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青山学院記念館で“最後”の東京ダービーが開催される…SR渋谷、A東京の指揮官、選手が語る特別な一戦【PickUp B.LEAGUE】

  • 2025.11.15

東京メトロの表参道駅から歩いて5分ほどで現れる青山学院記念館は、青山学院大学の青山キャンパス内にある体育館だ。その歴史は古く、竣工は1964年に遡る。Bリーグが開幕した2016-17シーズンよりサンロッカーズ渋谷が本拠地として利用しており、収容人数は約4,000人。昨今、全国各地で開業している10,000人前後の客席を持ち、最新鋭の設備を整えたアリーナとは規模やスペックに違いはあるものの、コートと客席の近さや趣のある雰囲気は青学ならでは。何より東京の真ん中でバスケを楽しめる空間として、Bリーグの歴史とともにあり続けてきた。

東京の真ん中で、激戦の歴史あり

そんな青学でのBリーグ名物試合の一つが、サンロッカーズ渋谷(SR渋谷)とアルバルク東京(A東京)による「東京ダービー」だ。両チームの対戦はBリーグのレギュラーシーズンでこれまで33回行われ、SR渋谷の9勝に対して、A東京が24勝と大きく勝ち越し。だが、昨シーズンは4度戦ってお互いにアウェーで2勝ずつをもぎとり、対戦成績は五分。これまでSR渋谷は青学の東京ダービーで5勝を挙げる中、4勝を3点差以内の攻防でつかむなど激戦の歴史があるのだ。

延長戦にもつれる好ゲーム。青学ラストは1勝1敗に

11月8、9日には今シーズン最初で最後の東京ダービーが青学で幕を開けた。2026-27シーズンより、SR渋谷はホームタウンを渋谷区から移転することが決まっており、今回が青学で行われる最後の東京ダービーに。8日のGAME1こそSR渋谷が83-66で17点差の勝利を収めたが、9日のGAME2は期待を裏切らない好ゲームになった。
両者譲らず、終盤までもつれる展開となり、4クォーター残り1分を切ってSR渋谷がキャプテンのベンドラメ礼生(#9 / 183㎝ / PG・SG)が3ポイントシュートを抜いて、83-81の勝ち越しに成功。それでもA東京も残り13秒でマーカス・フォスター(#17 / 191cm / シューティングガード)の得点で83-83の同点に追いついて延長戦に突入した。
10分間の延長戦では、田中大貴(#13 / 193cm / SG)、ベンドラメの得点でSR渋谷が90-88とリードを奪って、このまま押し切るかと思われたが、A東京が土壇場で再び底力を発揮。残り15秒で中村浩陸(#5 / 177cm / PG・SG)が相手のファウルを受けながらもシュートをねじ込み同点弾を決める。さらに、バスケットカウントのフリースロー“1本”も冷静に沈めて再逆転。91-90という大接戦が繰り広げられた。

A東京の指揮官が感じるダービーとは?「コーチとしては本当に」

サッカーや野球でもそうだが、ダービーと言えば、両チームの選手、指揮官、ファンを巻き込んだ熱い試合が繰り広げられるもの。勝利したA東京のヘッドコーチ(HC)・デイニアス・アドマイティスは試合後、ダービーについて「コーチとしては本当にストレスが溜まるという形で(苦笑)。何が何でも勝ちたいという気持ちはあります」と明かし、こう続けた。
「これはもう(会場の)活気もありますし、非常にスポーツの中でも良いことだと思います。ファンの皆さんもエンジョイしてくれたと思いますし、コーチとしても苦しい中でプレー(指揮を)する。選手としたら本当に羨ましいというか、本当にこのような形(=活気ある環境で)でプレーできて良かったと思います」
また、試合を決めた司令塔・中村は、ファイティングイーグルス名古屋から今シーズンよりチームに加入したため、今回が初の東京ダービーだった。前所属先でも名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの「名古屋ダービー」を経験していたが、本拠地のキャパシティが小さいこともあり、ダービーともなれば会場がチームカラーの青よりも「赤(名古屋Dのチームカラー)がちょっと強くなってしまうことがあったんです」と振り返る。
そのため、今節はアウェーのダービーでありながらも、会場の様子が印象的だった。彼は「東京ダービーだと本当に(ファンの多さは)半々ぐらいでした。ファイティングイーグルス名古屋のときもすごく応援が力になったんですけど、今回アルバルクのファンの皆さんの応援もすごく力になって良いプレーができました」と語った。

「一大イベント」「すごく高まる気持ち」…SR渋谷の本拠地移転でダービーは新たな姿へ

画像: Bリーグが開幕した2016-17シーズンから、SR渋谷は青山学院記念館で様々な歴史を紡いできた (C)Getty Images
Bリーグが開幕した2016-17シーズンから、SR渋谷は青山学院記念館で様々な歴史を紡いできた

一方で、SR渋谷の指揮官や選手も接戦を落とした悔しさをにじませたものの、青学でのダービーに特別な思いも明かした。カイル・ベイリーHCは「すごい競い合いが、東京ダービーにあると思いますし、何回も経験した中でそれが変わらず高いところにあると思っています。ほかの皆さんはどう感じているか分かりませんが、私は本当にわくわくして試合に臨みました」と話す。ベイリーH Cは、2017-18シーズンにアシスタントコーチとしてチーム入りし、他チームのキャリアを挟んで今シーズンがチーム在籍8シーズン目。指揮官にとっても、その受け止め方は大きい。
また、ベンドラメも「ここ数年、すごく盛り上げていただいている印象があります。響きもかっこいいですし、選手としてやっていて一大イベントという感覚で試合に臨んでいる」と言う。結果こそ望んでいた幕切れでは無かったが、彼は「熱い試合をファンの皆さんに見せられたのはすごく良かったと思っています」と胸を張り、ジョシュ・ホーキンソン(#8 / 208cm / C・PF)の試合総括からも特別な一戦だったことがうかがえた。
「本当に、東京ダービーと名のついたゲームの中で、すごく高まる気持ちもありますし、いろんな感情がうごめいた中で、本当に最後までファイトはできたと思います」
青学ラストの一戦で、歴史がまた一つ増えた東京ダービーは、来シーズンより舞台を移して新たな姿で行われるだろう。SR渋谷は、B.LEAGUEによる新リーグ構想「B.革新」のトップディビジョン「Bプレミア」入りの参入要件を満たすため、本拠地移転によってA東京が今シーズンより本拠地とする“TOYOTA ARENA TOKYO”をホームアリーナとして共同利用することを、2024年9月に発表。晴れてBプレミア入りも決めている。
ホームアリーナの共同利用は、A東京とSR渋谷の一例のみ。どんな雰囲気に包まれるのか。前例の無い中で、ライバル対決は続いていく。「青学の雰囲気が本当に素晴らしく、ここでプレーするのがすごく楽しかった」と言うホーキンソンも、まだ見ぬダービーの様子を想像して、期待を寄せている。
「来シーズン、サンロッカーズは(A東京と)一緒のアリーナを使うわけですが、青学より大きいです。(小さくてコートと客席が近いのは)青学の良さでもありますが(キャパシティが小さいため)試合を見たくても見られないファンの方がいます。そこは(トヨタアリーナ東京の共同利用によって)改善されると思いますし、行きたい人が来て、もっともっといろんな人が応援できる環境になることは一つ、またいい部分だと思います。多くの方にもう一回応援されて、来シーズン以降新しいアリーナでプレーできるのであれば本当にすごく楽しみですし、嬉しいことだと思います」

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