を使っているエスパーたちを探し始める。そこで見つけたのが、文太(大泉洋)、桜介(ディーン・フジオカ)、円寂(高畑淳子)、半蔵(宇野祥平)だったのだ。市松にとっては、未来の自分が作った薬を2025年で悪用する人物たちだ。自分がヒーローで、Bit5がヴィランと認識するのもうなずける。

市松の使命が明らかになったと同時に、視聴者が第1話から正義側だと信じていた兆(岡田将生)の存在が揺らぎ始めた。第7話では、四季の未来の夫であること、四季を救うために活動していたことが明らかになった。兆は1万人の命を救うためにやっていると文太に説明していたが、そのなかに四季も含まれているのかもしれない。兆は、愛する四季と1万人の命を救うために、2025年から少しずつ過去を変え、死ななくてもよかった1000万人を犠牲にしているのだろうか。人の命を救う上で、何が正義なのかが分からなくなる。

悪役ともヒーローともとれる表情を見せる北村匠海

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『ちょっとだけエスパー』第6話 (C)テレビ朝日

第1話で文太や桜介のエスパー能力を盗み見たときや第3話のお祭りで起きた爆発事故の顛末を見てお面をはずしたときなど、序盤に市松が見せた表情はどれも物語の黒幕らしき雰囲気をまとっていた。北村自身の大きい瞳には光はなく、口元には笑みもない。ぞくっとさせるような表情に、悪役として活躍する北村を期待した人もいたのではないだろうか。

一方で、その表情には意思の強さも感じられた。今思えば、市松自身にも未来の自分を救うための使命が課せられていたのだから当たり前だ。北村は、市松の悪役としての視聴者からの見られ方と市松自身の感情をバランス良く表現していたのだ。

また、文太らと敵対する人物であるにも関わらず、市松にはどこかかわいらしい印象があるのも北村が演じているからだろう。第4話ではBit5と接触しているにも関わらず、四季のかわいらしさに少しほだされていたり、随所でツメの甘さが見えたり、文太を睨む表情には幼さが見えたりと、カッコいいヒーローとも恐ろしいヴィランとも言えない独特の愛嬌がある。

2025年前期朝ドラ『あんぱん』での柳井嵩役が記憶に新しい北村。優柔不断でヒロイン・のぶ(今田美桜)に引っ張ってもらっていた嵩とは打って変わって、『ちょっとだけエスパー』では、物語の鍵となる人物として意思の強さと存在感を見せつつ、それでいて愛せるキャラクターを作り上げている。

北村は今年、映画『悪い夏』や『愚か者の身分』でも主演を務めている。2025年は北村の幅広い表現を堪能できた年といえるだろう。SNSでは、「市松の絶妙な表情の演技がいい」「大泉洋さんとの掛け合いがいい!」など、北村の芝居に対する高評価が集まっている。

2055年に四季に何が起きるのか、兆の本当の狙いは今後明らかになるだろう。岡田将生対北村匠海の構図も見られるかもしれない。まだまだ演技巧者たちの掛け合いが楽しめそうだ。


テレビ朝日系『ちょっとだけエスパー』毎週火曜よる9時〜 放送

ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X(旧Twitter):@k_ar0202