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美容院でのめまいは気のせいではなかった…『美容院(脳卒中)症候群』を医師が解説

  • 2025.11.14
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

美容院で髪を切っている時やシャンプー中に、ふっと視界が揺れるような感覚に襲われたことはありませんか?多くの人は「疲れているのかな」「気のせいかも」と軽く考えがちですが、実はそのめまい、ある少し珍しい病気のサインかもしれません。今回は『美容院(脳卒中)症候群』というあまり聞き慣れない名前について、医師の見解をもとにわかりやすく解説します。

美容院(脳卒中)症候群とは?気になるめまいの正体に迫る

「美容院(脳卒中)症候群」という名前を聞いてもピンとこない方が多いはずです。この言葉は、専門的には「椎骨脳底動脈循環不全症」という血管の異常から起こる症状を指します。こうした症状は、首を一定の角度で長時間傾けたり動かすことで、脳へ向かう血液の流れが部分的に妨げられることが原因の1つとされています。ただし、頻度ははっきりわかっておらず、非常にまれです。

一方、美容院でのめまいの多くは寮生で、代表は良性発作性瑞めまい症(BPPV)。洗髪で体勢を変えたときに数秒〜1分ほどの回転性めまいが起き、こうした「めまい」は寮生です。しかし、神経学的な症状があれば脳卒中を必ず除外する必要があります。

美容院で髪を洗う時の体勢や、首を後ろにそらしたり一定方向に傾け続けることが、めまいやふらつきの引き金になることがあるのです。イスに座っているだけでなく、首の位置や角度が一因で起こる症状なので、脂汗が出たり目の前が暗くなるなどの強いめまいを感じた場合は注意が必要かもしれません。

こうした症状は首の動きによって一時的に血流が制限され、脳の一部に一過性の酸素不足が生じると考えられています。特に高齢者や血管の硬化が進んでいる方にみられることが多いとされていますが、若年でも解離例があり、年齢のみで安全、期間を断定できません。しかし、全てのめまいがこの症候群に結びつくわけではないため、専門機関を受診して適切な診断を受けることが大切です。

美容院でめまいを感じたときに知っておきたいこと

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

もし美容院でめまいを感じたらどのようにしたらよいのでしょうか。まず最初に、そのまま施術を続けるのではなく、一度休むことが大切です。そのまま無理に施術を続けることで、悪化してしまう場合があります。

めまいが頻繁に起こる場合や、手足のしびれ、吐き気、言葉のもつれなどの症状が伴う場合は早めに専門医による診断を受けることが望ましいでしょう。

また、日常生活での血圧管理や適度な運動、ストレスの軽減も血管系の健康維持につながるとされています。美容院での施術中、不安を感じたら遠慮なく美容師に申し出ることが大切です。

正しく向き合い、安心して過ごそう

美容院はリラックスできる場所ですが、体の負担が思いのほか大きい場所でもあるようです。特に「美容院でめまいを感じた」という経験がある方は、上記のような背景を踏まえて体調管理や対応策を検討するのがよいかもしれません。美容院でできる予防としては、首を強く逸らさない、頚の下にタオル・クッション、座面を上げる、前屈洗髪の相談が考えられます。違和感があればすぐ中止してもらいましょう。また、以下の症状がすぐ、もしくは数日以内に現れるようであれば病院を受診しましょう。

  • 片側の手足の脱力・しびれ
  • 呂律困難
  • 飲み込みにくい
  • 二重に見える
  • 激しい後頭部痛
  • ふらついて歩けない など

めまいやふらつきの原因は一人一人異なり、血管の状態や体質、年齢や生活習慣によっても大きく変わります。気になる場合は医療機関での詳しい検査を受けることで安心につながりますよ。


監修者:林裕章(はやし・ひろあき)
林外科・内科クリニック(https://www.hayashi-cl.jp/)理事長

国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。現在、外科医の父と放射線科医の妻と、全身を診るクリニックとして有床診療所および老人ホームを運営しており、医療・介護の両面から地域を支えている。また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、また医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。
日本外科学会外科専門医、日本抗加齢医学会専門医